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「シングが1番好きなのは誰なんだろう?」








事の始まりは何気ないコハクのそんな一言からだった。




「うーん…。今のシングには“愛情”のスピルーンがないから、それまではハッキリしないんじゃない?」




コハクの疑問にベリルは腕を組み、考えるような仕草をしながらそう返した。
ベリルの言葉を聞いたイネスは余裕な笑みを浮かべながら口を開いた。


「もし、シングに“愛情”のスピルーンが戻ってたらきっと私を1番だと思っているわよ?

前に
『イネスって母さんみたい』
って言いながら私にギュッと抱き着いてきたもの。」
「なにぃ!?

シングがイネスに抱き着いただと!?
シングの1番は俺なのに…どういうことだ!?」
「いつからシングにとってお兄ちゃんが1番になったの!?

私はシングとよく手を繋ぐもん!!
私に決まってるよ!」
「ちょっと待った!!

シングはボクといると、いつも笑ってるんだよ?
嬉しそうに笑うあの表情はどう考えてもボクのことを1番だと思ってるよ!」
「それは最近、シングに喜びのスピルーンが戻ったからだろ!

勘違いも甚だしいぞ、ベリル!!」
「なにおー!?

ヒスイなんかいつもシングを優先して治癒術をかけてるじゃないかっ!
あんなの差別以外の何ものでもないねっ!
あんなセコい手を使わなくてもボクはシングに好かれてるんだからねっ!
それにシングはこの前、ユーライオで体調を崩した時に部屋代を払ってくれたお礼にって筆や絵の具をプレゼントしてくれたんだから、ボクが1番で決定だよっ!」
「俺がシングに治癒術をかけるのは、俺にとってシングが1番だからだ!

それの何が悪い!?
ああすればシングの中で俺の株は上昇するからな!

…あ…。」
「…へえ〜?

スピルーンの欠けたシングはいつ大怪我をするか分からないから、回復をしないと大変なことになるからじゃなかったんだ?」
「私もそう聞いていたわね?

私達にはシングのスピルーンが完全に元に戻るまで、グミでその場を凌いでいってくれ、って言っていたのに…。

なるほど。
株を上昇させるためだったのね?」
「ボクなんか、何回戦闘不能になったか分からないのに…ボクは株を上昇させるための犠牲になったんだー?」
「あ、いや…。

今のはついポロッと…。」
「本音だもんね?

本音ってのは、ついポロッと出るもんだもんね?」
「いいわよね?

私達が必死に戦ってる中、ヒスイはグングンと株を上昇させていくんだもの。」
「そ、そんな怖い顔で近付くなよ…。」
「そんな顔にさせたのは誰なのかな?

ボクたちは悪くないよねぇ?」




ついポロッと出てしまった本音に女性陣は怒りのオーラを漂わせ、笑顔を張り付けながらヒスイの元にじりじりと近付いていった。




ヒスイは冷や汗を流しながら後退りをしていた。





「なに…してるの、みんな?」

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