会いたくて会いたくて。






「兄さん、久しぶりです。」
「ああ、フレデリック。追加の書類ならその辺においておいてくれ。
………?
ヒューバート!?」



世界を救う旅を終えた数ヵ月後…、ヒューバートは兄のいるラントへとやってきた。
執務に追われていたアスベルはノックされ、入室を許可したが、仕事に追われていて誰が入ってきたかまでは確認しておらず、追加の書類をフレデリックがもってきたものだとばかり思っていた。
顔もあげず、書類に目を通しサインを続けていたアスベルは途中で手を止め、顔をあげた途端に目を見開いた。



「仕事熱心なのもほどほどにしてくださいよ、兄さん。」
「あ、そうだな…じゃなくて!
なんでここに!?」
「自分の家に帰ってくるのに理由が必要なんですか?」
「そうじゃない!
もちろん俺だって嬉しいけど…ヒューバートだって忙しいだろ?」
「……母さんと手紙のやり取りをしてるんですが…」
「……?」



忙しい身でありながら、ラントに帰ってきたヒューバートに驚きを隠しきれない様子のアスベルにヒューバートは突然、母と手紙のやり取りをしていると話し始めた。
いきなりその話をする理由が分からず、アスベルは不思議そうに首を傾げた。
そんなアスベルの元にヒューバートは近付き、手首をいきなり掴んだ。



「兄さん。
食事もまともに取らず、睡眠時間まで削って仕事をしているそうですね?」
「…これくらい何でもない。
悪いな、ヒューバート。
せっかく来てくれたところ悪いんだけど、まだ仕事が山積みなんだ。
母さんかソフィと…」
「兄さん、立ってください。
行きますよ!」
「え?行くってどこに?」
「とにかく、行きますよ!」
「いや、だから俺は仕事があるからムリだって。
ソフィと一緒に行ったらどうだ?」
「……四の五の言わずに行きますよ!」
「ちょ、ヒューバート!?」



立ち上がる気のないアスベルをヒューバートは無理矢理立たせ、強引に執務室から連れ出した。
普段、強引なことをしないヒューバートがいつになく強引でアスベルが、戸惑っている間にラントから出ていた。



「……ヒューバート、行くってここのことか?」
「それがなにか?」
「それがなにか?じゃないだろ!
言っただろ!俺は忙しいんだ。
悪いが、戻らせてもらう。」
「…兄さん、僕が兄さんのことを心配するのは迷惑ですか?」



強引に連れていかれた先はソフィと出会った花畑だった。
ヒューバートに何の説明もなく連れてこられたアスベルは不機嫌そうに眉を寄せ、その場から立ち去ろうとした。
しかしラントに帰ろうと背を向けたアスベルはヒューバートの声を聞き、思わず立ち止まった。



「あの旅を終えてから、ずっと心配してました。
いつも無理、無茶、無謀は当たり前の兄さんがまた無理をしていないか、いつも心配していました。
そんな中、疲れを癒すことなく仕事に明け暮れていて、いつ倒れてもおかしくない状況だと書かれた母さんの手紙を読んだ時、僕がどんな思いだったか…、兄さんは全く分かっていません。」
「ヒューバート…。」
「僕は兄さんのことが大切なんです。
大切な人が体を酷使しているのだと、知っていてもたってもいられなくなるというのは、兄さんにとっては迷惑でしかないんですか?」
「そんなことはない!
ヒューバートが来てくれたこと、本当に嬉しいと思ってる。
…だけど…不安なんだ。
親父みたいにラントの領主としてラントのみんなを守れるのかどうか…、不安で仕方ないんだ。
…仕事をしていれば不安も和らぐから…。」
「だからそんな無理をしたというんですか?
兄さん。
兄さんは一人じゃないでしょう?
僕もいます。母さんやソフィもいます。
それに…兄さんはラムダたちのことを救いました。
それは守りたいと言う兄さんの強い意思があったからです。
兄さんの意思の強さは知っています。
ただ、兄さんも人間である以上、意思の強さだけではどうにもならなくなることも有り得ます。
もし…倒れてしまったら、いざという時に誰がラントのみんなを守るんですか?
兄さんしかいないでしょう?
それに、兄さん一人じゃムリなら…僕が、僕たちがいます。」
「ヒューバート…。」
「…息抜きするときはしてください。」



ヒューバートの言葉にずっと背を向けていたアスベルはヒューバートのいる場所まで戻り、その隣に静かに座った。



「本当に…ヒューバートには敵わないな…。
あんなに不安だった気持ちが嘘みたいだ。」
「兄さん…。」
「ありがとう、ヒューバート。
そうだよな…。酷使した体じゃ、本当に守りたいときにみんなを守れない。
……休めるときは休むよ。」



そう言って、アスベルは笑った。
その、笑顔にヒューバートも安心したように微笑んだ。
それを悟られのが何となく恥ずかしくて、眼鏡のブリッジをあげてごまかしたが、きっとそれさえもアスベルは分かっているに違いない。



「……兄さん。」
「ん?なんだ?」
「僕は兄さんのことが好きです。
…本当はずっと会いたかった。」
「……俺もだよ、ヒューバート。
会えて本当に嬉しい。」



そのあと、ヒューバートはアスベルの体をそっと抱き締めた。
アスベルも自分の体をヒューバートに預けた。



「兄さんに会いたかった。
心配でたまらなかったのも事実ですけど、兄さんに会いたくて会いたくてたまらなくて…、心配だからともっともらしい理由をつけて会いに来てしまいました。」
「そのおかげで俺は大切なことに気付けたんだ。
それに心配もしてたけど、それ以上に俺に会いたいって思ってくれていたということだろう?
…そんな嬉しいことはないよ。」
「……風が心地いいですね、…兄さん。
このまましばらく、ここでゆっくりしませんか?」
「そうだな。
この場所は本当に落ち着くな…。」
「そうですね。」



それから2人は離れていた時間を埋めるようにずっと花畑にいた。
帰りが遅いと心配してソフィが花畑にやってくるまでずっと。


End
※※※


ヒュアスの甘々で、というリクエストを賜りましたが…甘いのは最後だけ…。

ヒューバートがアスベルのことを、心配してることと、一番はヒューバート自身がアスベルに会いたくて仕方なかったんだぜ★というお話です。
ただ書いてる本人が楽しいだけの話になってしまいました…。

亜実様、こんな駄作でよろしければお受け取りくださいませ。

リクエストいただき、本当に嬉しかったですっ!
ありがとうございました♪

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