“一緒に”
『また負けた!!
お前、弱すぎなんだよ!』
『ポカー…。』
『あれくらい避けろよ!
本当にトロイな、お前!』
バトルで負けたあの日、ボクはマスターに捨てられた。
その理由ははボクが弱いから。
マスターの期待に応えられないから。
だから捨てられたんだ。
弱いボクが全部悪い。
それは分かってる。
だけど、認めてもらえないことがとても悲しかったんだ。
そんなボクの前に現れたのはとっても優しくて笑顔が温かい人だった。
***
「ポカブ!!ひのこ!」
「ポカー!!」
「ミジュマルは、水鉄砲!!」
「ミジュマー!!」
旅を続けるサトシたちは、とある森の中で休息をとっていた。
休息を取ろうとデントは言ったのにサトシは休息どころかポケモンたちと特訓を始めた。
そんなサトシに苦笑するデントとアイリスは休息のためのおやつを準備しながらサトシたちを見守っていた。
「ポカブ、ミジュマル、頑張れ!!」
「ポカー…!」
「ミジューッッ!!」
「ポ、ポカァァー…ッッ!」
互いに技を出すポカブとミジュマル。
しかし、やはり相性ではミジュマルの方が圧倒的に有利で、ポカブはミジュマルの水鉄砲を食らい、飛ばされてしまった。
『何やってんだよ!このバカ!!』
飛ばされ、倒れるポカブの脳裏に前のマスターの言葉がよぎった。
“また負けた”
負けてしまった悲しみと怒られるという恐怖に怯え、震えるポカブはギュッと目を閉じた。
「大丈夫か、ポカブ!?
震えてる…。寒いのか?
ちょっと待ってろよ!」
サトシはすぐにポカブの元に駆け寄った。
ポカブはサトシに怒られるのではないかという恐怖から体を震わせていたが、それを見たサトシはミジュマルの水鉄砲で体が冷えてしまったから震えてるものだと勘違いしたようでリュックの中から慌ててタオルを出し、水に濡れた体を拭き取った。
そのあとは自分の服を脱ぎ、そっとポカブの体を包み込んだ。
「ポ、ポカァ…?」
怒らないサトシにポカブは目を瞬かせて見上げた。
サトシの顔を見れば、眉尻をさげて申し訳なさそうにポカブを見つめていた。
「俺、いつもすぐに熱くなるから、ポカブに無理をさせてたことに気付けなかった。
ごめん、ポカブ。」
謝罪の言葉を発したサトシにポカブはその言葉の意味を理解するのに時間がかかり、呆けてしまった。
「ポカブ…?どうした?」
心配そうに顔を覗き込まれて、ポカブはポロリと涙を流した。
「煤cわわっ!
ご、ごめん!そんなにミジュマルの水鉄砲が痛かったか!?」
「ポカァ…!
カブー、ポカー…!」
あわあわと挙動不審になるサトシにポカブは頭を振り、サトシの胸に顔をうずめて泣いた。
泣き疲れて眠ってしまうまでポカブは泣き続けた。
――――ずっと…、弱い自分が全部いけないんだと思っていた。
だから怒られてばかりで褒めてもらえないんだと思っていた。
だけど、本当はずっとずっと辛くて哀しかった。
精一杯頑張っていたけど、バトルでは負けてばかりで、前のマスターには怒られてばかり。
ポカブはそれが辛くて、苦しくて…悲しかった。
ほんの少しだけでいい。
精一杯頑張ってることを認めてほしかった。
だけど、最後まで認めてもらえず、捨てられ…ノラポケモンになってしまって、心は冷えていくばかりだった。
だけど、サトシは違った。
勝っても負けても誉めてくれる。
気遣ってくれる。
その優しさが嬉しくて嬉しくて、ポカブは涙をこらえられなくなった。
初めて会った時もそして今も変わらず優しいサトシ。
サトシと一緒にいればいるほど、ポカブはサトシのことをどんどん好きになっていった。
「ポカ…?」
泣き疲れて眠ってしまったポカブが目を覚ましたのは真夜中だった。
ぽかんとするポカブはようやくサトシが自分の隣で眠っていることに気付いた。
眠ったあと、モンスターボールにしまえば楽なのに、サトシはあのあともずっとポカブを抱き抱えていたらしい。
そしてそのまま一緒に眠りについたようで、ポカブはサトシの顔をジッと見つめた。
「ポカブ…。」
「…!
ポカ。」
眠っていたと思ったらサトシに名前を呼ばれ、ポカブは返事を返した。
しかし、サトシは寝言を言っていただけのようで、寝息をたてていた。
「…一緒に…強くなろうぜ…。」
「…カブ…。」
寝言なのに、サトシのその言葉はポカブの心に灯を灯した。
“一緒に強くなろう”
その言葉が例え寝言だったとしても嬉しくてたまらなかった。
サトシは口先だけではないから。
いつだってポケモンだからと見下すことなく、同じ目線に立ってくれる。
『強くなれ』と言うのではなく、『強くなろう』と言う。
それが他のトレーナーと違うところだ。
だからこそ、ポカブは強く思った。
『サトシの信頼に応えたい』
『サトシの優しさに応えたい』
『一緒に強くなりたい』
そんな思いで埋めつくされた。
今まで、そんなことを一度として思ったことはなかった。
とにかく強くならないといけないと、ただ必死だった。
必死だった分、前のマスターに捨てられてすごくショックだった。
でも、今はサトシと出会えて良かったと心の底から思える。
(ボク、頑張るよ。
サトシの信頼に応えられるように強くなる。
サトシと一緒なら頑張れる。
ありがとう。
本当にありがとう。
大好きなサトシ。)
END
※※※
はい。
途中まで書いててすっかり忘れてたアホは私です。
サトシって“一緒に強くなろう”ってよく言いますよね。
それってポケモソと同じ目線に立ってるから言える言葉だと思うんです。
優しさに飢えていた分、ポカブにとってサトシはかけがえのない存在だと思います。
あー、こういうのって書くと楽しいですね♪
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