―1―
サトシはいつだってそう。
僕たち、ポケモンのためなら自分の命なんて関係ないと後先考えずに突っ走る。
僕は…ううん。
僕たちはそんなまっすぐなサトシが大好き。
でも…、でも…。
こんなこと…、誰も望んでいなかったんだ。
***
「また、お前たちか!」
それはいつもの平凡な日常から始まった。
いつものように、僕を狙ったロケット団が気球に乗って現れて…、僕はロケット団に捕まってしまった。
しかも、他の仲間たちはポケモンセンターにいて、ここにはサトシとタケシとヒカリの3人だけ。
僕はみるみるサトシたちから離れていってしまう。
いつもなら誰かが助けてくれるのに。
そんな甘い考えなんか抱いていたから、サトシがあんな目にあってしまったんだ。
「ピカチュウを返せ!
ロケット団ッ!」
「返せと言われて返すバカがどこにいるってのよ。」
「お前たちのポケモンは今、ポケモンセンターの中。
俺達はその隙を狙わせてもらったぜ!」
「ピカチュウはボスにプレゼントするから安心するニャー」
「「「今日はなんだかとってもいい感じー♪」」」
嬉しそうに笑うロケット団。
ニャースが操作するマジックハンドに捕われたままのピカチュウ。
ピカチュウは耳を垂れさげうなだれていた。
だから、誰も気づかなかった。
サトシが崖から勢いをつけて気球に向かって飛んだことを。
恐らくサトシもその先が崖だということに気付いていなかったのだろう。
ただ、ピカチュウのことしか見ていなかったのだろう。
必死にピカチュウに向かって伸ばされた手は…届くことなく、サトシの体は重力に逆らうことなく崖下へと転落してしまった。
「ぴ…ぴかぴ……ピカピーーーーーッ!」
「サトシ…!」
「サトシーーーーッ!」
ピカチュウやサトシの後を追いかけていたタケシとヒカリの悲痛な叫び声が木霊した…。
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