自然な優しさ


「ジュードくんが、女の子だったら申し分なかったんだけどね。」



そんな何気ないアルヴィンの一言。
それがちょっとした騒動を巻き起こすことになると、誰が予想出来ただろう?



「な、なに?アルヴィン…いきなりそんなのこと言うなんて…」
「ジュードくん、お人好しで世話好きでおまけに料理も上手だし、料理だけじゃなくて洗濯までしてくれるし、ケガや病気をしても迅速に対応してくれるし?顔や背だって女の子みたいに可愛らしいし?
これが女の子だったら、お兄さん、本気で口説いてたとこよ?」
「…どうせ僕は背も小さいし…女々しいよ…。」
「え、そこに食いつくんだ?」
「アルヴィン、男で残念だったな。
ジュード、安心してくれ!私の胃袋は君に掴まれている!このまま掴まれたままで、私は構わないぞ?」
「ミ、ミ、ミ、ミラ!?
な、な、何言ってるの!?」
「お?照れるジュードも可愛らしいな。
どうだ?本気で私の嫁になるつもりはないか?」
「えぇ!?
だって僕、まだ15だよ!?」
「いやいや、ジュードくん。
まず、ミラ様の“私の嫁にならないか”発言にツッコミ入れるトコよ?
嫁じゃなくて婿でしょ。」



顔を真っ赤にしてわたわたするジュードの天然発言にアルヴィンは冷静なツッコミを入れた。
優等生のくせにこういうトコは天然だ。



「ダメです!
ジュードは私のお嫁さんになるんです!!」
『ジュードくんのやる気はイチゴ味ー♪
病みつきになるおいしさだよねー♪』
「ティ、ティポ!ダメです!
私のお嫁さんのやる気は食べちゃダメです!
アルヴィンのならいくらでも食べてて大丈夫ですから、アルヴィンので我慢してください!」
『えー、アルヴィンくんのやる気はマズイし、なんか汚れちゃうよー。』
「…エリーゼもティポもさらっとヒドイこと言うのやめてもらえます?
意外と俺は傷付きやすいんですけど?」



エリーゼとティポの毒舌コンボにアルヴィンは深いため息をつきながら、やめてくれと言った。
だが、ティポは面白そうに笑みを浮かべながらアルヴィンの周りをふよふよと飛びながら言葉を発した。



『アルヴィンくんのメンタルは豆腐だもんねー。』
「おい。そこの浮かぶ人形。
あまり失礼なこと言うと銃の的にすんぞ。」
『ぎゃー!豆腐メンタルアルヴィンにこーろーさーれーるー!!』
「まだ言うか!!」
「はいはい!みんな!
騒ぐのは自由だけど、これだけは言っておくよ!
ジュードは私のとこに嫁入りするって決まってるんだから!」
「レイア、ここは悪いが引いてくれ。
私の胃袋はジュードなしには生きられないと叫んでいる。」
「えー、いくらミラでも、それは聞けないなー。」
「確かにジュードさんはあの若さでは信じられないほど器量のいいお方ですからね。
気遣いや優しさもありますし、皆さんが取り合うのも頷けます。」
「あれ?そういえばジュードは?」
「皆さんが自分で遊んでるのに付き合ってるのも疲れるから軽く散歩でもしてくると言っていましたよ?」
「なに!?
まだデザートを食していないぞ!?
今日はジュードの手作りデザートは食せないということか!?」
「えー?
食後のデザート、楽しみにしてたのになー…。」
「アルヴィンが変なことを言うからです!!」
「はっ!?
なんで俺!?」
「確かに、ジュードが女の子だったらなんて話をしなければ今頃…デザートが目の前にあったはずだもんね!」
「うむ、確かにこの騒動を引き起こすきっかけを作ったのはアルヴィンだな。
アルヴィン、どう責任を取ってくれるつもりだ?
私の胃袋はすでにジュードの手作りデザートをおさめるためにスタンバイして待っていたのだが?」
「いや、だから…俺は…。」
「仕方がない。
エトワール堂のケーキで手をうとう。」
「おいおい!確か…その店のデザートってめちゃくちゃ高かったはずだろ!?
いくらジュードの料理がうまいからってプロの作るデザートと同じになるわけない…」
「……ジュードのデザートを侮辱する発言は聞き逃せないな…。」



