短編 | ナノ

 
 
 とある休日、私が目覚めた時には既に時計の針は12時を指そうとしていた。いわずもがな正午の、である。完全に寝過ごしてしまったようだ。せっかくの休日なのに何だか勿体ない。

この時間ならグリーンはもうジムの仕事に出発してしまった後であろう。多忙な同居人…彼氏のことを思い浮かべて息を吐き、私はベッドから起き上がる。
寝ている間に汗をかいてしまったようで、キャミソールが少し湿っていた。このまま着ておくのは気持ち悪いからパジャマと一緒に脱いでしまうことにする。どうせ休日で、特に出かける用事もない。着替える服は体を締め付けないゆるいもの。それを身に纏って、脱いだ衣服を洗濯機に突っ込んで、ザパザパ顔を洗った。そんなに量もないし、洗濯機を回すのは夜でいいや。今日の服と一緒に洗おう。そう考えながらタオルで顔を拭い、こちらも洗濯機の中へ放る。とりあえず今は何か食べようかな。


 顔を洗っても未だに眠たい足を引きずりつつキッチンへ。真ん中に置かれた2人掛けのテーブルの上には紙切れが載せられており、グリーンの字で書き置きがあった。なになに、「テーブルの上に朝飯置いとく。昼は適当に何か食え」。なるほどな。テーブルにはグリーンが作ったと思しきオムレツとオニオンスープ、それから白いお皿に載せられたバターロールが並んでいる。


「おお…」

朝からよく働く彼に感嘆の声を上げつつ、早速オニオンスープを電子レンジに突っ込んだ。朝早くに作られたのだろう、スープはすっかり冷えてしまっていた。やはりこういうものは温かいほうがおいしいからね。せっかくだからバターロールもオーブンで温めることにする。オムレツもあるけれど…それはまあ、いいか。レンジにはスープが入っているし。
何となく見遣れば皿の端に転がったグリンピースが見付かって、そのオムレツの中にはグリンピースが入っているのだと知る。いちいち芸の細かい奴だ。


 そうこうしている間にパンとスープが温まった。一人のキッチンに溢れる温かな香り。あまり意識していなかったのだが、そのおいしそうな香りを吸い込むと途端に空腹感が押し寄せてきた。気持ちの良い寝起きのキッチン、彼氏手作りの温かな朝食、なんと素晴しい朝だろう。生憎この時間では既に朝食というよりは昼食だが、そんなのは正直どうでもいいことである。
オーブンとレンジから皿を取り出して、オムレツの隣に並べる。何となく気になったから食器棚から取ったスプーンで皿にぽつんと残されたグリンピースを追いかけてみた。本当に、この上なく素晴しい朝だけどやっぱり、そうだな。どうせならオムレツも温かい時に食べたいかも。

だから今度の休みは早起きして、私が彼に朝食を作ってあげよう、と思う。一緒にテーブルを囲って食事しようと。そう心に決めて手を合わせた。いただきます。


20120322

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