まだ見ぬライバル
「サトシ…?」
それは本当に偶然だった。
とある小さな港町へとやってきたサトシたち。
いつものようにポケモンセンターに向かい、休もうと歩みを進めていると、サトシを呼ぶ声がして、思わず足を止めて声のした方を見た。
そこにいたのは、少し前まで共に旅をしていた仲間…、ヒカリがいた。
「ヒカリ!?」
「やっぱりサトシだったのね!
こんなところで会えるなんて本当に偶然!」
「ピーカ!!」
嬉しそうに駆け寄ってきたヒカリにサトシも嬉しそうに笑った。
そしてサトシとヒカリは当たり前のようにハイタッチをした。
「ポッチャマは一緒じゃないのか?」
「ポッチャマなら、トゲキッスと一緒に…、あ!いたいた!
ポッチャマー!トゲキッスー!
こっちこっちー!」
いつも一緒にいるはずのポッチャマの姿が見当たらないことに気づいたサトシはその所在を問いかけた。
トゲキッスと一緒にいるといい、その姿を探していたヒカリは少し離れたところにいるポッチャマたちに手を振ってこっちに来るように言った。
「ピーカ!!」
「ポチャ!?」
どうかしたのかとヒカリの元に向かってみれば、そこにいたのは懐かしい顔。
サトシとピカチュウがいた。
「ポーチャー!!」
「ピッカー♪」
ピカチュウを見つけて慌てて駆け寄って飛び付いたポッチャマにピカチュウも嬉しそうに抱きついた。
「あ、あの…?
サトシ…?」
「あ!ごめん、アイリス!デント!!」
見慣れない少女と楽しそうに会話を交わすサトシに呆気にとられていたデントとアイリス。
戸惑い気味にサトシに声をかければサトシは慌てて謝罪の言葉を口にした。
***
「はじめまして!
私の名前はヒカリ。
サトシとは最近までシンオウ地方を一緒に旅してたの。
この子は相棒のポッチャマ。」
「ポチャマー!」
「私はアイリス!今、サトシと一緒に旅してるの。」
「僕はデント。
ポケモンソムリエさ。」
落ち着ける場所…、ポケモンセンターへと移動したサトシたちは食事を取りながら自己紹介をしあった。
「ポケモンソムリエ?」
「そう。
豊富な知識と経験を元にポケモンとトレーナーの相性を診断したり、もっと仲良くなれる方法をアドバイスする。
それがポケモンソムリエさ。」
「へぇ〜…。
イッシュ地方にはそんな役職もあるのね…。」
「ヒカリもサトシと同じようにポケモンマスターを目指してるの?」
「私はポケモンコーディネーターよ。
トップコーディネーターになるのが夢なの!!」
「ポケモンコーディネーター?」
「そう!」
「そういえばヒカリはどうしてイッシュ地方に?
コンテストはいいのか?」
「ママが懸賞でイッシュ地方1週間の旅を当てたの。
でも、仕事で行けなくなっちゃって…、それで私が代わりに来たの。
私も気持ちを切り替えるきっかけを作るためにちょうどいいと思ったから。」
「そうだったのか…。」
「それにしても、サトシはもう次の旅に出てたのね。」
「じっとしてるのは性に合わないからな!!」
「ピーカ。」
楽しそうに笑い合うサトシとヒカリ。
サトシとヒカリの間から自分達の知らないものを感じたデントとアイリスは少し寂しさを感じた。
「ミージュ!!ミジュ!!」
「きゃっ!」
そんな中、サトシとヒカリの間に割って入ってきたのはミジュマル。
突然割って入ってきたミジュマルにヒカリは思わず声をあげてミジュマルを見つめた。
「あ!こら、ミジュマル!!また勝手にモンスターボールから出たな!」
「ミージュ!!ミジュマー!!」
「ポカ、カブー!!」
「あ!ポカブまで!」
ミジュマルに続くようにポカブまで割って入ってきて、更に2匹そろってサトシに抱っこをせがみ、それに気付いたサトシは2匹を抱き上げた。
「サトシ、その子たち、新しい仲間?」
「ああ!ミジュマルとポカブだ。」
「ミジュッ!!」
「カブカブ!!」
サトシに抱き上げられ、嬉しそうに笑うミジュマルとポカブ。
サトシにすり寄るミジュマルとポカブを見たヒカリはクスリと笑った。
「ポカーッ!」
「ミージュッ!!」
「わかった、わかった!
