昼休み終了まで、あと2分。自分の席の椅子に掛けて、机に置いた片手で自分の髪に触れた。そのまま一束つまんでみれば見慣れた髪質がゆれる。ええと、最後に切ったのはいつだっけ。最近切りに行っていないから大分伸びている。正確な時間は思い出せなくて、はあーと息をついた。
「髪切りたーい」 「・・・切ってあげようか?」
と、会話をつなげたのは呟きを聞いていたユウキくん。次の時間の教科書を机の端に置き、ファッション雑誌を広げながらこちらを見て笑う。彼とは席が隣同士なのだ。 それにしても、授業前なのに教科書じゃなくて雑誌を広げてるなんて。余裕なのかどうなのか、とにかくそんなのはユウキくんくらいのものだろう。開いているのはお財布のページか。なんだか高そうなものばっかりだ。
でも、ほんとに髪の毛切れるのかな?確か、美容師さんになるのってすごい大変なんだよね? あれ、じゃあ今のは冗談?切ってあげようか、ザンギリ頭でよければ的な?だけど何となくだけどユウキくんってそういう冗談は言わなさそうなんだよね。
「・・・切れるの?」 「自慢じゃないけど、俺いつもセルフカットだよ。たまに頼まれてゴールド先輩とかもカットさせてもらってるし」 「え、すごい!」
ゴールド先輩って、髪にすごい気合い入れてるのに。ユウキくんもすごくお洒落なのに。あれって自分で切ってるんだ・・・!尊敬。疑ってごめんなさい。
「ありがと。・・・でもまあ、ナマエは女の子だし、美容室行った方がいいと思うけどね」 「あはは!」 「セットくらいならいつでもやってあげるよ」
言いながら、私の前髪を軽くよけてピンを挿す。前髪がなくなってクリアになった視界の中で、彼が笑うのを眺めた。
「楽しみにしとくね」
授業の始まるチャイムの音。 そうだな、じゃあまた放課後にでもやってもらおうか。
放課後美容室
20110924 短編から移動 20110409 執筆
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