君が好き
ヤブクロンや園児たちに見送られ、サトシたちは次の街を目指して旅立った。
「だいたい、何で説得にいったはずのサトシがヤブクロン戦隊に仲間入りしてるのよ?
ホントにサトシって子供ねー。」
「なんか、楽しくなってきちゃってさ…。」
「さすがの僕もあんな渋すぎるテイストは何度も味わいたくないな…。」
「ごめんって…。」
新たに卵をもらい、歩みを進める中、アイリスとデントは幼稚園でのサトシの様子に改めて呆れたような声をあげた。
「そういえばサトシは子供の頃に戦隊ごっこをしてたのかい?」
「ああ!
シゲルと一緒にな。」
「「シゲル…?」」
アイリスにサトシは本当に子供すぎるのよ!と言われ、困ったように笑うサトシに助け船を出そうと、デントは幼稚園でサトシが戦隊ごっこをしていた話を持ち出した。
予想通りデントの問いかけに反応を返してきたサトシ。
しかし、サトシの口から出たのは聞いたことのない名前。
アイリスとデントは首を傾げた。
「俺の幼馴染みだよ。
旅に出た頃はシゲルに張り合って、よく突っかかってたんだ。」
「そのシゲルって人もポケモンマスターを目指してるの?」
懐かしそうに目を細めたサトシにアイリスは少し興味を引かれ、そう問いかけた。
「今は研究者になるために頑張ってるよ。
道は違うけど、シゲルとは互いを高め合える関係なんだ。」
「へぇ〜…。
少し会ってみたいかも。」
「そうだな!」
楽しそうに話すサトシとアイリス。
デントはそれをぼんやりと見つめていた。
何故だろう?
自分の知らないサトシやサトシの周りにいる人の話を聞いて、モヤモヤした気持ちに襲われた。
こんな気持ちは初めてでデントは戸惑うばかりだった。
「デント?
どうしたんだよ?」
ずっと沈黙していたことを不思議に思ったらしいサトシとアイリスが不思議そうに覗き込んできた。
「なんでもないよ。」
「そうか?」
「何でもないって言う割には、すごくぼんやりしてたわよ?」
何回か呼んでも気づかなかったじゃない、とアイリスに言われ、デントは苦笑した。
「大丈夫。
今日の昼は何を作ろうか考えてただけだから。」
「それならいいんだけど…。」
「デントの作るものって何を食べても美味いよな!」
にかっと笑うサトシにデントは知らず知らずのうちに笑みを浮かべていた。
最初はただ、サトシが今までに出会ったことのないトレーナーだから少し興味を引かれただけだった。
でも、サトシのことを知れば知るほど、自分の心はサトシで満たされていく。
自分が今まで知らなかった感情はサトシといればいるほど強くなる。
本当はこの気持ちの正体に気付いてる。
だけど、今は蓋をしている。
サトシと過ごす時間を失いたくはないから。
だから、僕はこれからもこの気持ちに蓋をし続ける。
いつものようにサトシとアイリスと笑って旅を続ける。
失いたくはないから。
でも、自分の知らない話をされるたびに心は締め付けられるばかり。
「デント、今日のメニューはなんだ?
おれ、デントが作ってくれる料理、いつも楽しみにしてるんだぜ?」
心は締め付けられるように痛い。
だけど、君がまっすぐ僕を見つめて笑ってくれるから。
だから、僕は救われる。
――――サトシ、僕は君が好きだよ。
デントは心中でそう呟きながらサトシと笑いあった。
END
※※※
サトシが好きだけど、気持ちを隠してそばにいることを選んだデントの話でした。
関係が壊れるのが嫌だから、デントは気持ちを隠してそばにいるという私の妄想がつまった話。
ああ…、今度は誰か、タケシかヒカリかハルカあたりを直接会わせる話を書いてみたい…!
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