小ネタ | ナノ

 
 
 この間機種変更をした携帯はピンク色を選んだ。奴は散々赤を薦めておいて、いざピンクを買ったらそれが一番似合うだなんてよく分からないことを言い出して、最終的に何故か負けた気分になるのはいつものことだ。要するに奴の中では自分が何色を似合うと言ったかなんて大した問題ではなくて、自分が似合うと言った色を私が持つことが重要なのである。なんて分かりにくい独占欲。子供みたいなことをしてくれる。
さて、そして今日が5月の4日だ。パソコンでデコメは受け取れないと知りながら、馬鹿を気取って花のマークのデコ絵文字を付けてパソコンアドレス宛に送ってやったメール。文面はたったの一言、「おめでとう」。どうせ奴は私の些細な嫌がらせも気にすることなく、むしろ意図にすら気付いて、その上でただメールが来たという結果に満足するのだろうよ。表示できずにバツマークに変わってしまったそれを眺めて、しかしその意図を私に尋ねたりはしないのだ。私はうまく踊らされている気分になって、だから返信なんて待っていませんよとばかりにすぐに眠ってしまう。しかしそれから間を置かずに震えだした携帯のバイブ音に飛び起きたりもするから結局のところは負けている。
悔しい思いで開いたメール本文には、アナタだけに見せちゃう!秘密のサプリメントが云々というどう考えてもクリックを狙った迷惑メールの文面が並んでいて奴のせいではないと知りつつも軽い怒りが沸いてしまった。削除する気力もなくてメール画面を閉じ、ため息をつく。時刻は0時7分。朝起きないうちから疲れてしまった。
もう寝ようと携帯を閉じかければ再びバイブ。今度は一体何なんだとボタンを押せば、そこには見慣れた名前が表示されて一言。「さっきのメール、最後まで読んでみて」。震える指で操作してみれば、そこに表示されていた文字列は。

「…」

私は黙って携帯を閉じ、ぽそりと呟く。「臨也のくそやろうめ」。ただひとつ言えることは、手のひらで踊るのも悪くはないかなって話。


20120504 臨也誕


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

戻る