―5―
「ハァ…。」
ポケモンセンターの外で駆け回って遊ぶ2匹のピカチュウを見つめながらサトシは深いため息をついた。
サトシは仲間たちに知られたくなかった。
レッドが自分の兄だという事実を。
それをついに知られてしまったサトシはため息をつかずにはいられなかった。
レッドが嫌いだからではない。
むしろ、サトシはレッドのことを兄として、トレーナーとして尊敬している。
ヒカリが言うように同じポケモントレーナーとしてレッドに憧れている。
ただ…、サトシの中にはそれと同時にある複雑な思いが渦巻いて離れずにいる。
「ピカピ?」
「ピーカ?」
サトシがため息ばかりついているのに気付いた2匹のピカチュウはサトシの元に駆け寄り、不思議そうにその顔を見つめた。
「ごめん、ピカチュウ、ピカ。
心配させるつもりはなかったんだけど…。
おれは…兄ちゃんの…」
「見つけたわよ!
ジャリボーイ!」
心配そうにサトシを見上げるピカチュウにサトシは2匹のピカチュウの頭を優しく撫でながら、ぽつりと本音をこぼそうとした。
しかし、それは別の人物の声に遮られた。
サトシとピカチュウはその聞き覚えがありすぎる声に警戒心を露に声のした方を睨んだ。
「あれ?
ピカチュウが2匹いるぞ?
どっちがジャリボーイのピカチュウだ?」
「そんなのどっちでもいいわよ!
両方捕まえちゃえばいいのよ!」
「ムサシの言う通りだニャー!
ジャリボーイしかいない今がチャンスだニャ!」
そう、サトシの声を遮ったのは毎度毎度、ピカチュウを狙って現れるロケット団だった。
サトシとピカチュウの予想を裏切ることなく、ハブネーク型の機械に乗り込み、こちらを見るロケット団。
他のポケモンたちは体力回復のためにジョーイに預けてしまっていて、2匹のピカチュウを守るためにサトシは自分の身をかけなければならない。
サトシは身を挺することに戸惑いはなかった。
強い意志を瞳に宿しながらサトシはピカチュウとレッドのピカを庇うように自分の背後に下がらせた後、口を開いた。
「またお前たちか!
ピカチュウもピカもロケット団に渡すもんか!」
「ピカ?
だれよ、それ?」
「もう1匹のピカチュウのことじゃニャーか?」
「大人しく渡した方が身のためだぜ?
この、ハブネークくん3号はピカチュウの電撃対策はバッチリだからな!」
「いやだ!
ピカチュウも…それに兄ちゃんの大切な相棒のピカも俺が守る!」
「言っても分からないなら体で教えてやるまでだニャ!」
「行け!
ハブネークくん3号!」
一歩も譲ろうとしないサトシに痺れをきらしたロケット団はサトシに向かってきた。
「ピカチュウ!ピカ!
逃げろっ!」
「ピカピ!!」
「ピカー!!」
「うあぁあぁあッ!」
ピカチュウとピカを逃がすためにサトシは2匹を怪我のない程度に突き飛ばした。
その次の瞬間、ハブネークくん3号と呼ばれる機械が放ったどくばり攻撃をくらったサトシは地に倒れた。
「ピ、ピカ!?」
「ピカピーーーッ!」
2匹のピカチュウの悲鳴が辺りに響き渡った…。
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