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「アクゼリュスの何千、何万もの民が一瞬で亡くなってしまいましたわ。」
「あなたは兄に騙されていたのよ。」
「どちらにせよ、ルークには我々に相談してほしかったですね。」
彼らの話を聞いていて、自分の中に強い怒りと苛立ちが募っていくのを止められなくなるのを感じた。
仲間であるはずのジェイドたちに責められ、ルークは体をカタカタと震わせている。
それを知ってか、知らずかルークの同行者たちはルークを責め続けた。
「ルーク…、あまり幻滅させないでくれ…。」
「イオン様!
こんな最低な奴、放っておいていきましょう!」
ルークに呆れ果てたような視線や、軽蔑しきったような視線を向ける彼らに僕は我慢の限界を迎えた。
「触らないでください。
虫酸が走ります。」
「イオン…様…?」
自分の手を掴んだアニスの手を払いのけ、イオンはいつもとは違う低い声で拒絶した。
戸惑いの表情を浮かべる同行者たちをイオンは軽蔑しきったまなざしを向けながら口を開いた。
「ジェイド、相談してほしかったなどとよくそんな矛盾したことが言えますね?
自分のことは棚にあげて、ルークを責めるなんて…ずいぶん貴方は偉いんですね?」
「…自分のことは棚にあげて?
何が言いたいのか私にはわかりかねますが?」
「それでは愚かな貴方にも分かるように教えてさしあげましょう。
相談しろ、とルークには言いましたが、あなたは何ですか?
あなたはルークがレプリカであることを早い段階から気付いていましたね?
ルークが知りたがっていたにも関わらず、あなたはルークに何1つ教えようとはしなかった。
誰がそんなあなたに相談なんてしますか?
それでも、するべきだったと思い上がったことを言える立場だと言うのであれば…思い上がるのも大概にしてください。」
「…それは…。」
「ですが、イオン様!
今回のことは問題が大きすぎます!
…仲間である私達に一言くらい、相談するべきだったと思います!
私達に相談しなかった結果がこれです!
彼は兄に騙され…たくさんの人を殺してしまった…!
これは許されることではありません!」
「……ッ!」
言葉をつまらせるジェイドに隣に立っていたティアが割って入ってきた。
事が事だけに、相談をするのは当たり前だと。
ルークのしたことは決して許されることではないと。
その言葉にルークは体をびくりと震わせ、俯いた。
そんなルークを尻目にイオンは深いため息をついた。
「…思い上がりも大概にしてください。
事が事だけに?
相談は相手を信頼していればこそ、できることです。
ティアはルークに信頼されていたとでも言うつもりですか?
だとしたら、あなたの目は節穴ですね。
ルークが1番に信頼を寄せていたのは、ヴァンです。
最も信頼を寄せる相手の言葉なら信じるのは当たり前のことです。
ルークを見下すことしかない人達とヴァン…。
どちらを信じるべきか考えるまでもないと思いますが?」
「ですから、それでも私達に相談をするべきだったと…、」
「黙りなさい。
信頼してない人に相談をしろなどと…そんな無茶苦茶なことをまだ言うつもりですか?
それとも…僕をバカにしてるんですか?
それ以前に公爵家に不法侵入をし、公爵子息を誘拐した者が言えることですか?」
「…それとこれとは…!」
「もう結構です。
話をするだけ無駄のようです。
それに…あまりうるさいとダアト式譜術をお見舞いしますよ?」
「―――…ッ!」
イオンの言葉にティアは顔を青ざめさせ、それ以上の言葉を発することが出来なくなった。
「イオン…、あの…レプリカって…?」
同行者たちに責められ、すっかり沈み込んでしまったルークは恐る恐るイオンに気になっていたことを問いかけた。
ヴァンも言っていた。
“レプリカルーク”
という言葉が気になっているのだろう。
ルークはイオンを見つめ、返ってくる言葉を待っていた。
そんなルークにイオンはルークの顔をしっかり見据えながら口を開いた。
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