ごめん、ヒカリ。
ポカブとミジュマルが外に行きたがってるみたいだから外に遊びに行ってくるよ。」
「わかったわ。
私はデントとアイリスと一緒にいるから大丈夫!!」
「デント、アイリス。
ヒカリのこと頼んだぜ!
わかった!わかったから!
引っ張るなって!!」
抱き上げられ幸せそうにしていたかと思えばいきなりサトシを外に連れ出そうとミジュマルとポカブはサトシを引っ張りだし、サトシは慌ててその場を後にした。
「相変わらずみたいね、サトシは…。」
「相変わらず?」
「サトシって、いつもポケモンのためなら簡単にその身を投げ出して無茶をするでしょ?
私も初めて会った時からそうだったから最初は驚いたけど、いつもまっすぐにポケモンたちに接してるサトシだからポケモンに好かれるのよ。」
もちろん、人にもね。と笑うヒカリ。
アイリスやデントはまだサトシと旅に出たばかり。
自分達の知らないサトシの話を聞かされて、デントは心中でため息をついた。
「あのポカブもミジュマルもそんなサトシだから、この短時間で心を許してるのね。
ポカブとミジュマルは私にサトシを取られたくなくて外に遊びに行こうって誘ったみたいだけど…、サトシはそれに全く気付いてないわね…。」
「短時間って、なんで分かるの?」
「だって、私とサトシとタケシの3人で旅をしてたのはつい最近よ。
あ、タケシって言うのは一緒に旅をしてた仲間なんだけど、私達はそれぞれの夢を叶えるために別れたの。
あのあと、サトシのことだからすぐに旅に出たんだろうけど…、それでもまだ1ヶ月も経ってないから。
でもね、私はサトシと一緒に旅をしたからいろんなことを知ることが出来た。
だから、今の私がいるの。
サトシに感謝しなきゃね。」
「ねえねえ!
ポケモンコーディネーターってどんなことするの!?」
「口で説明するより見てもらった方が分かりやすいと思うわ。」
「見たい!!ね?デント!!」
「え?
あ、ああ。
うん、そうだね。」
「それなら私たちも外にいきましょう。」
「うんっ!」
「デント、ちょっと耳を貸して?」
「いいけど…?」
うきうきとしながら外に向かったアイリス。
ゆっくりと立ち上がったデントに近付いたヒカリはこっそり耳打ちした。
「…!」
「だから、安心してね。
あ、でもライバルは他にいるから気を付けた方がいいわよ?
サトシはポケモンにも人にも好かれるから。」
そう言うとヒカリはアイリスを追って駆け出して外に行ってしまった。
「…まさか、初めて会った人に気付かれるなんてね…。」
ヒカリに耳打ちされたデントは苦笑せずにはいられなかった。
『私とサトシは親友みたいな関係だからデントが心配してるようなことはないわ。
私もサトシもお互いに恋愛感情はないの。』
こっそりそう耳打ちされ、デントは苦笑しながらも、ホッとした。
(だけど、ライバルは多いみたいだから…気をつけないといけないね…。)
ヒカリからライバルがいるのだと聞かされてホッとした半面、焦ったのも事実だ。
そして焦る気持ちを抑えられないほどまでに自分はサトシのことが好きなのだと改めて実感したデントは顔も名前も知らないライバルに負けないように頑張ろうと強く思った。
END
※※※
またきました。
デンサト。
ヒカリからライバルは多いのだと聞かされて冷静を装うけど、本当は気が気じゃないといいよ。うん。
アニメは妄想を膨らませるのに最適ですね♪
閲覧、ありがとうございました!!
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