共に背負うもの





旅の途中、ハルルの町に立ち寄ったユーリたち。
町について少ししてから仲間の1人の姿が見えないことに気付いたユーリは姿を消した少年を捜していた。

捜し人を捜し始めて数十分…、ハルルの木の上にいるのに気付いて、ユーリは声をかけた。



「ルーク。
こんなところにいたのか。」
「……!ユーリ…。」
「エステルとリタがお前のこと、捜してたぞ。」
「エステルとリタが?」
「エステルはお前と話がしたくたたまらないんだとよ。
異世界の…お前の世界の話を聞きたいってな。
リタに関しては異世界の住人のお前のことを調べたくて仕方ないみたいだぜ。
あの2人に捕まったら徹夜は覚悟しておかねぇとな?」
「げっ…!
それは勘弁してほしいぜ…。」
「……ふっ。」
「…ユーリ…、今…鼻で笑っただろ?」



木から飛び降りたルークは、ユーリが鼻で笑ったことに気付き、眉間にシワを寄せながらユーリを見た。



「別にお前のことをバカにして笑ったわけじゃないぜ?」
「じゃあ…何で笑ったんだよ?」
「お前と会った頃は、こうして話が出来るなんて思ってもいなかったな、と思ったらな。」
「そうだよな…。
俺が貴族の人間だって知った時、貴族の俺なんかと話したくないとか言われたもんな。」



ユーリの言葉にルークは苦笑した。
ローレライにより、自分が生きられる唯一の世界…テルカ・リュミレースへと飛ばされたルークはユーリと出会った。
最初は異世界から来たことを信じてもらえなかったが、何だかんだ言いながらユーリはあれこれと世話を焼いてくれた。

だが、ルークが貴族の人間だと知った途端…ユーリは突然、ルークと距離を取るようになった。



「あの時は…すごく傷ついたんだからな。
ユーリは俺のことを嫌いになったんだって思ったら…すごく悲しくて、寂しかった。」
「それは悪かったとは思ってる。
あれから…お前のことを見ているうちに“貴族だから”なんて言う理由でソイツ個人のことを見ていなかったんだって気付かされた。」



ルークの頭をくしゃりと撫でながら、ユーリは過去を思い返した。
ルークにとって他人を守るために自分の身を犠牲にすることなど、当たり前。
自分が傷を負うことに躊躇いはない。

他人が傷つくことには敏感なのに、自分のことは二の次、三の次となってしまうどこか危ういこの少年のことを放っておけないという自分の気持ちを偽ることも出来なくなった。



「ユーリ、俺さ…空がこんなにキレイなものだって知らなかった。
…元の世界で…死ぬんだって知って…、初めて空がキレイだって思った。
悲しくて、悔しいくらいにキレイで…1人隠れて泣いたこともあった。
それだけじゃない。
見慣れたもの全てが全然違って見えた。」
「…ルーク、お前が元の世界で何を抱えてきたのかは知らねぇけどな。
…だがな、独りで抱え込むのだけは許さねぇからな。」



空を見上げながら、ぽつりと呟いたルークの言葉。
その言葉には何故か強い重みを感じて、ユーリはいたたまれなくなった。
そして何よりユーリはルークに独りじゃないんだと伝えたかった。
ルークもユーリの言葉に困ったように笑ったあと、頷いた。
そして空を見上げたまま、口を開いた。



「ユーリ。」
「なんだ?」
「ユーリは今、俺に独りで抱え込むなって言ってくれたよな。」
「…あぁ。」
「その言葉、すっごく嬉しかった。
だからユーリ。
俺もユーリに言わせてくれ。
ユーリも絶対に独りで抱え込まないでくれ。
ユーリの苦しみは俺の苦しみだからな。」
「………っ!?
……全く…、本当にお前には敵わねぇよ…。」
「俺が何も気付いてないと思ったら大間違いだぜ。
ユーリが…覚悟を決めて自分の手を汚すことを選んだなら…、俺もユーリが背負うものを一緒に背負うんだ。」
「……ありがとな。」
「ユーリ!俺は本気で言ってるんだからな!!!」



まっすぐ見据えながら言ったルークの言葉にユーリは顔を背け、照れ隠しに言葉を返したが、ルークはバカにしているものだと感じたらしく憤慨していた。
ユーリは法で悪を裁けないならと、ほぼ無抵抗の人間を殺した。
そのことに後悔はない。

そして、自分のしたことをユーリは仲間には打ち明けていない。

…にも関わらず、目の前の少年は知っていた。
知った上で…一緒に背負うと迷わず言ったのだ。

その言葉に強い歓喜を覚えた。
迷いなく一緒に背負うと言ってくれたことが、受け入れてくれたことが、嬉しかった。

もちろん他の仲間も自分のしたことを知っても受け入れてくれるだろうとは思える。
そんな仲間に出会えたのも幸せなことだとは思うが、何も言わなくても気付いてくれたということがユーリにとってとても有り難くて嬉しいことだった。

ルークは本当に不思議な少年だ。
自分の命を他人のために簡単に賭けてしまう。
…まるで罪滅ぼしをするかのように。
それが、とても危うくて…ユーリもそして他の仲間たちも目を離せない。
ユーリも無茶をする方だが、正直…ルークのする無茶は明らかに自分を含めた他の人間と比べても度がすぎる。

ユーリも他の仲間たちも深くは聞かないが、ルークがとても重いものを背負っていることには気付いている。

気付いているが、何も聞かない。
無理矢理聞くつもりもないし、聞こうが聞くまいが、ルークはユーリたちにとってなくてはならない存在と化している。



「ルーク。」
「ん?」
「俺は…俺たちはお前と一緒にいる。共に在る。
それだけは忘れるなよ。」
「……ありがとう。
俺なんかのためにそんな言葉をかけてくれるなんて、本当にユーリってお人好しだよな。」
「……そんなことねぇよ。」



ルークは同情でそう言ってるものだと思っているようだがそれは大きな間違いだ。
ユーリ自身がルークのそばを離れたくないのだ。
それを伝えたとしてもルークはいつも“俺なんか”という言葉を返す。

ルークは気付いていない。
ユーリにとってルークは“なんか”という言葉で括ることなんてとっくに出来ない大きな存在になっていることを。



「すぐにそれに気付かせてやるから覚悟しておけよ、ルーク。」
「なにが?」
「…自分で考えな。」



思わず声に出していたようで、ユーリの言葉にルークはきょとんとしながら首を傾げた。

ユーリはそんなルークの頭を再びくしゃりと撫でたあと、「宿に帰るぞ。」と言うと踵を返した。

教えろよ、ユーリ!と騒ぐルークの手を握りながら。


…余談だが、宿に帰ったあとエステルとリタに捕まったルークはユーリの言葉通り徹夜するはめになった。


End

※※※

亜実様からユリルク会話文でというリクエストを賜りまして…ユリルクで、一番好きなルークinTOV 設定で書かせていただきました。

最近、私の一番好きなCPがユリルクなので、書いてて楽しかったです♪

亜実様…このような駄文でよろしければお持ち帰りください。

そしていつもありがとうございます♪

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