―5―
「ピカピ…?」
ぼんやりとした意識の中、ゆっくりと目を開いたサトシは自分を呼ぶ声に視線をそちらに向けた。
「ピカチ…ウ…?」
「ピカピ…。
ピカピ…!ピカピッ!!
ピカピ……っ!!!」
視線の先にはあの不思議な空間の中で自分を呼び続けてくれていたピカチュウがいた。
ずっと泣いていたのか、ピカチュウの目は泣き腫らしたような跡が残っていた。
安心させようと言葉を発したサトシは掠れた声でピカチュウを呼んだ。
その声にピカチュウはサトシの名を何度も呼び、サトシの首に抱き着きながら泣き続けた。
「ピ…チュウ…。
心配…かけ…ごめ…。」
「ピカ…。
ピカピカ…ピッ、ピカ…ピカピ…ッピー…。」
鉛のように重い体は思うように動かせず、サトシは掠れた声でピカチュウに謝罪した。
きっとピカチュウは自分のせいで大怪我を負ったのだとずっと自分を責め続けていたに違いないから。
だから安心させたくて、ピカチュウに向かってサトシは優しく微笑んだ。
「ピカ…チャー…。」
「ピカチュウが…俺を…呼び続けてくれた…から…戻って…こられた…。
ピカチュウの声…届いてたぜ…?
…ありがとう…。」
「ピカピー…!!」
「だから…もう…泣くなって…。」
「ピーカ!ピカピ、ピカ…チャー…ピッカ…ピー…。」
何を言っても泣き続けるピカチュウにサトシは力無く苦笑した。
ピカチュウが声を届けてくれたから、だから自分は戻ってこられた。
ピカチュウの声が道標となってくれたのだから。
だからピカチュウに対して感謝の気持ちはあれど、ピカチュウが自分を責める理由などどこにもないのだと、サトシはようやく動かせるようになった手でピカチュウの頭を優しく撫でながらそう言い続けた。
サトシは知らない。
病室の外で意識が戻ったことを喜び、涙するタケシやヒカリ、ロケット団やポケモンたちの存在を。
「ピカチュウ…、いい加減泣きやめって…。」
「ピカピ…。
ピカピ…ピカピ…。」
(…俺がみんなの元に帰るための最初の道標になってくれてありがとう。
――ホウオウ。)
泣きじゃくるピカチュウの頭を優しく撫でながらサトシは自分が現実世界へ戻れるよう、導いてくれたもう一つの存在に心の中で強く感謝した。
END
※※※
これ、短編か?
というツッコミが入りそうな勢いですが、短編だと言い張ります!
サトシがみんなに愛されてるってのと、ホウオウとのやり取りが書きたかっただけだったり。
ここまで、読んでいただいてありがとうございました☆
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