私のクラスの教室からは屋上がよく見える。だから私は授業中のよそ見常習犯だ。屋上にはフェンスがかかっているけれど、たまに人影が見えるし、その更に上には綺麗な空が見えるし。退屈な授業より、ずっと魅力的だ。
今日はよく晴れていたから、いつものように見上げて。文字通り、雲ひとつない青空が広がっているのを眺めた。
「あ、」
そして、青い空のまんなかに白い煙を見た。ゆらゆら揺れる白煙を。
「・・・あいつだ」
私はそう小さく呟くなり、屋上へ向けて走り出す。あいつは多分間違いなく、そこにいる。
――――――――――
屋上へ繋がる階段を駆け上がると、弾む息を整えながら屋上への出口を見た。 普段、屋上の扉には南京錠と普通の鍵がついていたが、今はどちらめ外れている。私は迷わずそのドアノブに手をかけた。 ドアはガチャ、と素直に開く。
「ごーくでらー」 「?!」
振り返った彼は、屋上のドアが開いたのに気付いていなかったらしい。ぱっ、と振り返ったその手には吸いかけの煙草。
「また吸ってる」 「・・・わりぃかよ」 「肺にはね」
近寄って、今にも灰の落ちそうなそれを取り上げる。こんなケムリを吸っておいしいだなんて、獄寺も大人の人たちも変な感覚だ。
「教室から煙、見えたよ」 「・・・げ、マジかよ」 「だから怒られる前に教えてあげようと思って」
煙草を屋上に落として、踏み潰しながら言う。それまで怒らなかった獄寺は、少し眉を上げながらも勿体ない煙草を黙殺した。
「煙草なんて、どこがいいんだか」 「・・・さあな」
なんだそれ。いいとこもないのに吸ってるのか。ますます、わからない。変な感覚だ。
「変なの」 「かもな」
そして、触れるようなキスをした。
触れた唇は煙草の味がして、・・・うん、やっぱり煙草のよさはわからない。
紫煙とキスしようか
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