幸せなひと時




「おれもやるーっ!」




とある街にある広場で小さな子供の声が響き渡っていた。
そして子供の近くにいる2人…、タケシとヒカリは困ったようにため息をついた。




「だから、サトシには無理なのよ。」
「むりじゃないっ!できるもんっ!おれもやるっ!」
「いや…でも、サトシは人間だから…無理だ」
「だって!ママがいったもん!がんばればできないことはないのよっていってたもん!」
「…どうしたらいいのかしら…?」



いくら言っても聞かないサトシにタケシもヒカリも再び深いため息をついた。






「サトシ、どんなに頑張っても人間には無理なんだよ。」
「やーっ!
おれも、アクアジェットするのーっ!」
「ハァ…。」




サトシが駄々をこねる理由…、それはブイゼルのアクアジェットを見て、自分もあれをやりたいと言い出したことから始まった。

小さなサトシからしたらブイゼルのアクアジェットはとてもカッコイイものに見えたのだろう。
瞳をキラキラと輝かせながら「すごい」と何度も言っていた。


タケシもヒカリも最初は微笑ましげにサトシを見ていた。



そう、サトシがアクアジェットを自分も覚えたい、と言うまでは。



サトシは人間。
ブイゼルはポケモン。

人間であるサトシにポケモンの技が使えるはずがない。
それを小さなサトシにも分かるように説明するも、サトシは理解できていないのか、出来ると信じているのか、それを素直に聞き入れようとはしなかった。



どうしたものか、と思案していると、ピカチュウたちがサトシの元に駆け寄るとそっとその頭を撫でた。

直接撫でられないハヤシガメやムクホークはサトシの近くに行くと体を擦り寄せた。



「あははっ!

くすぐったいよー!」
「ムクホーッ!」
「なぁに?」
「ムクホッ」
「のるの?」




擦り寄られ、撫でられたサトシは楽しそうに笑った。

そんな中、ムクホークはサトシに背中を向けて鳴き声をあげた。
キョトンとしていたサトシだが、何となくサトシはムクホークが何を言いたいのか察したようで、促されるまま、ムクホークの背中に乗った。


それを確認したムクホークはサトシを気にしつつ、空を飛んだ。




「わあ…っ!
すごいすごーい!
タケチやヒカリより、たかーい♪」




低空飛行ではあるものの、空を飛んでいるような気分にでもなっているのか、サトシは嬉しそうに満面の笑みを浮かべながらはしゃいでいた。




今のサトシは先ほどまでアクアジェットを覚えたいと騒いでいたことなどすっかり忘れているようで、ムクホークと楽しそうに笑いあっていた。




「ムクホークの機転に救われたな…。」
「あんなにはしゃいじゃって…。
本当に子供なんだから。」
「今のサトシはどう見ても子供だと思うけど…。」
「あ、そっか!


ふふふ。何か微笑ましい光景ね…。



あっ!そういえばタケシ!!
ママさんにサトシがポケモンと遊んでいるところを撮ってって頼まれてたわよね?
今がチャンスじゃない?」
「あ!そうだった!」




ヒカリの言葉にハッとした表情を浮かべたタケシは慌ててハナコから送られてきたカメラを手にすると、それをサトシの方に向けて撮影を始めた。

空を飛ぶムクホークと、それを必死に追いかけて撮影するタケシたち。

そのあともポケモンと戯れるサトシを撮影する、という何ともほのぼのとしたその光景はサトシがはしゃぎ疲れて眠りこけるまで続いた。



END

※※※


凍矢さま、大変お待たせしました!
ちびっこサトシを、というリクエストでしたので思いつく妄想のままに書いてみましたが…、いかがでしたでしょうか?


子供って、こちらが想像をつかないようなことを言うよなぁ、なんて考えたらこんな話になりました。


拙い話ですが、お受け取りくださいませ。

リクエスト、ありがとうございました♪

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