父の思いを胸に




穏やかな風がふくなかラントの街領主アスベルは1人で父の墓参りに来ていた。
お墓は常に整頓され花が添えられ父がどれだけ街の人々に尊敬されていたかわかる。

歴代領主の名前が刻まれている墓の前でアスベルは礼をする。

「久しぶり、親父……二回目だったけ…ここに来るのは…」

初めてきたソフィと来たときは自分の領主としての未熟さや先々への不安、などを聞かせてしまい親父を心配させただろうと思う。

風がザァとふき父のお墓を見ると思い出すのは常に厳しかった父の表情。

常に次代の領主としての責任を持てと言われ反発してきた幼い自分。

でも俺が領主になることは親父の押し付けだと子供のころは考えていたが、もしかしてあれは俺が領主になることは父なりの夢だったかもしれない。

領主としての責務を果たしていくうちに考えはじめた、答えを知る術はもうないけど、自分に領主になってもらい、そんな自分を後ろで小言を言いながらも支える…それが父の夢だったのではないか。

そういえば昔だけ一度、親父に領主になりたいと言ったことがある。

あれはまだ五歳ぐらいのころまだ四歳の幼い弟を連れて街の外に行ったとき。

好奇心のみで後先考えずに外に行きモンスターに襲われたのだ。

そのとき誰よりも早く駆けつけて剣を振るいモンスターを倒してくれたのは親父で、子供心に親父の背中がかっこよかった。

『俺も父さんみたいに皆を守れる領主になる!!』

助けられた自分が親父に抱かれながら言った言葉。

その言葉に普段はあまり笑うことのない威厳ある父が微笑んでくれた。

嬉しかったのだろう。
子供に自分のようになりたいと言われ。
でも嬉しかったのはアスベルも同じだった。

普段あまり見ることの出来ない父の笑みが見れたから。

アスベルは思った。
自分が父のような領主になれば父はまた笑顔を向けてくれる。
しかしアスベルが成長するにつれて父は自分は跡取りなんだから領主になるのは当たり前、と笑顔を向けてくれることはなかった。

どうして?

俺が父さんみたいな領主になれば喜んでくれるんじゃないの…

アスベルには父が何を考えているかわからず、知らずに父が自分に領主という立場を押しつけられているように感じはじめた。


そう思い始めたら父には反発心しか生まれず、父がいうことは全部押しつけに思うようになってきたのだ。

自分はただ父の笑顔が見たかっただけなのに…いつからこんなにも拗れたのだろう。

『俺は領主にはならない!俺は王国を守る騎士になるんだ!!』

父に反発しはじめた頃に自分が父に言った言葉。

自分なりにも葛藤があったが父はどんな気持ちだったんだろう。

自分のような領主になりたいと言っていた息子が違う夢を言い始めたのだから。
父には『馬鹿を言うな。お前は領主になるのだ』と返され、それもまた押しつけだと幼いアスベルは思った。

「子供だったよな…俺…」

空を見ても答えは返ってはこない。
自分のようになりたいと言っていた息子があんなこと言って親父だってショックだったのに。

あのように言葉を返すしか出来なかったのだ。

「本当に兄さんは馬鹿ですね。今頃に気がつくなんて」

ふと聞こえるはずのない声が聞こえ振り向くとそこには青い軍服を纏う弟ヒューバートがいた。

「ヒューバート!どうしてここに?」

「任務で近くにきたので寄っただけですよ。すぐに立ちます。兄さん…父さんの思いを気がつけなかったのは僕も同じですよ」

「…ヒューバート…」

「父さんがどれだけ僕たちを愛してくれていたからはあの日記でよくわかりました。愛してくれていたからこそ自分から憎み役を出てくれた…僕はやっとそう思えるようになりました」

もしも自分がラント家次男のままの生を生きていたらどうなっていただろう?

望まない形で大好きな兄と跡目争いをしていたかもしれない。
大好きな兄と対立していたからかもしれない。

それは何て辛いことか…。

今から父さんの思いがわかっても遅いのかもしれません。

でも…空から僕と兄さんを見守っていてください。

姓が変わっても僕ヒューバート・オズウェルは兄アスベル・ラントを支え貴方が愛した街ラントを支えて行きます。

だから父さん…見守っていてくださいね。

END


※※※

ムーン様が体調回復記念にと小説をサプライズでプレゼントしてくださいました。

アスベルのアストン父ちゃんに対する思いにしんみりしましたが、いろいろな経験をして大人になったアスベルがとても素敵でした。

アストンの遺志を継ぐアスベルを応援したくなるお話でした!

ヒューバートの言葉もすっごく良かったです♪

ムーン様ーっ!
サプライズでこんな素敵な小説をプレゼントしていただいて本当にありがとうございました♪

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