新しい道
「よーし!みんな!!
ジム戦に備えて、特訓するぞ!」
「ピカ!」
「ヤコ!」
「ケロォ!」
「チャブ!」
「みんなー!がんばってー!」
「デネー!」
今日も元気に旅を続けるサトシたち。
お昼時になったため、いつものようにシトロンが昼食の準備をし、セレナは食後のデザート作り、ユリーカはデデンネと共にサトシの特訓を楽しそうに見つめていた。
「…相変わらずサトシは夢に向かって頑張ってますね。」
「うん…、そうだね…。」
「…?
セレナ?どうかしました?」
昼食を作りつつも、サトシたちを微笑ましそうに見つめながらシトロンが呟くが、セレナはどこか元気のない様子で言葉を返した。
その反応に気付いたシトロンが、セレナの方を見ながら気遣わし気に声をかけた。
「私には…何もないなって思って…。」
「何もない?何がですか?」
「…将来の夢。
サトシたちと旅がしたいって、それだけの理由で旅をしてるけど…、私には何の目標もないから…。
だから、サトシみたいに夢を叶える為の努力だって出来ない。
夢がないんだもの、当たり前よね。」
「セレナ…、そんなに焦って将来の夢を探す必要はないと思いますよ?」
「…だって、私…サトシたちと旅をしてもうずいぶん経つのに、仲間だってゲット出来てない。
将来の夢もない。
…私って何なのかな…?
旅をする理由あるのかな…?
旅を続けてて本当に目標は決まるのかな…?
…ごめんね、なんか目標に向かって直向きなサトシを見てたら、そんな風に思っちゃって…。」
シトロンが励ましの言葉をかけてはくれたが、セレナの心には響かなかった。
ただ、サトシたちとの旅が楽しいってだけで一緒にいるが、そんな漠然とした理由で一緒にいていいのかとセレナの心の中に迷いが生じてきていた。
シトロンも何と言葉をかけたらいいのか分からなくなっていた…そんな時だった。
「わあ…っ!!
スゴイ!スゴーイ!!サトシ!スゴーイ!!」
「デネデネー!!」
ユリーカとデデンネの興奮した声が2人の耳に届いた。
その声に視線をサトシたちの方に向けるが、ユリーカとデデンネを興奮させた“何か”は終わったあとだったようで、サトシとピカチュウが何やらポーズを決めて笑いあっていただけで何をそんなに興奮しているのかがシトロンとセレナには分からなかった。
「ユリーカ、どうしたんですか?
そんなに興奮して…。」
「お兄ちゃん!
あのね!サトシとピカチュウがスゴイの!!」
「サトシとピカチュウがスゴイのは今に始まったことではないでしょう?」
「そうよ、ユリーカ。
何をそんなに興奮してるの?」
「だって!本当にスゴかったの!
キレイだったの!!
ビューンってなって、グルグル〜ってなって、パァンってなったの!
ねっ!デデンネ!!」
「ネネー!!」
かなり興奮した様子のユリーカとデデンネ。
だが、何を言っているのか全く理解出来ないシトロンとセレナは首を捻ることしか出来なかった。
「サトシ、ユリーカとデデンネは何を見てこんなに興奮してるんですか?」
「ん?
ちょっとしたパフォーマンスだけど?」
「パフォーマンス?」
「言葉よりも見せて!
ねえ!サトシ!!もう一回見せて!!」
「見せる?」
サトシの言葉もユリーカの言葉も、どっちを聞いてもやっぱり分からないシトロンとセレナはまた首を捻った。
だが、サトシはユリーカからリクエストされ、「分かった。」と了承の言葉を発した後、セレナたちから少し離れた。
「行くぞ、ピカチュウ。」
「ぴっか!」
サトシに声をかけられ、いつもの定位置の肩から地面に降り立ったピカチュウ。
その様子からバトルでも見せるつもりなのだろうと考えていたシトロンとセレナ。
だが、それは違っていた。
そして図らずもセレナの悩みは解消されることになるのだが、まだそれに気付く者は誰もいなかった。
そしてそれをこっそり覗いてる人物がいることにサトシたちは気付いていなかった。
「ピカチュウ!
