世界樹の精霊

リーゼ・マクシアもエレンピオスも救える世界を目指し、新たに仲間となったルドガーとエルと共に旅をし、合間に研究に明け暮れる生活を続けていたジュード。
分史世界で偶然発見したマナを生み出す木が存在すると記された古い文献を正史世界に持ち帰り…そしてその文献を解読した結果、今も存在していること、そしてその木がある場所をついに突き止めた。

その場所…サマンガン樹海にルドガーたちと共に向かったジュード。
樹海の奥深く…人が通るのもやっとの道なき道を進むと最奥に大きな木が立っていた。



「わあ…っ!
スゴいね、ルドガー!」
「ああ…これほどとは…。」
「だけど、サマンガン樹海の奥にこんな大きな木が立っているとは…知らなかったな…。」
「だが、とても心地好い場所だ…。」
「ほっほっほ。
心が洗われるようですね…。」
「これは大スクープだねっ!!」
『精霊の気配を感じるわね。』
「えっ?」



それぞれが大樹を前に感嘆の声をもらした。
そんな中、ミュゼがにっこり微笑みながら、精霊がいると告げた。

ミュゼの言葉にジュードが目を瞬かせた…そんな時だった。
大樹から光が漏れ、その光は人の形を象った。



『人間が世界樹の元に訪れるのは久方ぶりですね。』
「お、女の人が出てきた!!」



ジュードたちの元に姿を現したのは緑色の綺麗な長髪を靡かせる美しい女性だった。



「貴女は…精霊…ですか?」
『はい。
私はこの世界樹を守る精霊…マーテルと言います。』
「せかいじゅ?」



ジュードの問いかけに穏やかに微笑みながら答えた精霊…マーテルの言葉にエルが不思議そうな表情を浮かべ、首を傾げた。



『世界樹はマナを生み出し、そして微精霊を生み出す聖なる樹。
かつて…、私と契約した人間と共に世界に生み出されたマナを循環させていました。
けれど、その人間も死に…。
それ以降は私と契約出来る資格をもつ人間は現れることはありませんでした。
…そしてそのまま月日は流れ…、世界樹の存在は人々の記憶から消えていったのです。』



マーテルから語られた言葉。
それはジュードがバランたちと共に必死に解読した古い文献にも一部ではあるが、書かれていたことだった。

世界樹を守る精霊と契約するための資格を持つ人間が必要だと、その文献には記されていた。

そしてマーテルの言葉から察するに“契約”をすることが出来れば、リーゼ・マクシアとエレンピオスを救うことが出来るのだろうが、それはそう簡単にはいかないようだ。



『ジュード。
私はあなたをずっと待っていました。』
「えっ?僕を…?」



しかし、マーテルはジュードを見つめ、微笑みながらそっと手を差し伸べた。
ジュードのことを以前から知っているような口振りのマーテルにジュードは戸惑いながら彼女を見上げた。



『私と契約するために必要な資格は何だと思いますか?』
「…それは…。」



マーテルの問いかけにその答えを導き出せないジュードたちは顔を見合せたり、首を傾げたり、肩を竦めたり…そんなこと反応しか返すことが出来なかった。

世界樹の存在は実はミラも知らなかったこと。
ミラに後を託したマクスウェルなら知っていたのだろうが、ミラは世界樹のことも、マーテルのことも全く知らない。
だから、答えなど分かるはずもなかった。



『世界樹は、世界中にマナを送り、微精霊を生み出します。
そして、世界中に存在する微精霊を通して、いろんな人間を見てきました。
かつて、マクスウェルがここ、リーゼ・マクシアとエレンピオスを分けたあとも世界樹はエレンピオスにもマナを送ろうとしました。
けれど、どんなにあがいてもエレンピオスにマナを送ることは出来ませんでした。
助けたくても助けられない。そんな状況を世界樹は悲しんでいました。
…ですが、ジュード。あなたやあなたの仲間たちがその状況を変えたのです。』
「断界殻の消滅…ですね。」



