▽Have heart.
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その日が近づいてくる。
近づけば近づくだけ。
息苦しい。

こめかみのあたりが酷く
脈打つように痛くなる。
軽い吐き気も伴い更には
夢見が悪い。

時が過ぎても、それを忘れることなどあり得ないと、自分の中で何かが訴えるように
がんがんと痛むのだから仕方が無い。
問答無用で波のように
押し寄せる痛みに耐える。
広島に修学旅行だなんて誰が決めたんだと
無駄だと分かりつつも抗議したくなる。
どうにかして行かずに済む手立てはないものか。しかし、どこにも休める要素がない。
修学旅行には行くようにとのカミサマからの命令だ。

…あー
あったま痛い。
頭痛い時は梅干し貼るんだっけ?
そんな物この部屋にはなさそうだけど。
どうでもいい事を思い浮かべて、
情けない姿でソファに突っ伏す。
このまま寝てしまおうか考え込んでいると、不意に軽い音がして視界を遮られた。

「諒ちゃん、」

聞き慣れた声が降り注ぎ、
白く細い指先が髪の毛に触れる。

「生きてる?」

「・・・・・・・・・・・・・・・死ぬ。」

僅かに顔だけをソファから持ち上げ見上げ
れば、まんまるに目を見開いた冴子が
覗きこんでいた。
心配したように困った顔。
冴子の手が前髪を掻き上げる。
少し冷たくなった手が心地よい。

「よかった。死ぬ一歩手前で発見できて。」

よしよしと撫でる手がくすぐったい。
しかし、軽く消えてしまいたい気分な所に
この一言はいかがなものか。
流石と言うべきか。
でも、それが冴子さんらしい。
分かってるよ優しさだって。

惨めな身体を無理やり起こし、軽い眩暈と同時に割れるように痛む頭を、横に一・二度ブンブンと振り弱々しく笑う。

「いっそ殺しといて下さい。」

"悪い冗談なら止めて"と目で睨まれる。

ハイ、笑い話になりませんでした、ね。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
オメガ〜の修学旅行前の妄想話。

2011/02/23


 

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