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 ほどなくして、ダンブルドアが到着された。

「ふむ、あまり良いとは言えぬ状況のようじゃな」

 辺りを見回し、少女にちらりと目をやってから呟いた言葉は、温かさを失った家の中でやけに響いた。調査が済んでいない今、下手に家の物を触ることもできない。惨状は惨状のままで、唯一変わったのは血が固まったことぐらいか。どう返すか悩んだ末に、特に反応を返さない事に決め、報告を始めた。

「死喰い人はご覧の通り捕獲済みです。この家の者は、その少女以外は既に息をひきとっております」

 少女を見ると、寝息をたてて眠っていた。その毒気のない素直な寝顔は、不憫だと思わせるには十分だろう。ダンブルドアは彼女をじっと見つめたかと思うと、こちらに急に視線を寄越したので、少し慌ててしまった。静かな湖面のように輝く瞳は、まるで心の奥まで見透かしているかのようで慣れない。

「この子には申し訳ないが、とりあえず君の家に連れて帰ってもらおうかの。落ち着いた頃に話をした方がいいじゃろう」

 そう言われ、戸惑いつつも小さく頷いた。てっきりダンブルドアの方で保護するのだろうと思っていたのだ。断ることも出来るが、状況を考えれば恐らく私が適任だろう。わざわざ効率の悪い方法を選ぶ必要もない。

「レギュラスよ、君がこの子の後見人となる覚悟をしておきなさい」

 まさかそんな事を言われると思っていなかった私は、面食らってしまった。確かに、この家族の今後の面倒を見る約束でこの件に当たったが。
 果たして、元死喰い人の私を、そこまで信用してよいのだろうか。無論、裏切るつもりなど毛頭無い。けれどそれは、この少女にとっても酷ではないだろうか。死喰い人に両親を殺されているのだ、いくら足を洗ったといっても、死喰い人だった者の顔を見るのさえ嫌だろう。闇の印は、消えることはないのだ。

「無論、彼女の意思も聞かねばなるまい。しかし、これは古い魔法じゃ、彼女の父親かの。彼女の事を、約束したのじゃろう?」

 なるほど、と1人で納得した。いつ間にか、なんらかの約束の魔法をかけられていたらしい。やってくれたものである。やはり彼と関わると碌なことがない、学生時代からそうだった。そういえば、少女の顔つきはなんとなく彼に似ている。やはり親子とは、家族とは、こんなにも似るものなのだろうか。
 
「では後のことはおって連絡する、今はポラリスを速く連れて帰ってやりなさい。わしは少しこの家を見てから行くとしよう」

 そうダンブルドアに声を掛けられてはっとする。今は一刻も速く帰って、この少女を休ませねばならない。まさかずっとソファーで寝かせておく訳にもいかない。穏やかに眠る少女をそっと抱え、姿現しをする。最後に見えたのは、家族全員で幸せそうに笑っている写真で、胸が痛くなり目を瞑った。

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