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「―――…セネル!!」






セネルを捜し回っていたワルターはその背中を見つけると、自分でも驚くほど大きな声をあげてセネルを呼んでいた。




「…ワルター…?

なんで…?」



自分に声をかけてきたワルターにセネルはずいぶんと驚いた様子で立ち止まり、ワルターを見つめていた。




「…お前も…同じだったんだな…。」
「…え?」
「……お前も…、自分の存在意義を手放したくなかっただけだった。」
「……!!!」




ワルターの言葉にセネルは大きく目を見開いた。

そんなセネルにワルターはそっとセネルの手を握り、その目を見据えながら口を開いた。




「守りたい、という意志が強いからこそ、お前も俺も必死だった。


…お前は…メルネスやその姉に会うまで…ずっと孤独だったんだな。」
「…お、おれは…別に…」
「すまなかった。」
「…っ!!」




真剣に向き合ってくるワルターにセネルはただ戸惑うばかりで目を合わせることが出来ずにいた。

そんなセネルにワルターはただ一言…謝罪の言葉を口にした。




「……本当は心のどこかで分かっていた。


お前にとって仲間やメルネスを守るということは、自分が存在している証のように感じているものだと。

だが、俺は安っぽいプライドでそれを認めることが出来なかった。

…メルネスに言われるまで気づかなかった俺は…本当に器が小さい男だった。」
「そんなことないだろ!

…だって、ワルターはシャーリィを守るために子供の頃から必死に努力してきたんだ!

…それを…俺が奪ったんだ…。怒るのは当たり前のことだろ…?」
「…セネル、俺は…お前を“陸の民”としてではなく、“セネル”という個人として接していきたいと思っている。

今更…こんなことを言われても迷惑なだけかもしれないが…。」
「そんなこと…ない…。

俺も…、ワルターを“水の民”としてじゃなく…“ワルター”という奴のことを知りたいって思ってる…。」
「…お前がメルネスを説得に来た時…、死にかけていた俺を助けるようにあのシャボン玉女と眼鏡に頼んだのも…お前なんだろう?

…おかげで俺はこうしてお前と分かり合いたいと思えるようになった。


……ありがとう、セネル。」
「ワルター…!」





ワルターの言葉にセネルは一粒の涙を流した。





シャーリィを説得しに蜃気楼の宮殿に行き、ワルターと戦闘した後…、セネルは事切れそうになっているワルターを助けてほしいと、ウィルとノーマに必死に頼んでいた。

その先に待つ戦いのことを考えても、体力を温存しておかなければならない状況を知りながらセネルは助けてほしいと頼んだ。



体力を使わせた分、自分がカバーするからと…そう言い治癒術をかけてもらったのだ。




だが、その時に意識がなかったワルターが気づいていたとは知らず、セネルはただ驚いた。






セネルも心のどこかでワルターと分かり合える時がくることを信じていたからこそ、ワルターをあの時に死なせたくないと強く思ったのだ。



だが、それは所詮夢だと諦めかけていたセネルにワルターは歩み寄ってくれた。



セネルはそれが嬉しくてたまらなかった。





「ワルター…。

俺の方こそありがとう。」
「…何故、お前が礼を言う?」
「…さあな?」
「……とぼけるつもりか?

ならば、力ずくで聞き出すぞ?」
「聞き出せるものなら聞き出してみろよ。」
「…言ったな…。

あとで後悔するなよ!」








拳を交えながら自然と笑みが零れるセネルとワルター。





(…俺に歩み寄ってくれてありがとう、ワルター。

俺はお前のことも絶対に守ってみせるから。)





(…セネル。

俺はお前に出会えてこうして話が出来ることがたまらなく嬉しい。


俺は今、ここで誓おう。

お前のことは俺が何がなんでも守ってみせると。)










2人が互いに新たな決意を胸に秘めた瞬間だった…。


END

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