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「どうした…?
言いたいことがあるなら、教えてくれないか?」
「……、ガイが怖くないって言っても…俺は怖い。
…怖くて怖くてたまらなくなる。」
「ルーク…?」
ガイは自分の腕の中にいる存在が何かに怯えていることに気づき、その名を呼んだ。
しかし、ルークはガイの胸に顔を押し付けたまま、ただ体を震わせていた。
「ルーク、教えてほしい。
どうしても言いたくないというなら無理強いはしたくないが…、俺はお前の心に耳を傾けていたい。」
「…ガイが…。」
「ん?」
相変わらず表情は見えないが、ルークはぽつりと言葉を発した。
ガイはルークの背中を優しく叩きながら、その声に耳を傾けていた。
「おれは…ガイが痛い思いするのが怖い…。
痛いのは…怖いことだから…、怖いのは嫌なんだ…。」
「…ルーク…、……お前は本当に…。」
ルークの言葉を聞いたガイはルークの頭をそっと撫でた。
ルークは痛いのは、怖いと言った。
そんなルークが自分よりも他人が痛い思いをするのが怖いと言った。
今のルークには“優しさ”のスピルーンは存在していない。
ただ、ルークは他人が傷つくのが怖いと言っただけ。
それを聞いたガイはルークの“優しさ”のように感じた。
ルークの中に存在していないはずなのに、それを感じてしまうのは勝手な自分の思い込みなのかもしれない。
自分がそう思い込みたいだけなのかもしれない。
でも、ガイはそれがルークの優しさだと信じることにした。
思えばルークは昔から誰かが苦しんでいるところを放っておけるほど器用な奴ではなかった。
誰かが苦しんでいたら不器用ながらも、心配していた。
貴族だとか、使用人だとか、そんな分け方をせず、差別をして接するということがなかった。
不器用なばっかりに、その優しさが霞んでしまっていただけで、ルークは本当に優しい奴だ。
そして、そんな不器用な優しさに自分達は気付けなかった。
少なくとも、自分は他のメンバーよりもルークのことを知っていたのに。
あの時は“いつものわがまま”だと決めつけて接していた。
あの時…、自分がルークのことを理解して真剣に向き合って接していたらルークのスピルーンがバラバラになるという事態は避けられたのかもしれない。
そんな後悔は常に自分に付き纏って離れないが…、だけど今はこう思う。
後悔をするのは、未来で同じ失敗をしないため。
だから、ガイは同じ後悔をしないためにルークの心に、声に耳を傾けていられるようにそばにいたいと。
それは、シングとヒスイ、そしてルークが教えてくれたことだから…。
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