▽心に溶ける青
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時折、何故自分は自分の思いを抑えているのかと考える。
いつも考える訳では無いけれど、むしろ、以前より減ったとは自分でも思うのだが。
それでも、こんな感情が降ってわいた時に、その都度、自分の後ろにある"七瀬"の家のしがらみに辿り着き、歯痒さを思い知るのだ。
隣で一歩前を歩く背中が遠くに感じてしまう。
自分から一歩踏み出す勇気もないくせに、感情に押しつぶされてどうにかなってしまうのでは、と時折息も吸えなくなる。
解決の糸口も見いだせないままそれでもまた、切ないなどと同じ感情に走ってしまう。

過去も今も全て含めて、今の私だとそう思えるようになったのは、諒のおかげだ。
ほんのちょっと手を伸ばせば伝わりそうなその温もりに、両手を広げて飛び込んでいけたら…と、何度と思ってはみたが踏み込めないでいる。

諒の方から吹いてくる生温かい風が、私の頬を掠めて、
ぽろり、と風の代わりに滴が落ちた。
視界が涙で滲み、諒の着ている洋服の青さが霞んで見える。

くしゃりと頭の上に温かみを感じて顔を上げる。
急に泣きだすなんて、こんなつもりはなかったのに。
諒の袖口が私の目頭と拭って、覗き込むような優しい視線にぶつかった。
「また、考え事してるでしょ、ムズカシイ顔してますよ」
そう言って、諒の方から私の手を取って引っ張って歩くように繋いだ。
「またって何よ」
私の精いっぱいの強がり。
なかなか前に進まない私を気にかけてくれたのだろう。
少し力を入れて反対に引っ張ると、ん?と立ち止まって、
「どうかしました?」と、目で聞いてくれる。

私から届かなくても届く距離に来てくれる。

諒は涙の理由は聞かない。

「かえりますよー」

一言、青い空にそう言って足を進めだす。

ずんずん前に歩く握られたままの手をキュっと握り返すと、諒もすぐに握り返してくれて、なんだか大丈夫と言われているような気がした。



2011/1/12 →加筆:2012/1/26


   

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