アルヴィンの言葉に女性陣はピクリと、眉を寄せ…無言で立ち上がった。
アルヴィンは思わず後退りをするが、彼女たちは止まらない。
それどころか、それぞれが武器を手にして迫ってくる。



「いや、今のは…その、言葉のあやというか…」
「「「問答無用ーー!!」」」



そのあと、アルヴィンの悲鳴と激しい轟音が響き渡った。




***



「…結局、エトワール堂のケーキ買わされんのかよ…。」



ミラたちからリンチされ、追い出されたアルヴィン。
痛む体を押さえつつ歩いていた時だった。



「アルヴィン?」
「ジュード…。」



戻ってきたジュードとばったり会った。
買い物をしてきたのか、買い物袋を抱えていた。



「おたく、どこ行ってたのよ?」
「ん?
明日は1日休むことになったでしょ?
だったら、アイテムとか今日中に買い揃えておいたらみんな、ゆっくり休めるでしょ?
それに、デザートの食材も切れてたから買いに行ってたんだ。
戻ったら作るからアルヴィンもどっか行くなら早めに帰ってきてね?」
「……おたくがモテる理由がよーく分かった気がするわ。」
「え?もてる?」



アルヴィンの言葉にきょとんとした表情を浮かべるジュード。
きっと誰もがこういう優しさに惹かれてしまうのだろう。
他人のために体を張るのはもちろんのこと、こうして自然に誰かを気遣うその優しさは誰もがもっているわけではない。

明日はゆっくり休んでほしい。

そのために、こうして行動するその優しさにみんな惹かれてしまう。



「ジュードくん。
今日のデザート作り、手伝うわ。」
「え?どこか出掛けるんじゃなかった?」
「いーのいーの。
ジュードくんが戻ってきたなら解決したし。
それに手伝った方がはかどるだろ?」
「いいけど…、ちゃんと皮とか薄く剥いてよ?
アルヴィンに頼むと皮だけじゃなくて中の実まで剥いちゃうんだもの。」
「どこの主婦よ、ジュードくん。」
「でも嬉しいよ。
ありがとう、アルヴィン。」



そう言って笑うジュードにアルヴィンは微笑みを浮かべながらジュードが抱えていた荷物を肩にかついだ。
もちろん、そうすればジュードの背では届かないことを見越してだ。
案の定、ジュードはそんなとこ届かないの分かっててやるんだから…。と呟いている。
そんなジュードの頭をくしゃりと撫でながらアルヴィンは宿屋へと道を引き返した。

そして、そのあと…アルヴィンも手伝って作ったデザートをみんな、美味しい!と言って食べたのだが…ジュードが作ったにしてはいびつな形をしているデザートからアルヴィンがジュードと2人っきりで過ごしたことを知った女性陣はズルイ!とアルヴィンに、文句をたれた。

だったらジュードくんが料理を作る時は一緒に作ればいいんじゃない?というアルヴィンの言葉からジュードと誰かが一緒に料理を作ることになった。

End


※※※

さっちぃ様からのリクエストでジュード受けを…ということでシチュなどの細かいリクエストはなかったので思い浮かんだままのお話を書かせていただきました。

アルヴィンが全体的に不憫なカンジになってしまった。

ジュードくんは、みんなのおかんなのよーってことで。
私の中でエクシリアのメンバーたちの食事はいつもジュードくんが作っていた、という設定で固まっております。
もちろん、毎回食後のデザートつき(*´∀`)

なんか私の暴走した感が拭えなさすぎな話になってしまいました…。

さっちぃ様、こんな駄作でよろしければお受け取りくださいませ。
そしてリクエスト、本当にありがとうございました!


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