―6―
「チャー…!
ピカピ…、ピカピ…!」
サトシがピカチュウを必死に捜している頃、ピカチュウは森に住む虫ポケモンたちに襲われていた。
必死に逃げるものの、その数は増えるばかりでピカチュウは疲弊していった。
「ピカピ…、ピカピ!」
疲弊したピカチュウはただ、自分の主人の名前を呼び続けた。
虫ポケモンたちを退けるために技を使いすぎたピカチュウはもう技を出す力も残っていなかった。
「ピカ…!」
「…スピー!」
「……!」
疲れきっていたピカチュウはよろめいて転んでしまった。
そしてその隙をついたスピアーがピカチュウに向かって襲い掛かった。
それに気付いたピカチュウはギュッと目を閉じた。
「―――…ピカチュウ!!」
衝撃に備えて目を閉じたピカチュウは自分を呼ぶ声を聞いた。
それと同時に温もりに包まれて、ピカチュウは恐る恐る目を開けた。
「…ピカチュウ、…大丈夫か?」
「ピカピ…。」
目を開けたピカチュウはずっと捜していたサトシが目の前にいることに気付き、サトシの胸に縋り付いた。
しかし、サトシと再会できたことを喜んでいる暇はなかった。
ピカチュウを襲ってきたスピアーがまたこちらに向かってきていた。
「とにかく逃げよう!」
「ピカ…!」
サトシの言葉に頷いたピカチュウはサトシの腕から飛び降りて走ろうとした。
だが、サトシはピカチュウをギュッと抱きしめたままスピアーから逃げるために駆け出した。
「ピカピ?」
「ピカチュウ、疲れてるんだろ?
さっき、スピアーが襲い掛かってきた時に技を使わなかったってことは、もう技を出すほどの力が残ってないんじゃないか?」
「ピ…、ピカ…。」
「だったら、俺が走ればいい。」
そう言うとサトシは走る速度をあげた。
疲れきっていたピカチュウはサトシに体を預け、そのまま目を閉じた。
***
「…っ、何とか…スピアーを撒いたけど…、早く森を抜けないと…。」
疲れきって死んだように眠るピカチュウを抱えながらサトシは大きな木の根元に座り込んだ。
早く森を抜けてタケシとヒカリと合流しなければならないのに、スピアーを撒くために必死に逃げることに夢中になりすぎてサトシは今、自分が森のどの辺りにいるのかが全く分からなくなってしまっていた。
「いっ…!」
更に、ピカチュウには隠していたがスピアーからピカチュウを庇った際にその攻撃を背中に受けていて、痛みに顔を歪めた。
「ピカチュウ…、ごめん。
俺が…、この森に入らなければピカチュウがこんなに疲れることもなかったのに…。」
未だに眠り続けるピカチュウにサトシは申し訳なさそうに眉尻をさげ、謝罪した。
「でも、必ず森を抜けてみせるから。
だからもう少し我慢してくれよな?」
そう言うとサトシは再び立ち上がり、歩みを進めた。
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