「ナマエちゃん、久しぶりやなあ」 「げ」
道を歩いていたら、あんまり街中で会いたくない着物姿が視界に飛び込んできた。長めの黒髪が風にゆれる。
「げ、って何や、げ、って」
ナマエちゃん、ホンマ酷いわあ。わざとらしく「よよよ・・・」と目尻を抑える仕草もまた腹立たしい。何しに来たんだこいつ。
「何で来たんですか、京都さん」 「いやー、大阪にチーム近畿の集合かけられてなー」
ホンマめんどいわー、なんて言いながら丸い眼鏡を押し上げる。面倒なら来なければいいのに、と思うけれど、やっぱり大阪くんの言うことには逆らえないのがチーム近畿。渋々ながらやって来たんだろう。
「今日はなんや、兵庫の正体に迫るとか何とかゆうてたわ」 「え、何それ。そんなこと言って兵庫くん来るんですか」 「やから、兵庫にはポケモンバトル大会と」 「鬼か!」
絶対来ちゃうよ兵庫くん。だってこの間会ったとき「映画見たら強いポケモンくれた!」って言ってたもん。かなり嬉しそうだったもん。早く使ってみたくてウズウズしてるはずだよ。
「止めてあげてくださいよ。大阪くんに言えるのなんか、京都さんくらいでしょう」 「えー、嫌やあ。うちも兵庫の正体気になるしー。飛ぶ仕組みとか見たいわー」 「・・・」
こんなところ。 これが無ければ、東京さんまでとは言わないまでも、なかなか整った顔をしているのに。何でこんなに大人気ないんだろうか。実にもったいない。宝の持ち腐れです。
「はあ。・・・京都さんて、残念ですよね。いろいろと」 「えー、そう?」
わからんわー、ととぼけて、白い扇子をパタパタ揺らす。その扇子に書いてある、「やつはし」の文字にイラッとするのは私だけでしょうか。これみよがしにパタパタして見せ付けられた気分になるのですが。
「あ、せや、ナマエちゃんも一緒に来ーへん?女の子はようけおればおるほど和むし〜」 「いや、チーム近畿の集まりでしょ?行けませんよ」 「えー、つまらんわー。ナマエちゃんも気になるやろ、兵庫の正体」 「いや、だからやめてあげてくださいって。かわいそうじゃないですか」
「ナマエちゃん」 「なんですか」 「イヤや」
・・・この人、いつか絶対殴る。そう決めた午後の一時。
20110731
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