事実は小説より奇なり

事実は小説より奇なり。

世の中にはそのような言葉が有りこれの意味するところは『この世に実際に起こる出来事は、フィクションの小説以上に不思議な巡り合わせや複雑な変化に富んでいる』という意味である。
ジュード・マティスは、まさしくそんな事実の真っただ中に居たりする。

暇なのか、チーグルとか言う魔物と戯れる朱毛の子供を抱っこしながら、天を仰いだ15歳(肉体的には)の今日この頃。


さて、事の起こりが何であったのかと言う所から回想してみよう。

ジュード・マティスはキムラスカ=ランバルディア王国、ファブレ公爵家長男のルーク・フォン・ファブレ様尽きの主治医兼護衛役である。
ルークお坊ちゃまは『特殊な訳有な症例の患者』であるため、主治医になったジュードは何処へ行くにもルークの傍に居る事を義務付けられるのだ。

よって、朝はおはようから、夜はおやすみなさいのその最中まで。二十四時間ほぼニコイチ状態なのだ。お食事は勿論、お風呂も一緒と言う状態。
お蔭様で使用人のガイから物凄く羨ましそうな目とか向けられたが、まあこれは無視で良いだろう。良いと言う事にしている。気にしたら疲れるから。

さて、従って訓練の最中だろうとも傍に居るのだが。
あんなことになろうとは思わなかった。

訓練中に、どうした訳か奏でられた美しい歌。眠気を誘うその歌のせいで、ふら付き始める一同に頭上から声が降る。
白昼堂々、不法侵入である。何て堂々としているのだろうか、しかもよそ様の家の屋根の上ですよお嬢さん。うっかりそんな事を考えてしまう。

不法侵入のお嬢さんは、どうやら本日の客人であるヴァン・グランツに用向きがあるのだとか。
何故ここでその用を済まそうとしたんだろうか、他所でやれば良いだろうに人の家でやるのは子供の教育に良くない、等々思ったが勿論相手には聞こえない。
聴こえなかったが故に展開は進み、不法侵入から襲撃者にジョブチェンジ。なんてこったいとは、その場にいた大体の人間の感想である。

兎も角、襲撃者はヴァンに用があるらしいが、その傍に居るのは当家のお坊ちゃま。

不味い、とジュードは眠気を振り切るべく自身の舌を噛み、強引に自身の主導権を取り戻し、そして守るべく駆けた。

そして、気が付いたらまさかの瞬間移動…と言う名の疑似超振動である。

目的の人物、ルークは傍に居るから良いとしても、ヴァンは何処へ行ったのだろうか。
襲撃者のターゲットの癖にまさか疑似超振動を免れたと言うなら、ちょっとムカツクが、まあ居ないなら居ないで構わない。

問題は、襲撃者がここに居ると言う事である。
どうしよう、と思うも向こうは先に目を覚まして居る上に、こちらに来てしまった。
来てはいけない訳ではないのだが、何と言うか反応には困る。


「あの、結局貴女は何の用があってファブレ家に?白昼堂々よそ様のお宅の屋根の上に登って、挙句ああいう事は困るんですが…。」
「え、あ…そ、そうね…確かに貴方の言う通りよね…ごめんなさい。私が非常識でした…。」


話せば意外に通じるらしく、相手は我が身の行いを省みたのかしおらしく謝罪した。
思い出してみると、結構恥ずかしかったらしい。よそ様のお宅の屋根に上って、という部分に至っては特に。

個人的には事情も聴いておきたいのだが、こちらは聞き出せなかった。
現状ジュード一人しか護衛役が居ないのだから、余計な刺激は与えない方が吉だろう。
そう結論してジュードは強引に聞き出す事は止めた。

さて、襲撃者改めティアの事情は一先ず置いておくとして。
問題は、ルークの事である。

如何せん、彼は周りに秘さねばならぬ事情があるのだ。だがしかし、今モロバレしてしまって居る。
それと言うのも、一目瞭然まるっと見えているのだから。


「なんだよ…お前、師匠にヒドイ事しようとしたフホーシンニューシャだろ!!フホーシンニューって悪い事なんだからな!サンタがこなくなるんだぞ!!」
「え、ええ…ごめんなさい、とっても反省して居るわ。勝手にお家に入ってごめんなさいね…サンタにも謝っておくわ。」


ルークの言葉にティアは素直に頭を下げたが、その裏で「可愛い…可愛い…っ!」と小声で悶えている。
どうやら可愛い物好きらしいが、それを抜きにしても女性にはポイントが高かっただろう。

