譲れない戦い




「俺はルークの被験者だ。
俺と一緒にいた方がいいに決まっているだろう!」
「アッシュ。
またですか?
貴方は何かにつけてそう言いますね?
…確かにルークの被験者は貴方です。
その前に1つ言っておきます。
フォミクリーを生み出したのは私です。
権利が一番にあるのは私だと思いますが?」
「バカも休み休み言ってよね!
僕はルークと同じレプリカだ。
だったらルークに一番近いのは僕だ!」
「その理屈で言えば、僕もルークに一番近いことになりますよね?
更に僕はシンクよりルークとの付き合いが長いことを考えれば、シンクよりも僕の方がいいかと思いますが?」
「お言葉ですが、イオン様。
私だったらルークが眠れなくても譜歌で眠らせてあげられます。私が一番適任だと思います。」
「何をおっしゃいますの!?
わたくしはルークの幼馴染みですわ。
わたくしと一緒の方がいいに決まっていますわ!」
「ここは料理の上手いアニスちゃんが適任だと思いまーす!」
「いや!ルークの世話係の俺がいいに決まっているだろう!」
「アリエッタ…、ルークと一緒にいるって決めた、です。
だから、アリエッタがルークと一緒にいます。」
「…………。
あ、あの…。
おれ、ひとりでも…。」



ルークの目の前で言い争いを繰り広げるアッシュたち。
それを戸惑った表情を浮かべて聞いていたルークは、恐る恐るそう言った。



「あのさ!
アンタ、モースに狙われてるって自覚ある?」
「ルークは、アリエッタたちが守る、です。」
「いいか、ルーク。
これは譲れない戦いなんだ。
誰がルークを一番守れるかという重要な話し合いなんだ。」
「いくらルークでも、この話し合いは欠かしてはいけないの。」
「そうですわ!ルークを一番守れる人がルークと同室になれる権利を得られるのです。」
「こればっかりは譲れないんだよねー。」
「…え、あ…。」
「ルーク。
必ず僕が勝ってみせます。
応援して待っていてください。」
「いや、でも…。」
「ルーク。
貴方はただ、黙って見て、待っていればいいんですよ。」
「待っていろ、ルーク。
俺が一番だと証明してやる。」



いつになく真剣な表情でバチバチと火花を散らして睨み合うアッシュたちにルークは困ったように眉尻を下げながら呟いた。



「ただの部屋割りなのに…。」



旅の途中で立ち寄った街で宿をとったアッシュたち。
個室の多い宿屋だったのだが、空き部屋の関係上、個室ではなく相部屋になる組が1つできることになり…。
モースに狙われてるルークを守るためにルークは相部屋にした方がいいという話になった。
…そのあと、アッシュたちはルークと共に一晩明かすのに相応しいのは自分だと互いに譲ろうとせず、言い争いを始めた。

それも、受付の前で。

周りの迷惑も考えずに言い争いをするアッシュたちにルークは途方に暮れた。



「ルークの被験者は俺だ!」
「ルークの幼馴染みはわたくしですわ!」
「ルークの本当の親は私です!」
「ルークの世話係は俺だ!」
「ルークの食事係はアニスちゃんだし!」
「ルークの寝かしつけ役は私よ!」
「僕はルークと同じレプリカで友達です! 」
「ルークと同じレプリカで戦える僕が一番だ!」
「アリエッタの友達と一緒にルークを守る、です!」
「分からない奴らだな!」
「そのセリフ、そっくりそのまま返すわ!」
「なんだと?!」
「いい加減に諦めてくださいまし!」
「だから、諦めればいいのはそっちだろう!」
「なによ!!」
「譲れないったら、譲れない!」



ギャーギャー騒ぐアッシュたちに宿屋の主人が大きなため息をついた。
それに気付いたルークは宿屋の主人に謝るが、言い争いはおさまることを知らない。



「おい、なんだよ?この騒ぎは…。」
「もしかして満室だった?」
「…!
シング!ヒスイ!」



どうしたらいいのか分からず、途方に暮れていたルークは買い出しから帰ってきたシングとヒスイを見た途端、慌てて駆け寄り、状況を説明した。



「…なるほどな…。
シング。今日はルークと同じ部屋に泊まれ。」
「うん。
わかった!」
「俺はこの騒ぎを静めておく。
ルークのことは頼んだぜ、シング。」
「うん。
ヒスイも静めるの頑張って!」
「え?えっ?」
「ルーク。
今日は俺と同じ部屋に泊まろう。」
「えっ?
でもアッシュたちは…?」
「ヒスイが黙らせてくれるから大丈夫。
さあ、行こう!」
「え?あ……、うん…。」



シングに手を引かれ、ルークは戸惑いながらもその場から立ち去った。
…そのあと、ヒスイの「食らいやがれ!」という言葉のあと、アッシュたちの悲鳴が響き渡ったのは言うまでもない。



END


※※※


黒鳥様にいただいたルークバカなアッシュたちでシンクとアリエッタも参戦でシング落ちというリクエストをいただきましたが…。

ただ単にアッシュたちがギャーギャー騒いでいるだけの話になってしまった…。

ヒスイは秘奥技でアッシュたちを黙らせました(笑)

思ったより、シングとヒスイの出番が少なくなってしまった…。

黒鳥様…。
こんな駄作でよろしければお受け取りください。

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