可愛いは正義。これに勝るものなし。

憑魔化したマオテラスを浄化するため、長い眠りについたスレイ。

どのくらい眠りについていたのかスレイには検討もつかない。

けれど。



「…ここ、どこだろう?」



眠りから覚めたスレイの第一声がそれだ。
マオテラスを浄化し、マオテラスの希望もあって共に居ることを選んだ。
だが…。



「マオテラスはどう思う?」
『う〜ん…、ここは異世界みたいだよ?』
「…へ?」
『だから、違う世界みたいだよ?』
「違う世界…、じゃあミクリオたちはいないってことか…。
まあ、でもいつか戻れるだろうし、考えてても始まらないし、まずは遺跡探検だ!」
『……スレイらしいね。』



異世界に来たと言う大きな問題よりも遺跡探検を優先する大らかさはスレイらしい。



「…えっ…、マオテラス…、あそこに子供がいる…。」
『えっ!?
あ…、本当だ…。』



廃墟らしき場所から出ようと歩みを進めていたスレイは少し開けた場所に子供を発見して立ち止まった。

そこには朱色の髪をした子供がいた。
歳は2〜3歳と言ったところか。
意識もなく倒れる子供は怪しげな機械の上に無造作に放置されていた。



「まさか…こんなところに捨てた…?
何てヒドイことを…!」



スレイが子供の元へ慌てて近付いた…正にそんな時だった。

栗色の髪をした男性を先頭に鎧を来た複数の兵士らしい男たちが現れ、「おお…、ルーク…。誘拐されたショックで10歳の子供が幼子になってしまったのか…!!」と栗色の髪の男性が子供を抱き上げ、すぐに踵を返してその場を立ち去った。



「誘拐されて強いショックを受けると小さくなることもあるんだなぁ…。」
『そんなことある訳ないでしょ…。
とにかく、怪しすぎる。
後を追いかけた方がいいんじゃない?』
「そうだね!
…あれ?でも、みんな俺のことは全く相手にしなかったね。
あんな近くにいたのに…。
とにかく後を追いかけよう!」



マオテラスに突っ込まれつつも、スレイは幼子を追いかけた。

その先で予想外な出会いがあることをスレイは全く予想していなかった。



***



「…アリーシャ!?」
「スレイ…!?」



栗色の髪をした男が連れて行った豪邸に居たのはスレイが旅に出るきっかけを作ってくれたアリーシャだった。

10歳の子供が幼子になって帰ってきたと大騒ぎになる中、スレイは兵士やメイドに話しかけるも誰にも相手にされなかった。
無視しているというよりは、スレイのことを認識していない様子に、戸惑っていたスレイは「ルークが戻って来たのか!」という声と共に幼子がいる部屋に入ってきた人物を見るなり驚きの声をあげた。

そしてメイドと共に部屋に入ってきた女性…アリーシャもまた信じられないと言わんばかりの表情を浮かべて声をあげた。



「アリーシャ様…?
こちらにはルーク様以外の方はいらっしゃらない筈ですが…?」
「え…?」
「すまない、ルークと2人きりで話をしたいんだが、少し席を外してくれないか?」
「かしこまりました。
御用の際はお呼びください。」



メイドの言葉に戸惑いの声をあげるスレイに対し、アリーシャは冷静に対応をした。
そして、メイドが席を外したあと、アリーシャはスレイに自分の状況を語った。

今、アリーシャは別世界に生まれ変わり、ファブレ公爵の長女として存在していること。

スレイのことを認識出来ていないのはスレイ自身が天族になっているからだということ。

目を瞬かせるスレイにアリーシャは丁寧に説明した。



「えっ…?
天族になってるの!?俺が!?」
「私以外の者が君を全く認識出来ていなかっただろう?
かつて君が天族のお方と旅をしていた時と同じだと感じたはずだ。」
「でも、もし俺が天族になっているならアリーシャは天族が見えるようになったってこと!?スゴイじゃないか!」
「この世界に生まれ変わってからだよ、天族のお方を自分の目で見られるようになったのは…。
…まさか君も生まれ変わって、更に天族になるとは思いもしていなかったがな。」
「生まれ変わった?
え?でも…俺はマオテラスを浄化してさっき、目が覚めたところだったんだけど…。
目が覚めたらよく分からない廃墟に居て、本当に驚いたよ。」
『驚いていたようには見えなかったけどね。
「まずは遺跡探検だ!」って楽しそうにしていた癖に。』
「マオテラス!だって遺跡なんだよ?
探検するだろ?」
「本当に君は変わらないな…。
マオテラス様もご一緒なのか。
マオテラス様、はじめまして。
アリーシャと申します。」
『よろしくね、アリーシャ。』
「あ、そうだ。
スレイ、ミクリオ様たちもこの世界に生まれ変わっていらっしゃる。」
「ええっ!?聞いてないよ!」
「今、言った。
それに、さっき言っただろう?
この世界で天族のお方を自分の目で見られるようになったと。
転生した私にミクリオ様たちがお声をかけてくださったんだ。
この世界にはスレイの知る天族のお方しかいらっしゃらないよ。」
「そうなんだ…。
じゃあ世界が違うだけでミクリオたちにも会えるんだ!それなら何も問題ないね!」
「…君は本当に変わらないな。」



そう言いながら笑うアリーシャにスレイは、ポカンとしたものの、深く考えることを放棄した。
スレイからすれば生まれ変わっていたとしてもミクリオたちとまた会えるんならそれだけでいいか。

これに尽きるらしい。

このすぐ後、アリーシャの計らいでミクリオたちとも、あっさり再会した。

ミクリオに「寝過ぎだよ、寝坊助」とからかわれたりもしたが、スレイはファブレ邸に居座ることを決めたのだった。







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