ローエンの言葉にマーテルは無言で頷いた。
そして、そのまま言葉を続けた。



『エレンピオスにもマナを送ることが出来るようになりました。
…ですが、マナを循環させるためには契約をし、人間の力を媒体にしなければ十分なマナを世界中に循環させることは出来ないのです。
そのために、世界樹を守る精霊たる私と契約することの出来る人間が必要でした。
そして、見つけたのです。』
「それが、ジュードというわけか。」



ガイアスがジュードへ視線を向けながらマーテルに向かって確信に満ちたように言葉を発するとマーテルはそっとジュードの元に近付いた。



「で、でも…僕…、みんなと別に何も変わったことなんて…」
「ジュードくん。あるだろ?
俺たちになくて、ジュードくんにしかない…ことが。
この世界じゃまだジュードくんしかいないんじゃないか?」
「えっ?ええ?」
「…リーゼ・マクシアとエレンピオス。
両方の血を持つ者、というわけか。」
『そうです。
2つの分かれた世界を繋ぐ力を持つのは貴方だけ。
ですが、それだけでは私と契約することは出来ないのです。』
「まだ他に何かあるんですか?」
『…リーゼ・マクシア。
そして、エレンピオス。この2つの世界と精霊たちを守りたいという強い意思がなければ例え2つの世界の血を持っていても契約は出来ないのです。
けれど、ジュード。
貴方は精霊と人間が共存できる世界を強く願い、そしてその目的を果たすために行動しています。
それが何よりも大切なことなのです。』



そう言いながらマーテルはジュードの手を取り、そっと握った。



「マーテルさん?」
『ジュード。
私と契約し、世界樹の力になっていただけませんか?』
「僕なんかでいいの?」
『ええ。
貴方しか…いないのです。』
「…分かった。
よろしくね、マーテルさん。」
『こちらの方こそ、よろしくお願いします。
…ジュード。
私と契約したあと、貴方の保有するマナの量は大幅に増幅します。
…貴方の力を悪用しようとする者も現れる可能性もあります。
私と契約するということは、世界樹と一心同体も同然です。それだけは肝に命じておいてください。』
「…分かった。」



契約の前にマーテルから忠告を受けたジュードは強く頷いた。
心を強く持たなければいけないことはマーテルの表情や言葉から感じとることが出来た。

確かに、世界中にマナを循環させる世界樹を守る精霊と契約したジュードはとても貴重な存在となる。
世界樹のことは今、この場にいる者たちとジュードやバランと共に文献を解読した研究者たちしか知らないことだが、どこで情報が漏れるかわからない。

ジュードの体を媒体にしてマナを循環させることは出来るが、もしこのことを例えばアルクノアが知れば間違いなくジュードは狙われることになる。



「世界樹のこと、ジュードがその世界樹の精霊と契約したことを知った者には厳重に箝口令を強いておこう。
世界樹も、常に警備し、守った方がいいな。」
『いいえ。
世界樹の元には悪しき心をもった者は近付くことは出来ません。
そのように結界が張られています。
警備の必要はありません。』
「そうか。」



ガイアスが対策を口にしていると、マーテルは世界樹に警備は必要ないと説明した。

そして、ジュードはマーテルと契約を交わし、彼女と共に荒廃したエレンピオス各地に赴き、マナを送り、その地を再生させながら世界を巡った。

ジュードが立ち寄った場所はどんなに荒れ果てていても、後に豊かな自然を生み出す地になることから、ジュードは“再生と救いを与えし者”と呼ばれるようになる。


End

※※※

匿名様より、ジュードくんと精霊の話、というリクエストを承りまして、パッと浮かんだものを思いのままに書きなぐったので多少の矛盾とかは目をつぶってやってください。

こんなカンジだったら萌えるのになーなんて思ったり。

なんか矛盾とか半端ないと思いますけど書いてて楽しかったので、よし!満足だ!
書くだけ書いたのでそんな気持ちに満たされております。

匿名様。
このような駄文で申し訳ありません。

ですが、リクエストしていただき、とっても嬉しかったです!!ありがとうございました♪

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