小さな子供の精一杯の「悪い事はやっちゃいけないんだぞ!」と言う注意は。引き合いに出すのがサンタクロースと言うあたりが特に。

そう、これこそが『特殊な症例』、彼の抱える秘すべき特殊事項だ。
本来、17歳である筈のルークは…誘拐の末0歳の赤子になってしまったのである。

ジュードが傍に居るのもこれが大きな原因だ。ジュードは赤子のルークを廃墟のような場所で発見し、これを保護して暫く育てていたのである。
白光騎士団が駆けつけるより早く、ヴァンが助け出すより早く、ほぼ入れ違いの状態でジュードはルークを連れて行った。

そうして行方不明状態続行が暫く続いて実に二年。
二歳と十歳の子供は、ケセドニアのキムラスカ領事館にて保護されたのだった。

そこから暫くはてんやわんやの騒ぎであったが、結局生体情報の一致により二歳の児童はルーク・フォン・ファブレと断定される。
ジュードに関しては、廃墟に赤ん坊と言う誰がどう見ても捨て子の構図と受け取り保護してそのまま育てたと言う事で、無罪放免。

…しかし、実際はローレライの画策した事である。

ジュードはローレライのお蔭(せい)でオールドラントに若返った状態で、こちらもローレライの細工のお蔭(せい)で赤子のルークと出会った。
どうしてそうなった等々の説明は割愛させていただくが、少しだけ言えばオールドラントの人間に頼みたくてもイマイチどうにもならないので、他所の世界とは言え何度も世界の危機を救った、見込みのあるジュードにまるっとお願いしてしまった。そんな感じだ。

ケセドニアのアスター邸にてルークを育てつつ世話になって居たジュードは、ファブレ家に移された後もこうしてルークお坊ちゃま尽きとなり今日に至るのだが、よもやこんな事に成ろうとは。
公爵家にとって醜聞にも弱点にも値する、17歳である筈が7歳のお子様状態のコレ。

バレてしまったのだが、どうしようか。ジュードはそっと天を仰いだ。

兎も角、此処に居ても始まらないと言う事で場所を移動。
すったもんだの末にエンゲーブにまで来られたのは良いが、まさかのマルクト領だ。余計にどうしようである。

不法侵入は悪い事だからごめんなさいをする為にもティアはキムラスカに赴く事には、肯定的だ。
多分、ルークが「悪いと思ってるなら謝らないと駄目なんだぞ!」と言う言葉が聞いたのだろう。可愛いと身悶えていたから。

さて、子供に戦わせる訳にもいかず、基本戦闘はティアとジュードの二人。まあ戦闘面はちょっとした理由から色々出来るジュードが居るからまだ良いとして。
目下の問題はどうやって帰るのかだ。

悩む二人を他所にルークは観光気分。まあ、子供だし泣きわめかれるより良いだろうと思われるが。
どうしてこうなったのか、と切に問いたい。


「この餓鬼!!お前が盗人だな、覚悟しろよ!!」
「俺そんな事やってない!!今日はじめてここに来たんだ、できるわけねーだろ!!」
「その子の言ってることは本当です!!乱暴はやめて下さい…痛っ!」
「ジュード、ルーク、大丈夫…!?ちょっと貴方、その子を下しなさいよ、どうしても抱いて移動したいなら私が抱っこするわよ、代わりなさいよ!!」


どんな理由か食料泥棒呼ばわりである。そしてティア。それは可笑しい。
乱暴に腕を振り払われたジュードであるが、ティアの切れっぷりと可愛い物好きのタガが外れてきているアレコレにやや脱力だったと言う。

その後、導師イオンの登場により疑いは晴れたが、勝手に疑われるは、ジュードに乱暴はされるはで、ルークはご立腹だ。
小さなほっぺをむすっと膨らまして怒りを訴えている。それに身悶えてうっとりして居るのはティアだ。
可愛い物好きを隠して居るのではなかったかと、ジュードはちょっと疑問に思いつつ夕飯の支度真っ最中。突込みは出なかった。

さて、ご立腹のルークは真犯人を捕まえなくては気が済まない。


「明日チーグルの森いくぞ!!シンハンニンをケンキョしないと…!」
「真犯人、検挙、ね…ルークは公爵子息であって兵士じゃないでしょ?もうさっきの軍人さんにお願いしちゃったら良いんじゃないかな?」
「ダメ!!だって、あいつらジュードにもヒドイことした…しかもそれ、ちゃんとごめんなさいしなかった!!あれじゃ、あいつらんちサンタ来ないぜ。」
「大人だから来なくても良いんじゃないかな…よし、カレー出来たよ。」
「カレー…!!…はっ!カレーでゴマカそうったってそーはいかねーぞ!!行くったら行くんだ!チーグルにもごめんなさいさせる!!」


