目の青いうちは…?

「シングと一緒だと大変だったんじゃない?」
「え?」



イネスとベリルと合流し、素材を集めるべく帝都周辺を捜索していた時、ベリルは隣を歩くルークに言った。
ルークはその言葉の意味を理解出来ず、目を瞬かせ、ベリルを見た。



「シングって能天気の塊だからねー。
能天気のお母さんってくらい?
シングの能天気ぶりにボクたちがどれだけ大変な思いをしたことか…。」
「ちょ、ベリル!
変なことをルークに言うなよーっ!」
「変なことなんて言ってないよ!ボクはありのままの事実しか言ってないんだからっ!」
「ありのままって何だよ!?」
「ありのままはありのままだよ!
今回のことだってボクたちがどれだけ心配したと思ってるの!?
それなのに本人はけろっとした顔してコハクたちと一緒に現れるし!」
「仕方ないだろ!?
異世界にいたんだから!」
「ボクたちがあんなに心配したのに仕方ないですむわけないってことくらい理解してよ!
もう本当にシングは能天気なんだからっ!」



口論するシングとベリル。そんな中、ルークは途方にくれた。
シングはルークの右側に、ベリルはルークの左側にいる。
つまり2人は、ルークを挟んで口論しているのだ。
挟まれたルークはたまったものではない。



「ルークはどう思う!?
シングの能天気さは時と場合を考えるべきだと思うよね!?」
「ルークにふるなよ!!
ルークが困るだろ!?」
「え、いや…えっと…。」



話をこっちにふってくることより、自分を挟んで口論されることの方がよほど困るのだが、2人はそれに気付いていない。



「ボクはルークに聞いてるの!
シングには聞いてないよ!」
「ルークは俺の味方なんだから、ベリルの言うことに納得するわけないだろ!?
そうだろ、ルーク!!」
「え、…う…。」



さきほど、ルークに話をふるなと言っていたシングがベリルと同じように話をふってきて、ルークは戸惑うことしか出来なかった。



「ほら!ルークもシングの能天気さに呆れてるよっ!」
「そんなことないよな、ルーク!!」
「え、いや…だから…その…。」
「ルークはどっちの味方なの!?」
「この際だからハッキリさせてくれよ、ルーク!!」
「ちょ、2人とも…顔が近い…。」
「どうなの!?」
「ルーク!どっち!?」
「いや、だからその前に顔が近いって…。」
「「ハッキリさせて!ルーク!!」」



ずいっと迫ってくることに戸惑うルークに構うことなく、シングとベリルはハッキリさせろと更に迫った。
話をまるで聞かないシングとベリルにルークは顔をひきつらせるが、2人はそれに気づかない。



「「さあ!どっち!?」」
「だああああぁッッ!!
うぜえッ!さっきから顔が近いって言ってるだろ!?
人の話を聞けよ!?
シングとベリルの仲が良いことはよく分かったっつーの!!」
「「へ?」」



ウザいと言いながら頭をかきむしるルーク。
対するシングとベリルは思わずぽかんとした表情を浮かべた。



「ちょっ、ルーク?」
「今の会話でどうしたらそうなるのか、ボクには理解出来ないんだけど…。」
「ベリルはシングがいなくなってすごく心配したんだろ?
それなのにシングがあまりにも鈍くて自覚がなくてそれを理解してないから苛立ったんだろ?」
「え?そう、だったの…?」
「さっきからそう言ってるじゃないか!
異世界に行ってもシングの能天気さと鈍さは変わらないんだからっ!」



ふーんだっ!と言いながらぷいっと顔を背けるベリルにシングはようやく随分と心配させてしまったことに気がついたようで、しゅんとしながら口を開いた。



「ベリル…、ごめん…。
そんなに心配させてたなんて気付かなかった…。」
「ボクの目の青いうちはシングの暴走を止めるために一緒にいてあげるから覚悟してよねっ!」
「うん!よろしく、ベリル!!」
「なあ、ベリル。
シングって、旅をしてた時はどんなカンジだったんだ?」
「そんなこと聞かなくていいよ、ルーク!!」
「むっふっふっ!教えてあげるよ、ルーク♪
いかにシングが能天気だったか、しっかりばっちり教えてあげる!」
「おう!」
「ベリルーっ!やめてくれってば!」



わいわいと騒ぐルーク、シング、ベリル。
それを、他の面々は微笑ましそうに見つめながら口を開いた。



「ルークだって相当鈍いくせにシングのことを鈍いとか言ってるぜ、ジェイド。」
「シングもルークに言われるようでは、ダメダメですねぇ。」
「でも、ルーク、楽しそう、です。」
「だいたい俺だって異世界に行ってたのに、俺のことはスルーかよ!」
「だってお兄ちゃんはノークインにいるものだとばかり思ってたんだもん。」



微笑ましそうに見つめる一行。



「…誰か、ベリルに目の“青い”うちじゃなくて“黒い”うちだって教えてあげた方がいいんじゃないかしら?」



そんな中、イネスがそう呟いたものの結局誰も教えてあげることはなかったという……。



End

※※※

愛しの黒鳥様のサイト一周年&一万打祝いに書かせていただきました。

シング、ベリル、ルークの、ほのぼのなお話と言うことでリクエストをいただきまして、その時に間に挟まれて困惑するルークの姿と「うぜえッ!」と言いながら頭をかきむしるルークの姿が浮かびまして…こうなりました。

私の中でシングとベリルって兄弟(姉弟か?)みたいなのでこんなのしか浮かばなかったのですが…。

黒鳥様、いかがですかね?
こんな駄作でよろしければ、お受け取りくださいませ!

…タイトルからもうすでに終わってる気がしてなりませんが…。
もう少しまともなタイトルは浮かばなかったのか、自分…。

リクエスト、ありがとうございました♪

そして一周年&一万打本当におめでとうございます!

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