小さくなった朱

『小さくなった朱』

それはバンエルティア号では日常だった。
ライマ国の第2王位継承権を持つかれアッシュ・フォン・ファブレはいつもの日課の朝食を食べ終わり、新聞を読みながらゆっくりコーヒーを飲んでいた。

『最近は依頼ばかりで疲れたしたまには休息をするか…』

アッシュは新聞を閉じながら兄であるルークのことを思い浮かべる。

『ちっ!いつもあいつは人が休息してるときにちょっかいばかり出して来やがって…あれでも未来のライマ国王なのか!!』

アッシュはそう思いながら新聞を畳み食べた食器を片付けそうと立ち上がる。

アドリビトムに来たばかりのころはずっとメイドや使用人がいて当たり前の生活をしていたので初めは食器をそのままに立ち去ろうとした。
それをしたときのアドリビトムのリーダーのアンジュの表情は今思い出すだけでも寒気が出る。

食器を片付け食堂を出て廊下を歩いているとドン!!と何かがぶつかる。

何だと思い下を見ると自分を必死に抱き締めている朱金の髪を持つ少年がいて…少年はアッシュを見つけるとニコリと笑みを浮かべる。

どこかで見たような…そんな感覚になり、その答えは目の前にいた少年が解決してくれた。

「アッシュ兄だ!俺ルークだよ!!同じ赤い髪だし翠の瞳だからすぐわかった〜」

目の前の少年の言葉にアッシュは思わず「はっ?」とすっとんきょうな声を出す。
ルークは自分の双子で兄だったはず…普通に考えれば目の前の少年がただ勘違いしているだけだと考えるのだが…先ほどの少年の言葉にあった赤い髪と翠の瞳はライマ国の王族のみが用いる色合い。

自分たち双子以外にこの色合いをもつ者はいない…だったら…やはり…。

「…ルーク…か?」
「うん!!」

その答えを聞きアッシュはとりあえずルークを抱き上げて怪しい研究者達が(主に眼鏡軍人)がいる研究室に走っていった。
研究室に向かう途中であった達には「俺の親戚だ!!」と言ってきたがバレるのも時間の問題だろう。

研究室に行きアッシュはドン!と扉をあける。(そんなことしなくても自動扉なのに)

「眼鏡!ルークに何をした!!」

「おやっ…私が犯人だと断定ですか。心外ですね…仲間に疑われるというのは…」

「思ってもいないことを言うな眼鏡!で…何をしたんだ?」

眼鏡軍人、もといライマ国軍大佐はしれっと答える。

「別に私はただ飲めば肉体年齢も精神年齢も約10年ぐらい小さくなる薬を間違えて!ルークに渡してしまったんです」

回想

「ジェイド、パナシアールボトル持ってるか?」

「ボトルですか?ちょっと待ってくださいね」

「あんだよ!チンタラしてんじゃねえよ」

「はいはい。はいボトルです」

「おう!」

「おやっ…どうやら急かされるあまりに試験で作ったボトルを渡してしまったみたいですね。まっ害はありませんし、暫く様子を見ますか」

ジェイドはハハハと笑う。

回想終了。

「ってそんな理由で人の兄をあんな姿にしたのか!?」

アッシュは自分の足下をぎゅっと抱き締めているルークを指しながら言う。

「ハハハ(笑)良いじゃないですか!七歳のルークは本当に可愛らしいですし。害にらなりませんよ」

「害にならないって…かわいい?」

「アッシュ兄?なんかむずかしい顔してるよ」

お前のせいだとアッシュは叫びたくなるのを耐える。

相手は兄とはいえ今は幼い子供なんだから。

「ねぇ、アッシュ兄!かくれんぼしようよ!!」

「はっ?何で俺が…」

「アッシュ兄…」

目がウルウル。

「っ…わかった!今日だけだからな!!」

「うん!!」

その日の休日をアッシュはすべてルークにつぎ込んだ。

しかし翌朝ルークは元通りになりアッシュは密かに落ち込んだ。

そして今までけんかばかりの兄弟だったがアッシュが何故か優しくなりルークは気味悪くなっている。

END


※※※

いつもサイトにご訪問してくださるムーン様からいただきました。

お礼を、ということでいただいた作品だったのですが、とにかく作成が早くてかなり驚きました。

ちっさいルークが可愛くて、優雅に(?)コーヒーを飲んでいたアッシュの驚きっぷりが面白かったです♪

ムーン様、本当にありがとうございました♪

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