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手首を掴み、そっと引き寄せたアッシュはルークを強く抱きしめていた。


ルークはそれを嫌がることもせず、ただされるがままだった。



まるで…本当の人形のようだと感じずにはいられなかった。



以前のルークなら
「なにすんだよ!」
と言いながらアッシュを突き飛ばしていただろう。




あの時は…あんなにもわかりやすかったというのに…、今はルークの心が掴めない。



そうさせたのは、仲間たちや自分だ。




「…レプリカ…。


お前も…闇の中で苦しんでいたのか?

闇の中で…もがき苦しんでいたのか…?」
「……………。」





問いかけてはみるものの、ルークから答えが返ってくることはなかった。


それでもアッシュは強く…強く抱きしめた。






強く抱きしめても、ルークは苦しいとも、恥ずかしいとも、何も言わない。



人形のようだと思ったが人形とは違うものがある。




ルークには温もりがある。
感情がなくても、“人”の温もりがある。




今はルークが人形などではなく、生きている人間なのだと言える要素は体温だけだが、いつかルークにスピルーンが戻った時…、ルークもかけがえのない“命”なのだと感じていくことになるだろう。




その時に感じた自分の感情をルークにぶつければいい。


アッシュはルークを強く抱きしめながら、そう思った。





――ルークも自分も生きている。

互いに温もりがある。


今はそれだけでいいのではないかとアッシュは自分に言い聞かせた。










いつか…、自分の思いを受け止めてくれると信じて…。



「レプリカ、わからないだろうが聞け。

俺は…お前の全てを認めたわけじゃない。


俺もお前も、お互いを知らなさすぎた。
俺自身、自分勝手な感情をお前に押し付けていただけだったのかもしれん。


…だが、…お前のスピルーンとやらを集めていった時…、俺の中の“何か”が変わると感じている。



その時…、お前の想いを俺に聞かせろ。
俺は…俺なりに考えて、お前と接していきたい。」






もっとも、決して素直だと言える性格ではない自分が他のメンバーがいる目の前で自分の思いを素直に口に出来るか分からないが…、それもルークのスピルーンを集めていくうちに自分の想いを口に出来るようにはなるだろうと思えた。
否…出来るように努力していかなければならない。



―――…そう強く思った。




「…アッシュ…、なにが言いたいのか…わからない…。


何が変わるのか…わからない…。


…わからない…。

……………………。」






わからない、と言ってまたぼんやりとするルークにアッシュは存在を確かめるように抱きしめた。



こんな…何も分からないままでいいはずがない。


今は何も分からなくてもいい。
ただ、アッシュが言った、その言葉の意味をスピルーンが戻るにつれて理解してくれればそれでいい。




「…レプリカ…、俺は…お前のことを何も知らないまま、憎み…嫌っていた。

…お前の心に触れた時…、俺も1つ1つ、自分の中に渦巻く想いにケリをつけていくつもりだ。」
「………………。」












いつか、…いつかでいい。


ルークがアッシュを受け入れてくれるまでアッシュはルークのそばにいて“ルーク”を知るために共に在ろうと心に決めた。








その思いに比例するようにアッシュはしばらくルークを強く抱きしめたままだった。


END

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