▽落花流水
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傍にいなくても平気だった。
少なくとも、
つい最近までは。
手を繋ぐだけでも十分だった。

それなのに
ー…抱きしめたままキスをして、

唇と手と体で
全身を侵食していく。
その度に冴子の体が熱を帯びて身じろぐ。
柔らかい感触。
訳も分からず
急に押し倒された冴子の唇から、
「っ諒…!」
と、小さな抵抗の声が紡ぎ出される。
そんな顔で言われても、
欲情を駆り立てるだけなんですって。
「ちょっとだけ。」
訳の分からないお願いをしてみる。
見つめる瞳や、
返ってくる反応が嬉しくて
どんどんエスカレートしてしまう。
微かな吐息で上下する、
白くて柔らかなに胸元に手を伸ばすと
身を退こうとして冴子が息を飲んだ。
ボタンをいくつか開き、開放的になっ胸元に、
そっと唇を押し当て紅い印を落とす。
冴子が一瞬、白い肌を紅く染め目を大きく開く。

勢いを止めようと
背中にぽかぽかと
かわいい音を立てられる。
漏れた吐息の間から
「いきなりすぎる!」
と声がした。
軽く息も上がっていて、
その度に胸元の
白い塊が誘惑してくる。
上から覗き込むと絶景かも…。
「ん〜。」
と気の無い返事をする。
「…そのですね……。」
腕の中から逃れようと
もぞもぞ動く冴子を押さえつけて、
抱きしめたまま、
視線を合わせずに切り出した。
「大丈夫だと思ってたんですけど。」
強張ったまま
柔らかくならない彼女の、
その細い首筋に顔を埋める。
「何がよ?」
ああ、それを聞いちゃいますか。

乱れた髪からのぞく耳を、
そのまま口づけると
冴子が堪えきれない吐息を漏らした。
「耳、ぃ…や…。」
そう言われても、
耳を啄むように口に含み舌で舐め上げると、
涙目で睨むように冴子が耳を手で押さえる。
嫌だって言ったのにと目で訴えている。

「・・・・手が届かないんなら
それはそれで
我慢もできるんですよ。」
続ける言葉に不思議そうな顔。
あなたは天然ですか、
とツッコミを入れたくなる。
言わなくても分かっている癖に。
聞かない振りでしょうか。
はぁ〜…と、
思わず溜め息が漏れる。

「手が届く距離で、
一緒に居るとなると、
我慢できなくなって
…この有り様です。」
そこまで言って、
情けないような困った顔で笑うと
薄暗い部屋の中の冴子を見た。
これ以上弱い耳を
また刺激されないように
耳を押さえたままで、
むくれたように視線を逸らされた。
とがっている唇は無意識なのか違うのか。
無意識ならば、かなりな小悪魔です。

ぷっくりした唇に軽くキスをする。
本当は深く深く口付けてしまいたい。

「してほしい?」
ちょっと意地悪に
試すようにそう言うと、
ピクリと彼女が反応した。
伺うように自分を見上げる、
その、瞳が揺れる。

真っ赤な顔をして
効き目がないことなんて知っていて、
「イラナイ」と小さな声がする。

意地っ張りだ。
「そういうこと、言っちゃいますか。」
どうやら視線も合わせないつもりらしい。
「なら、してくれるまで放さない。」
発言がとても子供っぽいとも自分で思う。
が、手放したくない。
ぎゅっと胸元にしがみ付いたままの手が、
とても否定しているように思えないんです。
「で、何がイラナイの?」
言わなくても分かるの?
なんでですかね。
追い討ちをかけてみる。
「知らない!放して」
動き全部を封じるようにぎゅうっと抱きしめる。
「してくれるまで離しませんって言ったでしょ。」
覗き込むように
逃げた視線を合わせる。
深い口付けをする。
柔らかな甘い唇の感触が、
ゆっくりと伝わってくる。
十分に口付けを堪能した後、
そっと唇を離した。

トロン…とした瞳に、
ゾクリと全身に欲情が駆け巡る。
この顔を見てしまうと、
後で怒られても後悔しません…と思ってしまう。

性格悪いのはどこかのお兄様に負けてないかもしれない。
意地悪でゴメンネ。

2011/01/23


 

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