―3―
「サトシ…!サトシー!!」
「…ピカピ…!!」
サトシを見つけたあと、タケシたちはサトシをすぐに病院に運び込んだ。
傷だらけで、意識のないサトシはぐったりとした状態で倒れていた。
病院に着くまでの間、何度呼びかけてもサトシは身動き一つ取らなかった。
サトシが生きていると感じられる要素は微弱な呼吸と心臓が鼓動を刻む音だけだった。
医師と共に治療室へと消えたサトシ。
治療が終わるのを待つまでの間、ヒカリは考えたくないのに頭に浮かぶのは悪いことばかりで、それに耐え切れず口を開いた。
「サトシ…、大丈夫かな…?
死んじゃったり…しないよね…?」
「ヒカリ!
バカなこと言うな!」
「だってだって…!!
あんなにヒドイ怪我をしてたんだよ!?」
「ポチャー…。」
「…それでも…信じるしかないんだ。
サトシなら…目を覚ますって信じるしかないんだ。」
「……うん…。」
ヒカリはただ、誰かに“大丈夫”だと言ってほしかった。
だが、そんなに簡単に“大丈夫”だと言えるような状況ではない。
自分たちに出来るのは、サトシが目を覚ますと信じて待つことだけ。
タケシに言われ、現実を目の当たりにしてしまったヒカリは溢れて止まらない涙を拭いながらタケシと治療中のサトシを無事を切に願った。
また、笑顔を見せて笑ってくれると信じて待つしか出来ず、時間だけが過ぎていった…。
***
「治療は終わりました。
ただ…いつ目を覚ますかは…分かりません。」
治療を終え、病室へと移されたサトシ。
体中に包帯を巻かれ、点滴に繋がれるサトシを悲しげな表情で見つめながらタケシたちは医師の言葉を聞き、絶望した。
「いつ目を覚ますかわからないって…どういうことですか?
サトシは…サトシは目を覚まさないかもしれないってことですか!?」
「…その可能性もあります。」
「そんな…ッ!!」
医師から告げられた残酷な言葉にヒカリは言葉を失い、力無く膝をついた。
「…ぴかぴ…。
ピカピ…ピカピ…。
ピカピ!
ピカピ…ピカピ!!」
「ピカチュウ…。」
医師の言葉をサトシが横たわるベッドの枕元にいて聞いていたピカチュウはサトシの頬を叩きながら名前を呼んだ。
何度も、
…何度も呼んだ。
しかし、いくら呼んでも目を覚ます気配のないサトシにピカチュウは大粒の涙をぽろぽろと零し、ベッドを濡らした。
「ピカピーーー…!」
「…ピカチュウ…。」
タケシたちもピカチュウとサトシをただ悲しげに見つめるしか出来なかった。
「まさか…こんなことになるなんて…」
「ジャリボーイはポケモンのことしか考えてないから…こんなことになるんだ…。」
「…ニャーたちはこんなことを望んでたわけじゃないニャー…。」
病室の外で医師の話を聞いていたロケット団たちも深刻な状況に重いため息をついた。
「ピカピ…、ピカピ…。」
悲しげなピカチュウの声が病室に響いては消えていった…。
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