3
少しして、目を覚ましたシングとルーク。
ルークの体力も少し回復したのもあって、一行は動き出すための準備を始めた。
「…あの…、…ごめん…アッシュ…。
おれ…寝ちゃって…。」
「………ああ。」
少しバツが悪そうな表情を浮かべながら謝罪の言葉を発したルーク。
アッシュはちらりとシングとヒスイに視線を向けた。
「…ご、ごめん!ヒスイ!
おれ…いつの間にか寝てたみたいで…。」
「よだれを垂らしながら寝てたからな。
俺の服をよだれで汚す気か?とは思ったがな。」
「!!
よだれ!?
ウソ!?
ご、ごめん!!」
「ウソだ。」
「なッ!?
ヒスイのバカ!!
もう知らないからな!」
「悪かった。」
「知らない!」
「悪かったって言ってるだろ?」
「知らない!」
漫才のようないちゃつきぶりを見せるシングとヒスイを見ていたアッシュはいつか、自分もルークとあんな風に接し合える日が来たらいい、と思えた。
「アッシュ……。」
「なんだ。」
悲しげな声が聞こえてきて、そちらに視線を戻したアッシュは今にも泣きそうな表情を浮かべるルークを見た。
泣きそうなルークの顔にアッシュはルークの頭に手を載せるとわしゃわしゃと撫で回した。
「アッシュ…?」
「…眠りたかったら…眠ればいい。
肩くらいなら…貸してやれる。」
「…でも……。
いや…じゃない?」
「嫌だったらこんなことを言わねぇよ。」
「…本当…に?」
「…嘘はついてねェ。」
「……そっか。
へへっ、ありがとう!
アッシュ、すごく嬉しい。」
ルークの笑顔を見たアッシュは、自分では気付いていないだろうが、優しい微笑みを浮かべてルークを見つめていた。
シングとヒスイと出会ったユリアシティでは、感情というものを全く感じさせなかったルークが、今こうして自分に笑いかけてくれている。
ただ、それだけのことに喜びを感じたアッシュは再びルークの頭を撫で回し、その後…そっと手を握った。
最初はきょとんとした表情を浮かべていたルークも、少ししてアッシュの手を握り返した。
まさか握り返してくるとは思っていなかったアッシュは驚いたような表情を浮かべながらルークの顔を見た。
そこには嬉しそうに笑うルークがいた。
その顔を見た時に思った。
ルークの笑顔を自分が守ってやりたいと。
アッシュはそう思えるようになった自分に内心は驚きつつも、今の自分は嫌いじゃないと思えた。
END
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