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学パロ






朝。


 「鬼は外」
 「・・・節分は終わったよ」

 教室に入ると突然、豆らしき小さな粒をぶつけられた。転がって行った先を視線で追いかけるとそれは確かに節分豆で、朝っぱらからの突飛な行動に盛大なため息が零れる。何で今日。何なら節分の日にでもやればよかったのに。


 「いやァ、妹と豆投げ合戦してたんだけど周りに止められちゃってさ。豆余ったんだ」
 「合戦て」

豆まきが合戦になるって、どんな兄妹ですか。
なんて、言ってることはこの上なく馬鹿なことのはずなのに、笑えないのはどうして?・・・神威だからか。


 「なかなか面白かったよ、壁にどれだけ食い込ませられるかとか。何なら実際やってみる?」
 「え、やだ」

 にこっとした笑顔に、反射的にそう答えた。壁に食い込む豆なんか見たくもない。本当に笑えない話になってきたじゃないか。その兄妹絶対人間じゃないよ。


 「嫌なの?」
 「普通はいやだと思うけどな」


残念。彼は笑顔のまま言って、"な"の形で止まった私の口に豆を一粒放り込んだ。そのまま私の立ち尽くすドアを通り抜けて、廊下に。振り返りながら慌てて口を閉じると、小さな丸がカロン、と歯に当たった。砂糖も何もついていないはずなのに、ほのかに口に広がる甘み。よくわからないままに、かみ砕いてみる。
・・・やっぱり甘い。

 「福はうち、」



 だから、その台詞は少し時期遅れなんじゃないかな。廊下を歩き出した制服姿を、今日はサボりか、とぼんやり眺める。何のために教室に来たんだろ、あの人。

もしかしたら、私に会いに来た?・・・なんてね。


 床の豆、掃除しなきゃな。遠ざかるみつあみを見ながら、ふとそう思った。


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