大阪→主→徳島→大阪
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「好きや」
好きや、好きや、好きや。目の前に立つ彼が言った台詞を、私は頭の中で連呼した。 大阪くんは目元を隠すように帽子を引き下げて、頬を染める。いつも自信満々の彼から想像もつかない弱々しさだ。"彼"もこんなギャップに惚れたのだろうか。・・・いや違うか。大阪くんが彼にこんな姿を晒すとは思えない。
「大阪、顔真っ赤」 「っあ、赤ないわボケ!!」
私のからかいの言葉によって、ようやくいつもの調子に戻った大阪くん。これもきっと、"彼"は見たことのない、大阪くんの一面。
「・・・ごめんね」 「っ、」 「大阪くんのこと、嫌いじゃないけど・・・私にとってはライバルだから」
私の言葉に、大阪くんはガバッと顔を上げた。信じられないという顔で私を見つめる。
「・・・あいつのこと、好きなんか」 「うん」
好き。 クールでアツくて、憎まれ口ばっかりで、だけど仲間思いで優しいあの人が。大阪くんのことをを誰よりも好きなあの人が。
「俺もあいつとライバル、か」 「私とあいつも、ライバル」
変なの。 ライバルだらけの三角関係。
「ナマエ」 「ん?」 「俺、諦めるつもりやないで。好きなんや」 「・・・ありがとう。でも、私も大阪くんに負けるつもりはないんだ」
告白してくれた人が恋敵だなんて、何て皮肉な仕打ち。この人が"彼"だったらよかったのに、なんて嫌な考えさえ浮かんで、そんな自分を嫌いになりそう。
これもそれも、全部あいつのせいだ。あいつが大阪くんを好きじゃなかったら、大阪くんにこんなに冷たい感情を持たないで済んだ。こんなにいい人なのに、憎まなくて済んだ。
・・・ああ、だけどあいつにとっては「大阪くん」がそれにあたって、大阪くんにとっては「私」にあたるのか。ぶつ切りできない三角形。ぐるぐるぐるぐる、終点なんてきっとない。
「俺もあいつには負けへん」 「・・・」 「ナマエにそないな顔させたないねん」 「・・・っ」
ああ、私、馬鹿なのかな。大阪くんは私より苦しそうな顔をしていて、だけど無理に笑ってて、私を励まそうとしてくれていた。こんな優しい人、他にいないよ。 なのに。・・・それでもあいつがいいなんて。
「ごめんなさい」
小さく呟く言葉に、彼はまた悲しい顔をした。
20110703
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