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いつからだろう?
こんなに気になる存在が出来たのは…。
変わりたいと、頑張ろうと、必死に努力する背中を見ていた僕は手助けがしたい、支えになりたい、と柄にもないことを考えていた。
そんな自分がいることに驚きはしたが、嫌いだとは思わなかった。
僕は気付いてる。
頑張ろうと努力するあまり、自分で自分を追い詰めてる“アイツ”の苦しみ。
“頑張らなきゃ”と気を負いすぎて精神的に自分を追い詰めている“アイツ”のこと。
そして、そんな“アイツ”を支えてやりたいと思う自分に。
誰かのために何かをしたいなんて、考える日がくるなんて思ってもいなかった…―――。
***
僕はアイツが…、ルークがある街に滞在していることを知り、すぐにその街に向かった。
あの目立つ髪色のおかげで特に苦労することもなく、シンクは捜し人を見つけることができた。
「こんなところにいたんだ。」
「シンク!?
どうしてここに!?」
「用があるからに決まってるでしょ。
それくらい言わなくても察してよね!」
「あ、ごめん…。」
自分の目の前に現れたシンクにひどく驚いた様子のルークにシンクは憎まれ口を返した。
(…また謝ってる。
ハァ…僕は別に謝ってほしくて言ったわけじゃないのに…。)
謝罪の言葉を述べるルークにシンクは人知れずため息をついた。
ついつい憎まれ口を返してしまうだけで、シンクは謝罪の言葉が欲しくて言っているわけではない。
こういう性分なのだが、ルークにそれを弁解するほど素直な性格でもない。
(仕方ないな…。)
シンクが怒っているのだと勘違いでもしてるのか、ルークは悲しそうに顔を歪め、俯いてしまった。
“そんな顔をさせに会いに来たわけじゃない。”
そう思ったシンクは気付いたらルークの手を掴み、その手を引きながらいきなり駆け出した。
いきなり手を掴まれ、引かれたルークは驚いた表情を浮かべながら俯いていた顔をあげた。
自分の手を引くシンクの顔は見えなかったが、ルークは抵抗することもなく、黙ってシンクについていくことにした。
―――いつもそう。
シンクはいきなり現れ、食事を一緒に食べるように誘ったり、強くなるために鍛練に付き合ってくれたり。
シンクが何を思って自分にそんなことをするのかは分からないが、ルークは嫌ではなかった。
『バカじゃないの?』なんてしょっちゅう言われるのに腹も立たないのだから不思議だ。
(なあ、シンク…。
お前は俺のことをどう思ってる?
なんでいつもいきなり現れて、いろんなことをしてくれるんだ?)
心の中にずっと沸き上がる疑問。
しかし、ルークはそれを声に出して問うことが出来なかった。
(聞きたい…けど、それを聞いて…シンクに呆れられたり、嫌われるのが怖い…。)
そんな思いに支配されて、声に出して伝えることが出来ずにいた。
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