心から守りたい貴方

注意…セネル水の民と陸の民のハーフ設定です。



今思えば、初めて会った時から俺はあいつの全てに引かれていた。

水の民には見られない銀色の髪も…でもその銀色の髪は夜の月光にとても輝いていて…。

本当に綺麗だと心から思った。

だけどこの水の民の里ではある意味異端の存在であるセネルに、いくら将来メルネス親衛隊長になるとはいえまだ子供だった自分には、同じ里の仲間であるセネルに何故あのような態度なのかと疑問に思いつつ、それを止めることは出来なかった。

でも…そんな自分の悩みも本当はちっぽけなものだったのだと思うようになったのは、俺がメルネス以外に守りたいという存在に出会ったのはあの日だった。

その忘れもしないあの日。

俺は将来のメルネスの親衛隊長として、自分と同年代の子供は絶対に受けない、大人でさえついていくのに必死な訓練の後に、里にある湖のところに来ていた。

水の民だかろうか…ワルターはこの水のある場所、特にこの夜の里の湖は疲れた身体もすぐに癒されるようで大好きだった。

昼間の湖も好きだが、夜の湖は月明かりが湖に満ちてまたいつもの違う雰囲気の出すこの時間での、この場所はワルターのお気に入りだった。

サァっと気持ちの良い風がふき、今日1日の疲れも吹き飛ぶような感覚にワルターは身を委ねる。

でも、その静寂を破るようにカザッという音がして、訓練を続けてきた戦士の習性なのかワルターは思わず立ち上がる。

「誰だ!?」

と立ち上がり声をかけると、まず始めに見えたのは、月明かりに照らされた綺麗な銀色。

その銀色の髪も持つ少年は水の民の衣装を纏い、身体中傷だらけでボロボロ だった。

だから一目でわかった。

この銀色の髪の少年がセネル。

この里では異端とされている水の民と陸の民のハーフの少年だと。

ワルターが声をかけるとセネルはビクッとしてその場から動かなかった。

ワルター本人はそんなに恐がらなくてもと思うが、先ほどチラッと見ただけでもボロボロだったセネル。

恐らく里の大人やもしくは同年代の水の民の子供に嫌がらせをされたのだろう。

だけどワルターにはもう1つ疑問に思うことがあった。

セネルが何かをぎゅっと両手で抱いているのだ。

セネルの手の中からは「ニャア〜」とか弱い声がして、ワルターの思考はついていけなかった。

「それは?」

と言いながらワルターはセネルに近付こうとしたが、セネルは「し〜」と静かにするような仕草をする。

「さっき決壊のギリギリの所で傷だらけだったんだ。怪我はテルクェスで治したけど…さっきようやく眠り始めたところなんだ」

そう言いながらセネルは愛しそうに眠っている猫を優しく撫でるが、ワルターからしたら猫より自分の手当ての方が先だろうと思う。

そんなワルターの言いたいことを何となく理解したのかセネルは苦笑しながら答える。

「俺は良いんだ。別にこれぐらいの怪我は慣れてるし…もうあまり痛みも感じない…」

その言葉にワルターは底知れない恐怖を感じた。

慣れている。痛みを感じない。

強がりとかそういうのを通り越して、毎日のように受ける嫌がらせから自己防衛をしているのだ。

慣れているから…痛くないから…と自分に言い聞かせて。

そう言いながら腕の中の猫を撫でながら湖を見つめるセネルの姿は、銀色の髪が月光に合いとても綺麗だと思った。

そして、自分の身体よりも傷ついた猫を助けるセネルをメルネス以外に守りたいと心から思った。

「セネル」

気がついたら名前を呼んでいて、呼ばれた本人がびっくりしている。

「何を驚いているんだ?」

「いや…今までハーフとか交ざり者としか呼ばれてなかったから…いきなり名前を呼ばれてびっくりした」

何でもないように話しているが、きっとセネルは今まで辛いこと、悔しいこと…涙流したことがたくさんあったはずだ。

でも自分だって自分のことしか頭になくてセネルのことなんてハーフがいるという認識ぐらいしかしていなかったのだから、周りの人間と大差変わりはないだろう。

でも今日初めてワルターはセネルという個人に向き合いたいと思った。

同胞だからとか…そういう理由ではなく…セネルという1人の人間として。

「俺はワルター。誠名は【デルクェス】だ」

ワルターはまずは自分を知って貰おうと手を指し伸ばすが、セネルは手を握り返して良いのか迷う。

ワルターはその躊躇っている手を取り固く握手した。

そしてセネルは躊躇いながらも自己紹介をする。

「俺はセネル。誠名は無い…長につけて貰えなかったから…」

誠名は里長がそれぞれつける、その人の本質を表すもう1つの名前。

だけどハーフであるセネルにはつけて貰うことは出来なかった。

それなら。

「【ウェルクェス】というのはどうだ?意味は【希望の翼】」

「えっ…?」

ワルターの言葉にセネルは一瞬何を言われているのか解らずポカンとする。

「何だ?俺が考えた誠名では不満か?」

ワルターの言葉にセネルはそんなことない!とばかりに首をブンブン横に振る。

「嬉しい…凄く嬉しいよ。ありがとう…ワルター」

「あぁ…これからも宜しくなセネル」

月明かりが照らすなかワルターの中ではもう1人守りたい存在が出来た日だった。

後日。

実はセネルとも仲良くしたいなぁと思っていたステラ&シャーリィ姉妹に先を越されたと嫉妬されて、姉妹は絶賛、黒魔術の勉強中だとは…ワルターは知らなかった。

END
※※※

ムーン様より、誕生日プレゼントにワルセネをいただきました!!

前日に発熱されていたのにも関わらず、私なんぞの誕生日を祝うために書いてくださったムーン様…。

優しすぎるぜ!!

そして私は果報者です!!

このあとにセネルをめぐってバトルが繰り広げられるのね!!
わかります!!

腹黒姉妹もあの手この手でセネルの気を引こうとするに違いない!!
ハーフネタとか大好きなんで嬉しかったです!!
ハーフネタいいよね!
Xのジュードくんみたいなものよね!

って、何言ってるんだか…。

ムーン様、本当にありがとうございました♪

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