夢に願う
ずっと窓から見ていたシゲルと“友達”になって2週間。シゲルは毎日のように家に来てくれている。
シゲルは俺に色んな話をしてくれた。マサラに越してくる前のこと、シゲルのパパとママのこと。
俺が知らないポケモンの話も沢山してくれる。伝説のポケモンの話、今までシゲルが出会ったポケモンの話。
シゲルの手持ちポケモンも見せてくれた。みんな、シゲルを慕っている。シゲルの事が、大好きなんだって伝わってきた。
俺にもピカチュウっていう大切な親友がいる。ピカチュウがいれば、それでいい。そう自分に言い聞かせる。
いつかは俺だってポケモントレーナーになりたい、だけど今は無理なんだ。バトルをすることが俺の夢。
今は叶わない夢だけど、いつかは叶えてみせる。だから今はピカチュウだけがいればいい、なんて。
無駄に強がってしまう自分に笑えてくる。本当は俺だって沢山のポケモンの仲間が欲しいのに。
そう言ったら、きっとシゲルも兄ちゃんもグリーンさんも困ってしまうから口にはしない。誰も困らせたくなんかなかった。
でも、シゲルには我儘を言いたくなってしまう。シゲルの困った顔を見たい、心配をかけたい。こんな感情、初めてだった。
それがシゲルにとって迷惑なことだってわかってる。誰かを困らせるなんて、俺はしてはいけないこと。
頭ではわかっているのに、今日も俺はシゲルを困らせる。
「なー、いいだろー」
「ダメだよ、サトシ熱があるじゃないか」
「熱なんてすぐ治るって」
「安全第一、安静第一、寝なさい」
「シゲルのケチ!」
「ケチって君ね…」
シゲルのブラッキーと俺のピカチュウでポケモンバトルがしたい、無理だってわかっている俺の我儘。
そんな俺の我儘をシゲルは受け流す術を2週間の間で身につけている辺り流石だなと思う。
ただ残念なのが、その表情が苦痛に満ちているということ。見ていて痛い、多分シゲルの心も痛い。
わかってるんだ、シゲルだって俺がやりたいことを叶えさせてあげたいと思ってるんだろ?
そして今の俺には実現することが難しいことばかりを言っている。これから先も、無理かもしれないけど。
「…じゃぁシゲルが明日も来てくれるならバトルは諦める」
「おや?そんなに僕に会いたいんだ、サートシ君は」
シゲルは知らない、俺がこうやって我儘を言ってシゲルを傍にいさせようとしていることを。
会うたびに、シゲルの温もりが心地良く感じてしまう。兄ちゃん達とは違う、温もり。
「……会いたい、明日も明後日も」
「…サトシ、」
「だから、明日も明後日も俺に会いに来てくれよ、シゲル」
こんなこと口にしてしまうのはきっと熱のせいだ。だって、身体中が熱く感じる。
シゲルも顔が赤くなっている理由はわからないけど。シゲルも、熱があるのか?
あぁ、さっき飲んだ薬のせいか眠くなってきた。視界もだんだんぼやけてくる。
「シゲル…眠い、」
「え、あ、あぁ。うん、寝た方がいいよ、サトシ」
そう言ってシゲルは俺をベッドに寝かせる。シゲルの顔は、まだ赤いまま。
照れてるのか、何なのか。よくわからないまま、俺は目を閉じると夢の世界の住人が、すぐに迎えに来た。
「凄い殺し文句だね、全く…」
だからシゲルが呟いた言葉なんて、知らない。きっと目が覚めた時、自分が言ったことも覚えてない。
“友達”のために、毎日会いに来てくれて、我儘をぶつけさせてくれて。申し訳ない気持ちと、そんな存在が出来たことが嬉しくて仕方ない。
夢から覚めたら、いつもありがとう、って言えたらいいな。多分言えないだろうけど。
ならばせめて夢の中で言いたい。
どうか今から見る夢に、シゲルが出てきますように。素直に、ありがとうと言えますように。
夢の中でなら、きっと言える。それがいつか正夢になればいい。そう願いながら、俺は夢の世界へ。
おやすみ、また明日。
明日ももしかしたらシゲルを困らせてしまうかもしれないけど、許してくれよな。
俺にとってシゲルは、誰よりも素直でいれる存在になってしまったんだから。
END
※※※
卯月さまから相互記念にいただきました♪
サトシー!!
可愛い…!そして切ない…!
抱きしめたい…!
私がポケモンになってサトシの仲間になるよ!
そしてイチャイチャするサトシとシゲルを見てニヨニヨしてるよ!
むふー!
(*^ω^*)
これでいつでも読み返すことができるー♪
うーちゃん!!
素敵なお話ありがとうございます!
これからも隠れながらストーキングしつつ、応援してますVvv
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