(学パロ) 短編「また明日と言える距離」の朝なイメージ。
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朝。機嫌よく鼻歌を歌いながら教卓に手をついた担任から、抜き打ちの服装検査が知らされた。 SHRの時間を使って、クラス全員の服装をチェックするそうだ。 当然、教室中からブーイングの声が上がる。かくいう私も声を上げたうちの一人だったりするのだが。
「問答無用!ハイ、全員起立!」
大分頭の寂しくなっているその担任は、服装検査が大好きで、それ故にクラスのほとんどから嫌われている。隙あらばすぐチェックして名簿にマルをつけるので、影でハゲマル、なんて呼ばれていたりして。
ハゲマルは女子のスカートの折り皺まで細かくチェックしながらゆっくりと進んでいく。私の、規定よりほんの少しだけ短いスカートも注意されてしまった。いいじゃないか、このくらい・・・と思うんだけどな。
ゆっくりながらも順調に進んでいた服装検査だが、とある生徒の所でそれが滞ってしまった。ハゲマルは生徒に指を突き付け(指差しはマナーが悪いと思う)、声を荒らげる。
「深山木、なんだその髪は!染めてるんじゃないか?」 「いえ?自毛ですけど」
その生徒は毎回同じように言われる為、面倒臭そうに顔を歪めた。"何で僕が"、とでも言いたげな、苦い顔である。
「自毛ならこんなに茶色くなる訳ないだろう」 「生まれつきだったので何とも。それより先生のファンキーでスパイシーな斬新ヘアスタイルの方が風紀を乱してると思うんですけどね」
彼―――深山木秋くんは、ハゲマルの追求にも動じず言い返す。髪のことに触れられたハゲマルは顔を怒りに染めて彼の机を叩いた。
「な、なんだとぉおお!ふ、深山木!!人をおちょくるのも大概にしろ!!」 「おちょくるだなんて。僕はただ、先生にこれが自毛だということを認めてもらいたいだけです」 言いながら、件のサラサラの茶髪を指で弄ぶ。キューティクルも健在で、どう見ても自毛だ。なのにハゲマルはわからないらしい。鼻息を荒くして秋くんを睨みつける。
「ふん、とても自毛には見えんがな!」 「あぁ、老眼ですか?・・・あ、先生、そういえばこの間先生のポケットからリー○21のチラシが落ちたの見たんですけど、それを利用して生えた髪も自毛って言うんですか?」 「んな・・・っう、嘘だ!私はそんなところへ行ってなど」 「チラシの話しただけですよ?で、どうなんですか?」
上手い。 あれだけ怒鳴られても、秋くんは少しも取り乱したりしていない。余裕がないのはむしろハゲマルの方だ。密度の小さい頭を振って懸命に言い募っている。
「自毛だろ!自分の頭から生えてるんだから!!」
と。 ここで彼の勝ちが決定する。
「なるほど、さすが先生。なら、僕の髪も自分の頭から生えているので自毛ですね」
ハゲマルの理論を逆手に取って、にこりと微笑み。一見天使のようなその笑顔に、しかしハゲマルは悪魔でも見たかのようにすごすごと次の生徒の方へ立ち去ったのであった。
ある朝の攻防
某さんとのメールで思い付いたネタ
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