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あれから2年…。
ルークは家族に愛情を注がれ、すくすくと成長した。
実はルークがレプリカであることはファブレ邸の者達、全員が知っている。
無理もない。
ヴァンが「誘拐されたショックでルークが幼子になっていた」などという有り得ない理由で連れ帰ったのだ。
怪しい。怪しすぎる。
訝しく思わない方がおかしい。
ヴァンには表向きでは信じたように振る舞ったが、ヴァンがダアトへ戻ってからルークには精密な検査がされた。
そこでルークがレプリカであることが判明したのだ。
最初こそ驚いたが、アリーシャが「レプリカであろうとも、この子は私の弟です」と何の躊躇いもなく言い切り、あれやこれやと世話を焼く姿を見ているうちにファブレ邸の者たちは全員が絆された。
人懐っこく、誰に対しても感謝を忘れず(アリーシャの教育の賜物だ)、別け隔てなく接するルークにクリムゾンでさえも陥落した。
今ではただの親バカだ。
因みにアリーシャのおかげで(ザビーダとデゼルが全面協力)誘拐されたルークの居場所も突き止められた。
秘密裏に連絡を取り合い、誘拐されたルークはアッシュと名を変え、ダアトにいる。
実はルークと文通をして交流を持っている。
ヴァンにレプリカを憎むように仕組まれたアッシュも任務の途中でこっそりファブレ邸に立ち寄り、ルークと共に過ごした後、彼もまたあっさり陥落。
ブラコンと化していた。
そしてアリーシャもまたブラコン。
『ファブレ家…大丈夫か?』などと口にする者は誰1人としていない。
何故ならルークを知る者、全員が可愛がっていたからだ。
正に目に入れても痛くないとはこのことだ。
家族の中で特にルークが懐いているのはアリーシャだ。
どこに行くにもアリーシャの後をヒヨコのようについて回る。
これを見た兵士やメイドが壁をドンドン叩いたり、項垂れたりと悶えまくっている。
ちょっとした嘘も簡単に信じてしまうほどに素直で人懐っこくて(スレイの教育の賜物だ)、そして優しい子供を嫌う者がいるだろうか?
否、いるはずがない。
ファブレ家の家訓は「可愛いは正義。これに勝るものなし。」という事情を知らぬ者が見たら呆然とすること間違いなしなものとなった。
「あねうえっ!」
「ルーク!突然走ると転ぶだろう!」
「だいじょー…ぶっ!!」
「あっ!ルーク!!」
アリーシャが忠告したすぐ後、お約束と言うべきか。
べしゃりと転んだルーク。
それを目撃した兵士やメイドは「何ということだ…!」「ルーク様が転ばれてしまった!すぐに医者を…!」「代われるものなら代わってさしあげたい…!」と慌てた。
中には自分が転んだ訳でもないのに、自分が転んだかのように涙を流すメイドまでいる。
そんな中、アリーシャは駆け寄ることはせず、その場に膝をついた。
「ルーク、自分の力で立つんだ。」
「あねうえぇぇ…。」
うりゅうと瞳いっぱいに涙を溜めながらアリーシャを見上げるルーク。
その姿にすぐにでも駆け寄ってやりたい衝動を抑えながらもアリーシャは言った。
「ルーク。
男の子だろう?大きくなって私を守れるくらい強くなりたいと言ってくれただろう?
それなら、自分の力で立ち上がってここまでおいで。
大丈夫。ルークなら出来る。」
「あねうえ…。」
アリーシャの言葉にルークは、ゴシゴシと袖で涙を拭った。
ここのところ、ルークは「大きくなったら姉上を守れる、強くてカッコいい男になる」のが夢らしく、自分で出来そうなことは自分でやろうとするようになった。
それを知ってるからこそ、アリーシャはルークが自力で立ち上がらせることを選んだ。
そしてその期待に応えるように、ルークは自分の力で立ち上がってアリーシャの元まで向かった。
両膝には擦り傷で血が出ていたが、それでもアリーシャはしゃがんで両手を広げたまま、その場から動こうとはしなかった。
ヨタヨタしながらも、ルークはアリーシャの元まで自分の足で向かう。
そしてアリーシャの元まで辿り着いて抱き着いたルークを受け止めたアリーシャはギュッと抱き締め、優しく頭を撫でた。
「よく頑張ったな、ルーク。
さすがは私の弟だ。」
「あねうえぇぇ…。
おれ、すこしは…つよくなれた?
あねうえのこと、まもれるくらいつよくなれるかな?」
「もちろんだ。
ルーク、君は優しくて強い子だよ。」
「えへへ。
あねうえ、だーいすきっ!!」
そう言いながら、更にギュウッと抱き着いたルーク。
そしてそれを羨ましそうに見つめる複数の影。
「いいなぁ…。
俺もルークにギューってされたい…。」
「今、あの場でそんなことしたら幽霊騒ぎになるだろう。」
「そう言いながらも本当は羨ましいんじゃないの〜ミク坊。」
「だから僕のことを子供扱いするのはやめてくれないか?
