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 体育の時間。
もうすぐ体育祭だから、とその時間はフォークダンスの練習になっていて。

高校生にもなってフォークダンスなんて、と不満げな生徒と好きな人と踊る!と意気込む生徒が入り混じった輪の中、私は前者と同じ気持ちで立っていた。いや、正確には前者と後者のどちらも、か。

たしかに好きな人はこの輪の中にいる。踊りたいという気持ちもある。だけど、踊りたくない。できるなら逃げ出したい。そんな気持ち。我ながらよくわからない。





 「お妙さーん!!一緒に恋のダンスを・・・ぐふぉあ!!」
 「オイこら、何でゴリラが人間の輪に入ってんだ」



 「先生、先生は踊らないんですか?!」
 「たりめーだろ。何で俺がそんな面倒しなきゃなんねーんだ」



 輪の中の人たちの言葉を聞きながら、うらやましいと思った。
面倒臭いにしろ、嬉しいにしろ、それを口に出せるのはうらやましい。私はそんな風に言えないから。



――あ、あそこに。

ふと目に留まるピンクの髪。やはりすぐに見つけてしまうのは私が無意識に探しているからだろうか。すぐ近くだから、多分普通にやれば当たると思う。なんだか複雑な気分。





 「じゃあ曲に合わせてー」

当たりたい、当たりたくない。だって恥ずかしくて、多分顔も上げられない。そんな私の気持ちなど知らないとでも言うように先生がスピーカーのスイッチを入れた。

鳴り出すゆったりした音楽。それに合わせてゆっくりと動き出す私たち。


 その人には、曲が同じリズムを2回繰り返した後に当たった。
少し顔を見上げて、それから手を取って踊りだす。運動神経のいい彼は、だるそうにしていてもスムーズに踊れていた。さすがは神威くん・・・。


くるくるくるくる。

私より高い位置にある頭からこぼれた長いみつあみの髪が、たまに揺れて私の頬にあたる。その度に私の心臓はうるさい音をたてた。

――もしかしたら、私はこのまま心拍数が限界まで突破して死んでしまうんじゃないかな。
そう思うほど、ドキドキと鳴る鼓動は速かった。とても顔なんか見れない。



 もう限界、と思ったところでちょうど曲調が変わり。私はほっとして(名残惜しくもあるが)手を離す。

だが、そのまま離れるかと思われた二人の距離は腕一本ぶんのところから広がらなかった。放した手は彼に捕まれたまま、ぎゅっと握られたままだ。



 「え、あの、」

どうしたの?
内心ばくばくの心臓で尋ねる。周りもざわめいている。


対して彼は、いつもと同じ飄々とした笑顔で離したくなかったんだよねなんてさらりと言い放った。


裏表の惑と、



(せんせー、ちょっと俺ら抜けるねー。)
(え、あ?!)


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