大阪→主→徳島→大阪
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「ナマエはホンマかわええわー」 「・・・大阪くん」 「もー、一生抱きしめとりたい。好きや」 「ちょっと、」 「めっちゃ好きやで」 「あの・・・」 「何でこないにかわえんやろなあ」
・・・無視か。後ろから腕を回して、上機嫌の大阪くんは鼻歌でも歌いそうな調子だ。後ろにいるから表情は見えないけれど、きっとこの上なく笑顔なんだろう。
「大阪くん、放してよ」 「え、嫌や」 「・・・なんでそんなにナチュラルに否定するのよ」 「ナマエが好きやからや」 「あー、はい、それはどうも」
手をひらひら振る私に、大阪くんは苦笑を漏らした。いや、だから放してってば。その気持ちを助長するようにジーンズのポケットで携帯が鳴る。
「?誰だろ」 「ちょっ・・・ナマエ、俺がこないにしとんのに携帯取るんか!」 「だってメール来たもん」
えげつなー!!と不満を口にする大阪くんは無視して、抱き着かれたせいで動きにくくなった腕で、携帯を取り上げ、ぱかりと開いた。飛び込んでくる、差出人の名前。
「・・・徳島」
ついつい口から飛び落ちたその名前に、背後の青年の機嫌が忽ち悪くなる。
「なんで徳島がメールしてくんねん」 「・・・」 「あーあ、ホンマどんならん奴やわ、あいつ」
でも、それを気にしている余裕はなかった。私の意識はすべて手元の携帯に注がれていた。
"香川がうどんパーティーするらしいで。来るんやったら来いや"
それだけの言葉で、私の気持ちはこの上なく上昇しているから。
電子音のあたたかさ
(おもんないわ。俺が抱きしめても何ともあらへんのに、あいつはメール一本だけでこないにしおった)
20110717
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