それに…べ、別に羨ましいなんて…。」
「素直じゃないな。
抱き上げるくらい大したことじゃないだろ。」
「そういうデゼルだって、時々こっそりルークのことを抱っこしてるじゃないか。」
「なッ!?盗み見していたのか!?」
「いや、ルークが俺とマオテラスに嬉しそうに話してくれたんだよ。
デゼルが時々、優しく抱っこしてくれるんだって。」
「くっ…!
口止めしておくべきだったか…。」
「それにルークなら俺の器となれる。
ルークならこの世界を救えると思う。
その時が来たら俺は全力でルークを助けるつもりだ。」
「…まさかこの世界の大地が巨大な柱によって支えられているなどと誰も信じないだろうな。」
「俺とマオテラスは一心同体も同然だし、大地のことならマオテラスの専門だしね。
大地を支えてる柱も限界は近い。
でも、ルークに世界を救うために強要するのはイヤなんだ。
だから時が来るまで何も言うつもりはないし、時が来て話をすることになったとしても、ルークの意志を尊重するつもりだ。」
「そうだな。
…アリーシャが言っていた。
前に導師として旅をしていたスレイだからこそ分かることもあるだろう。
もしかしたらルークが導師となる可能性もある。
もしルークが導師となることを選んだその時はルークを守ってやってくれとな。」
「当たり前だよ、俺たちは仲間で家族なんだから。」
アリーシャに抱きつき、幸せそうに笑うルークを見つめながらスレイたちはルークを何があっても守ることを誓った。
それから5年後…、怪しいパイナップルヘアーの妹がヴァン襲撃に来たとファブレ邸に侵入し、更にファブレ家の正義…ルークを誘拐し、ルークが戻って来るまでファブレ邸はお通夜のように暗い空気となったり、アリーシャとルーク以外、視認出来ないはずなのに、とある胡散臭そうな鬼畜眼鏡のおじさんがスレイたちの気配を察し、天族たちが見えるようになるという胡散臭いメガネを作ることになったり、ブラコンアッシュとのドタバタ劇があったりすることをこの時はまだ誰も知らない…。
end
※※※
いつも仲良くして下さっている黒鳥様のサイトが30万打を迎えたお祝い&素敵作品のお礼に書かせていただきました。
Aの世界に生まれ変わったアリーシャ、天族の皆様、更に天族となったスレイが子供になっちゃったルークなお話でした。
マオテラスは完全に私の想像ですが…。
エドナがマオテラスを坊やと呼んでいたのでそこから勝手に想像しました。
今回はアリーシャとルークが姉弟で、仲が良いのを羨ましがる天族の皆様というリクエストだったのですがファブレ邸のみんながルークを溺愛するアホみたいな話になっちゃった…。
アッシュとルークが文通とかしてたら萌えるなーとか思ったんでそれも盛り込んじゃいました。
アッシュがついでにこなす任務の時に(任務がついででルークに会うのが1番の目的です)ルークに会いに来るけど、自分よりもアリーシャに懐いてるルークを見て「俺から生まれたのに何でだ!?俺は兄であり、父のようなものだろう!?」と嫉妬してたらいいよ。
ルーくんは何かあればアリーシャちゃんに報告してるといいよ。
因みに、ルーくんはヴァンてんてーにそこまで懐いてませんww
師匠のこと嫌いじゃないけど、姉上やスレイたちといる方が楽しいから。という理由で。
ヴァンてんてーは「スレイたち?スレイって誰だ!?計画の邪魔になるようなら始末せねば!」と色々と聞き出そうとするけどその度に自分たちが見えてないことをいいことにヴァンてんてーに術とか放って排除してると思われる。
術をくらって「だれだ!?」と振り返るもそこには誰もいない…。
ヴァンてんてーは勝手に『ファブレ邸七不思議』と名付けて怯えてるといいよww
ヴァンてんてーが書庫に1人しかいない時に限って本が宙に浮いてるとか、公爵邸の入り口でいつも強風に襲われて倒れるとかww
全部、天族の皆様の仕業ですww
ヴァンてんてーがルークのことを道具でも見るような目で見てることに気づいてるから許せない天族の皆さんです。
ダメだー!妄想が止まらないよ、このネタ。
ちなみにガイさんもルークと戯れたいけどなかなか戯れられなくて、アリーシャにベッタリなルーク。
それを物陰から羨ましげに嫉妬の視線とか向けてるといいよww
「は?復讐?ああ、復習ね。剣術の復習か?」ってくらい復讐のことなんて頭の隅に追いやって踏み潰してビリビリにしてゴミ箱に捨てて秘奥義で燃やしたってくらい眼中になくなってますww
黒鳥様、無駄に長すぎる上にgdgdでアホみたいな話になってしまってすいません…。
こうして欲しかったとかあれば言ってください!書き直すですよ!
最後に…黒鳥様、30万打本当におめでとうございますっ!!
これからもよろしくだぜ、ハニー!!
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