連続で空中に“エレキボール”!!」
「ぴか!」
「“エレキボール”に向かってカウンターシールド!!」
「ピカピカピカピッカー!!」
サトシの指示通りに得意の電気技を放つピカチュウ。
だが、いつもとそれは違っていた。
「わあ…っ!」
「す、すごい…!!」
空中に放った“エレキボール”はピカチュウが体を回転させながら放つ“10万ボルト”の流れに沿うように回転していたのだ。
電気のメリーゴーランドといったところか。
同じ技なのに、使い方でこうも変わるものなのかと驚きを隠しきれない様子でシトロンとセレナは魅入っていた。
なるほど。
ユリーカとデデンネが興奮するのも頷ける。
とても幻想的な光景だった。
「ピカチュウ!フィニッシュ行くぞ!」
「ぴか!」
「“10万ボルト”!!」
サトシの声に応え、体を回転させていたピカチュウはその動きを止め、支えとなっていた“10万ボルト”が消えたことで落下してきたエレキボールに寸分の狂いもなく、全ての“エレキボール”に“10万ボルト”を当てた。
そしてそれは黄色い光の雫として辺りに降り注いだ。
「素晴らしい!!!!」
「これは素敵ね!!」
幻想的に始まり、幻想的に終わりを魅せたパフォーマンスにセレナたちが拍手を贈ろうとした時、それよりも先に第三者の声が割って入ってきた。
「…あの?」
「あ、ああ。
すまないね、つい興奮してしまって…!!!」
「ごめんなさいね、急に…。」
そう言いながら近づいて来たのは見知らぬ男性と女性だった。
男性、女性、どちらの手にもカメラが握られていた。
とりあえず話は食事をしながら、ということになり、昼食を取りながら2人の話を聞けばどうやらマスコミ関係者らしく、たまたま通りかかってサトシとピカチュウのパフォーマンスを見て動画と写真を撮らせてもらったと告げた。
「さっきのパフォーマンスは他の地方では有名なものよね?」
「あ、はい。
ポケモンコーディネーターって言います。」
「サトシくんは、ポケモンコーディネーターを目指してるのかい?」
「あ、いえ。
俺はポケモンマスターを目指してるんです。」
さすがはマスコミ関係者。
サトシの話を聞きながらしっかりその内容をメモしている。
もちろん、全て了解を得てからなのでサトシたちも気にしていないが。
セレナたちが聞きたいことも全て彼らが聞いてくれるので、セレナたちは聞き役に徹していた。
「まだカロス地方にはポケモンコーディネーターというものが何なのかを知らない人が多くてね…。
たまたま他の地方へ取材に行った時に見たコーディネーターとポケモンのパフォーマンスに私たちはすっかり魅了されてね。
それでこれから他の地方へポケモンコーディネーターの取材をして、メディアに取り上げてカロス地方の人たちにも知ってもらおうって企画で旅していたところをサトシくんたちに会って本当に驚いたわ…。」
「それでね、サトシくん。
さっきの映像と今、聞いた話をぜひテレビと雑誌に載せたいんだけど…いいかな?」
「ええっ…!?
でも、俺はポケモンコーディネーターじゃないですよ?
それに俺が前に一緒に旅をしていた仲間でポケモンコーディネーターが2人いるので、良かったら紹介しますよ?」
テレビや雑誌で取り上げると知ったサトシは驚きを隠しきれない様子でそう言った。
「本当!?
それは助かるわーっ!!
その2人のコーディネーターさん、紹介して!!
でもね、サトシくんのパフォーマンスも素敵だったのは確かよ!!」
「僕たちも、コーディネーターのパフォーマンスを見せてもらったことがあるけど、全然引けを取らない素晴らしいパフォーマンスだったから、他の人にも見てもらいたいんだ!」
コーディネーターを紹介してもらえるのはもちろんありがたいが、サトシとピカチュウのパフォーマンスもテレビと雑誌に載せたいと一歩も引かない様子で頼み込む2人。
無理です!いや、無理じゃない!絶対無理です!どこがよ!?プロとは全然違います!はあ?あのクオリティでそういうこと言いますか!?
…そんなやり取りが繰り広げられ…結局その30分後にはサトシが折れることになった。
あまりの迫力にサトシは少々ぐったりしている。
「ありがとう!サトシくん!」
「本当にありがとう!」
「い、いえ…。」
「それと、紹介してもらえるコーディネーターさんの名前も聞いていいかな?」
「ハルカとヒカリです。」
「なぬっ!?
僕はハルカさんのパフォーマンスを見てポケモンコーディネーターに夢中になったんだよ!!」
「きゃー!!
私はヒカリさんのパフォーマンスを見てファンになったのよ!!
なんて!奇跡なの!!」
サトシから聞いた2人の名前にまたまた興奮する様子に目を丸くするサトシたち。
そして、サトシがパイプ役になって取材の約束を取り付けることが出来て、取材組はとても嬉しそうにお礼を言い、取材の旅に出て行った。
「さすがはメディア関係者ですね…。
あのエネルギーには圧倒されました…。」
「ねえ、サトシ!!」
最後までポカンとしていたシトロンに対し、セレナは瞳をキラキラさせながら、サトシに迫った。
「ポケモンコーディネーターになるのはどうしたらいいの?」
「え?セレナはポケモンコーディネーターになりたいのか?」
「うん!そう!!
ポケモンの技でいろんな人たちを魅了するなんて本当に素敵!!
私、ポケモンコーディネーターになる!」
あの有名な麦わら帽子の少年のような発言をするセレナは昼食前になかった元気のなさをどこかに捨ててきてしまったようだ。
そしてそのあと、俺よりもポケモンコーディネーターとして活躍してるハルカとヒカリの方がちゃんと教えてくれると思うからと、紹介され…電話越しとはいえ、女の子と旅をしていたことにヤキモチをやきながらも、2人のアドバイスをもらい、ポケモンコーディネーターとしてのデビューに向けてフォッコと特訓するセレナの姿が見られるようになった。
end
※※※
セレナちゃんもコーディネーター目指してくれたら嬉しいなーっていうのと、コーディネーターというものが何なのかを知る機会をサトシくんが与えてくれたらいいなーなんて願望から突発的に書いたものです笑
ルビサファが、出るならコンテストもきっと!!という期待も込めて…!!
というか、本当にセレナちゃん初ゲットもないまま映画公開されちゃったよ!
カロス編はスロースターターすぎる!!
閲覧ありがとうございましたっ!
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