インモラルな純情

ああ、どうして。
神様、私はどうしてあの人と結ばれなかったのですか。
それならいっそ、出会わなければこんなに苦しむことはなかったでしょう。
神様、あなたはどれほど意地悪なんですか。

「アシュレイ? 何を考えているんですか?」

彼、レギュラス・ブラックは、私の義弟。家の為に顔も知らなかったシリウス・ブラックと結婚し、辛い日々の中で唯一私を癒してくれた、愛しい義弟。

「僕と一緒に居る時は、僕のことだけ考えてください」

そう言いながら、優雅な動作で私の首元に唇を這わせる。思わず出そうになった声を耐え、肩を押し返した。
尤も、男性相手に私の力は及ばないのだけれど。

「やめて、この前も誤魔化すのが大変だったんだから」

シリウスは、私に厳しかった。
結婚してから優しくされたことは一度も無かったし、辛く当たられるか、無視されることばかりだった。
ご両親とも、あまり上手くいかずに悩んでいたときに、優しくしてくれたのがレギュラスだったのだ。心を開いてしまっても、おかしくはないだろう。

「へぇ、誤魔化せたんですね。今度こそバレるかと思ったのですけど」

悪びれる様子もなくサラリと答えた彼の瞳は、楽しそうに揺らめいていた。

「そんなこと、本当は思ってない癖に」

余裕な態度になんとなく腹が立って、少し言い返してやった。
すると彼は顔を上げて、私の瞳をじっと見つめながら答えた。

「当然です。もう二度とアシュレイに触れられないかもしれない、名前で呼ぶこともできなくなるかもしれないと思うと、こんなに手が震えるのです」

少し熱っぽい目で見つめられ、私は戸惑っていた。
いつも、人前では冷たい瞳で義姉さんと呼ぶのに、二人っきりになると、どうしてこうも私の心を揺さぶるのだろうか。
どうして私に、求めさせるのだろうか。

「ねぇ、レギュラス。私のこと、好き?」

一瞬驚いた様な瞳で私を見つめ、すぐに何を言われたか理解したのか、すっと目を細め答えた。

「ええ、この世の何よりも」

それだけ言うと、私の顎をひきよせ、長い口付けを落とした。
息継ぎなんてできない、苦しい接吻。まるで私達のような。
唇をそっと離すとすぐに、彼は口を開いた。

「義姉さん、知ってますか。来週から一週間、兄さんは用事で家を開けるんです」

それから私の体を引き寄せ、背中をなぞりながら耳元で「楽しみですね」と囁いた彼からは、私は一生逃げ出せないのだろうと悟った。

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