お子様はカレーで騙されてくれなかった。誤魔化し失敗か、とジュードは器にカレーを盛りつつ失敗を悟る。
そんなジュードを他所にルークはターゲットをティアに移して、手振り身振りでチーグルの森行きの賛成票を得ようとして居た。

一所懸命なその姿。手振り身振り全身で訴える所作。そして必死なお願い。


「な、いいだろ!?ティアはいいって言ってくれるだろ!?」
「そ、そうね…良いんじゃないかしら…チーグルって小さくて可愛いみたいだし、ルークとのツーショット…可愛いと思うわ。」


ダメダメなお手本と言う本が有ったら是非一例に加えたい様子でOKを出した。
ルークに両手を握って貰えたことがトドメとなった模様。うっとりとした顔で頷いている。そんな顔は見えていないルークはドヤとジュードを見た。


「ほら、ティアはいいっていってるぜ!!ジュードもいいだろ、いこーぜ!」
「ティアはよく分かってないよ、その表情からして…はあもうわかった、行こうか。」
「やった!」
「ただし、僕から離れちゃ駄目だよ?約束できる?」


そう言われてルークは良い子のお返事をした。そしてジュードへとすっ飛んで行って腰に抱きついた。
ティアは残念そうだが、天使の戯れ、或いは兄弟の如く目に映るのか、目の保養とばかりに心のシャッターをバシバシ切りまくったと言う。

そんなこんなで、翌日。波乱は留まらなかった。

どうしてか、導師イオンとの再会である。魔物に囲まれているので源霊匣ヴォルトに退けて貰い、一応の危機は脱したのだが、彼は何故ここに?
すると脱走してきたとサラリと返って来た。案外アクティブでいらっしゃるらしい。導師が脱走って、それで良いのか神託の盾騎士団よ。

まあ、最高位が良いと言って居るので、内情はこれ以上問わない事として。
ちょっと身体が弱いらしいイオンに根は良い子の鑑であるルークは手を繋いでやる、と不器用に気を使って居た。
嬉しいらしく礼を言うイオンに、ルークはと言うと。


「べ、べつに、おまえのタメじゃないし!転んだり、具合悪くなったら大変だからで…えっと、そう、俺のタメなんだぞ!そうなったら俺が困るからだもん!」
「そうなんですか。じゃあ、ルーク。僕が転ばないようにお願いしますね。」
「お、おう…よろしくしてやる。」


等々言ってツンデレを発揮していた。ガイが居たら確実にイオンを羨んだだろう。なんて大人げのない。
イオンは楽しそう、ティアはバイブレーションモードの様に身を震わせて悶えたと言う。

行楽お気楽モードなのに、チーグルとか言う生き物は比較的直ぐに見つかった。見つかったが成程、煩い。そしてウザイ。
ジュードは微妙に煩いとは思ったが、まあウザくはない。かと言ってティアの様に可愛いとも感じなかったのだが。

しかしルークは煩いしウザく感じた模様。ぎゃあぎゃあ言いながらチーグルを追い掛け回している。
その姿はティアには楽園のように映ったらしい。マナーモードの如く震えて身悶えながら堪能した。

長老と思しきチーグルから事の発端を聞き、まあ人里付近にライガが居るのも困るので、せめて立ち退きを、と言う事になった訳だが。

ライガはご立腹だった。と言うか寧ろ激怒の勢いだ。
そりゃ、ライガにしてみれば別に来たくなかったが、住んで居た森が燃えてしまったから仕方なく此処に居るのだ。
だと言うのに迷惑なので出て行って下さい。成程、それは怒るだろう。

一触即発モード、ティアは可哀想だが駆除をと言うし、源霊匣達は『ジュードに咆えるとか何様だこの獣、滅ぼしても良いよね、良いに決まってるよね。』となんか殺気立っている。
頼むから落ち着いて欲しい。ジュードは頭を抱えたくなった。

そんな中、一触触発手前状態に…ルークが泣いてしまったのだ。


「バカバカバカぁ…ライガは悪くね―もん、なんで出てけって言うんだよ、かわいそうじゃん!」
「ル、ルーク…可愛い…!じゃなかった、駄目よ、危ないわ!それに、ずっとここにライガが居るのは無理なのよ…?エンゲーブの人だって食料がなくなって困ってたでしょう?」
「そうだけど、それだってチーグルのせいじゃん!ライガのせいじゃないもん…!」
「それは間違ってないけど…ずっとここに居るって訳には…。」
「じゃあ引っこしにしてもらえば良いじゃん…っ、ライガやっつけるのはかわいそうだよ…!」
「ルーク…泣いてる姿も可愛い…!」


