ナタクはいつも強さを求めてる。戦って戦って戦って戦って、その先に何があるのかもわからないまま戦い続けるのだ。それは鳥が羽ばたいたりしゃくとりむしが這ったり人間が呼吸をしたりするのと同じように、彼にとっては当たり前のことで。顔で感情表現をしない彼にとってのそれは、感情を示すツールのようなものだった。
彼は消して人を愛さぬ訳ではない。母や、小さな子、口にはしないが父や師や仲間を愛していることは知っている。しかし、彼は抱きしめたり微笑みかけたりすることができないのだ。今までにそんなことを教わってこなかったから。そのため、笑顔の代わりに大切なものを犯そうとするモノを破壊する。
あたしはそんな彼を見て時折、悲しいような、泣きたいような、それでいて賛同したいような、よくわからない気持ちになる。彼が「オマエは強いのか」と口にする度に心臓が捕まれるような感じがしていた。 あの人は愛して破壊して、不器用に立っているけれど、それなら逆に、彼を愛するにはどうしたらいいのだろう。愛を叫べばいいのか、抱きしめればいいのか、それとも破壊すればいいのか。あたしには3つ目を行動に移すだけの力はないけれど、愛してるだなんて言うのも何かズレてる気がする。彼には届かない気がする。 ならば、どうすればいいのか。それはわからない。
わからなくて、だけどいつの間にか気付いたら「あたしを頼ればいいのに」と口にしていた。
「・・・何が」
彼は不機嫌そうに答える。無表情の為に実際不機嫌なのかはわからないが、そんな気がした。腕を組んで、宝貝でいっぱいの身体を少し揺らせる。機械めいた瞳が無機質にあたしを映す。それを見てしまったらもう限界で。
「あたしね、ナタクのこと好きだよ」
・・・だけどほら、やっぱり返事はない。
甘酸っぱさには程遠い
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