ティアとの会話はイマイチかみ合って居なかったが、まあ置いておくとして。
兎も角、ルークの言う事は間違って居ない。子供故に純粋無垢で、だからこそ真っ直ぐで、正しいのだ。
しかし、正しさだけが誰かを助けてくれる訳ではない。この場合、この正しさはエンゲーブの者を救わない。救ってくれない。

時に間違っていると分かっていても、犯さなくては救われない事だってある。
子供故に純粋なルークはそれが許容できない。だが、どこかで分かって居るのだ。エンゲーブの者を無碍に扱って良い訳ではないと言う事も。

濡れ衣を着せられ腹は立ったが、代表者のローズはちゃんと謝ってくれたし、林檎屋のオヤジはお詫びにタダで林檎を幾つか譲ってくれた。
そんな人も居る、だから彼らが困ったり、ましてや傷つくのは間違った事である。

でもだからと言って非のないライガを傷つけるのも可笑しい。間違っている。
子供の言う事は、やはり正しかった。

終いにはわんわん泣いて、ルークはライガクイーンにがばっと抱きつく。張り付く、という様にも見えるのだが、周りの者がヒイと息を呑むには十分すぎた。
イオンが卒倒しかけ、ティアもムンクの『叫び』寸前の顔で真っ青である。ジュードも流石に一瞬焦ったのだが、驚いた事にライガクイーンは泣く子供をあやし始めた。
後に知るのだが、ライガクイーンは人間の子供を育てた経験があるとかで、実は子供に弱かったらしい。母性を刺激され、舐めてあやしてやって居る。
危険はなさそうなので良かったのだが、出来ればあんまり心臓に悪い事はして欲しくないなぁ、と思うジュードだった。

さて、とジュードは頭を悩ます。一番いいのは元の森に返って貰う事なのだが、帰る場所が焼野原では意味がない。
他に行けそうな場所、と考えていると源霊匣マクスウェルがそっと囁いた。


『ジュード、ライガの居た森に行って貰うのじゃ。さすれば、儂の元素を繰る力でどうにか出来るやもしれん。』
「(良いの、マクスウェル…?)」
『なに、構わんよ。元の通りとまでは行かぬが、住む分には困らない程度にはなるじゃろうて。』
「(わかった、ありがとう…)ライガクイーン、貴女の住んで居た森に僕を連れて行って貰えませんか?元通りとまでは行きませんが、住む分にはどうにか出来ると思うんです。」


ミュウを介して、ジュードの言葉を聞いたライガクイーンは、顔を上げて先を促す。


「『どう言う事だ』と聞いてますの。」
「百聞は一見にしかず…兎も角、見て頂ければ分かります。それに、こういう場合もう一つ…論より証拠ですね。…一度でいい、信じて下さい。その子に優しく接してくれる貴女の力に、僕はなりたい。」
「『………良いだろう、唯一私を心から案じ庇ったこの子に免じて信じてやる。』と言ってますの!」


交渉は何とか成立。ほっと息をつくジュードに、未だライガクイーンに張り付いたままのルークが顔を上げる。
出来るの、と目で問いかけるから、ジュードは頷きで返した。

出来る出来ないじゃない。やるかやらないか、なのだ。

そして、焼け野原だったライガの森は。確かに息を吹き返した。

それは不思議な光景だった。
早回しの映像のように、炭化した木々から緑が芽吹き、緩やかにしかし確かに木々が今一度生命力を取り戻していく。
草一本無かった煤けた土から草が生え、堅い感触だった靴の裏が押し上げられて柔らかさを伝えてくる。

瞬く間、とまでは行かないまでも森は確実に生命力を取り戻し、その姿を取り戻していった。
元の通りとまでは確かに行かないだろうが、それでも森はライガを迎えるには不足のない状態を取り戻す。

奇跡の光景だとティアとイオンは思った。同時に、何故こんな事が出来るのだろうかとも。
疑惑のようなモノが、畏怖と一緒にティアの心中に浮かぶ。無理もない、こんな光景見せつけられて平気でいろと言う方が難しい。

しかし、ルークの歓声にティアの疑惑はコロっと弾き飛ばされた。


「すっげーー!ジュードすげー!!カッコいい!!」
「…そうかな、ありがとう。」
「カッコいいよ、もっとイバっていいんだぜ!?ちょーカッコよかったんだから!!な、ティア!!」
「え…?そ、そうね…すごいわね。凄く、可愛い…。」


ルークが、と付くのだろうが。もう良いやとジュードは放置することにした。
何というか、彼女はルークがいればそれで御せる気がする。
御せるならそれで良いので、深く考えない。考えても多分疲れる。尚、その考察は非常に正しい。

きゃあきゃあはしゃぐルークにまとわりつかれながら、ジュードはようやっと一息ついた。

そう、本当に一息でした。束の間でした。

ライガクイーンに礼を言われ見送られて、一応チーグルの森まで戻った。そうしてそこで、ミュウがルークに使える事になった所までは良いとしよう。
最初はジュードに、とか言ってきたが、ライガとの良好な交渉に貢献したのはルークだ。その為、是非ルークにと言うことで纏まったのである。

まあ、遊び相手が一匹増えたと思えばそれくらい良いのだけど。

問題はこの後。
昨日の軍人さんである。何時からスタンばっていたのか知らないが、いきなり包囲されて陸艦へ強制連行。
まあ、期せず計らずではあるが、不法入国は事実なので仕方ないとして。

ちょっと強行突破過ぎやしないだろうか、交渉方法。
あと、難しいこと言ってルークを頷かせようとするのは止めて頂きたい。

子供の教育に悪いのでそう言う言い方は、と注意すると相手、ジェイド・カーティスは微妙な顔。
まあ、教育係(ジェイド的推測)からの苦言であるため一応頷いたのだが、納得はしてくれていなそう。
彼は良く理解していた。ルークの秘すべき弱点を知った以上、マルクト側に有利になるように事を進めたい。
その為には、子供であっても了承の意が必要だ。今のうちに懐柔出来るのなら、それに越したことは無い。

しかし、理屈っぽいジェイドは分かっていなかった。
子供とは時に、色んな理屈を越え、期せず鉄槌を落とすものである。


「なー、ジュード。このおじさん何イミわかんないこといってんの?俺、この話あきた。」
「…お、おじさん…ってルーク…。」
「……………。」


この一言で撃沈、撃墜されたという。

ビシッと固まったジェイドにティアが慌ててフォローした。


「た、大佐…あの、子供の言うことですから、真に受けないで…。」
「おじさんですってよ、ジェイド。残念でしたね。」
「イ、イオン様…!?」
「ブッ、イオン様…!残念って…ブフゥッ!」
「アニス…貴女まで…。」


フォロー失敗。身内の裏切り行為とさり気のないトドメが成されたという。

戦場では死霊使いと敵味方を問わず恐れられた男、ジェイド・カーティス。
ケテルブルクが産んだ比類無き天才。皇帝の懐刀である高位の軍人。
ジェイド・カーティスと言えば、兎も角そんな風に言われて恐れられてきたのだが。

子供にしてみれば、話の長い小難しい言うおじさんに過ぎない。
そう言うことでした。

さすがにグッサリ来たのかジェイドは、やや覇気を失った声でこう嘆願。


「すみません…おじさんは止めて下さい、そんな無垢で汚れない顔と声で、微塵も疑うことなくおじさんと言うのは…。」
「おじさん、何いってんの?」
「ルーク、おじさんじゃなくて、お兄さんって言って上げようね…。」
「そうなの?そのほうがいい?」
「そうなんだよ…。そうしてあげて…。」


微妙に納得行っていないようだが、子供はよい子のお返事で了承を伝えた。
余談だが、第三師団のその場にいた兵士一同は、生まれて初めてジェイドに同情と哀れみと、人間味を感じたのだとか。
ちょっとだけジェイドと部下の距離が縮まったという。

かくして、キムラスカへの帰還はまだまだ波乱を極めそうである。
ジュードの膝の上でチーグルとじゃれ合うルークを抱きながら、ジュードは陸艦タルタロスの天井の木目を眺めたという。



※※※


30万打達成企画に図々しくもリクエストをしたら何と…!!
こんな素敵な萌え作品を書いていただきました!!

ルークが第2のエルみたいで可愛い!!
ティアの言葉は私の言葉。
ガイ、ルークとジュードのことを羨ましがるのも分かる。
だがそこ代われ。
ルークとジュードのやり取りを見つめながら悶えるのは私だ!!

頭に浮かんだ疑問もルークの言葉一つであっさり弾き飛ばすティア。
そうよね、そりゃそうなるわ。

ライガクイーンにあやされるルークとかかわゆす…!!

萌えがとどまることをしりません!

どんな素敵作品が出来るかとワクワクしてたけど、自分の想像がいかに乏しいか再認識させられるくらい想像以上の素敵な作品でもう…うっはうはですの!

黒鳥様…!!こんな…、こんな…素敵すぎる作品を書いてくださり、本当に本当にありがとうございましたっ!!


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