※5月発行の童話パロ本に入れられなかった話。※
※ぷらいべったーからお引越し※



 昔々あるところに、三沢さんという百姓がいました。
 ただの百姓とは思えない鋭い眼光、暴れ猪をクワの一振りで退治する戦闘力を持っていますが、ごく普通の百姓です。ある日、三沢さんは畑で育てている瓜の中に、妙に大きいものを見つけました。その大きさときたら、ちょうど、健康優良日本男子がひとり収まれそうな巨大さです。
―― 昨日まではこんなものはなかった。しかも中で何か蠢いている気配がする。怪しい。
 三沢さんはクワを大きく振りかぶり、瓜を一思いに……。
「あっぶねえな!」
 クワが瓜を一刀両断にする寸前、風圧で割れた瓜の中から青年が転がり出して紙一重で避けました。危うく惨劇の舞台となるところだった畑の中で、瓜から生まれた青年はすっくと立ち、敬礼をします。
「本日付けで、三沢さんの息子になって誠心誠意孝行するように神様から辞令を受けました! 永井頼人陸士長です! 以後、よろしくお願いします」
「瓜から生まれたから瓜子姫だな」
「いや、名乗ってんだろ聞けよ!」
 とまあ、ひどい出会いでしたが、瓜子姫こと永井は三沢と喧嘩もしながら仲良く暮らしておりました。
 そんなある日のこと、三沢は用があって遠くに行くことになり、永井に留守番を頼みました。
「最近、この辺に沖田とかいう天の邪鬼が出るって話だ。絶対に家に入れんじゃねえぞ」
「天の邪鬼ってなんすか」
「若い男を食い散らかす変質者のことだ」
 三沢の簡潔な説明に震え上がった永井は、絶対に入れたりしない!と約束するのでした。三沢が旅立つと、男二人には狭く感じた家が急に広くなったように感じます。三沢がいなくたって寂しくなんかねえや、と、強がって床に大の字に転がると余計に天井は高く、壁は遠く、しんとした空気に耳が痛くなるのです。
 ただ待っているのも退屈で、村の子供でも遊びに来ないかな、とぼんやりしていると、誰かが戸を叩きました。
「永井、俺だよ俺」
「誰だよ」
 戸の隙間からは、真っ白な肌をして黒い着物を頭からかぶり、青い帯を巻き付けた見るからに怪しい奴がいます。
「沖田だよ。ここを開けて、一緒に遊ぼうぜ」
「三沢さんから聞いたぞ、若い男を頭からバリバリ食べる変質者なんだろ!」
 永井が怒鳴ると、沖田は声をあげて笑いました。見てくれはおかしいですが笑顔は人なつこくて、引き込まれる雰囲気があります。たとえ、口の中にぞろりと並んだ牙が見えていてもです。
「そんなことしないよ。俺の口じゃあ、永井は大きすぎて入らないだろ。なぁ、そっちに行かせてくれよ」
「駄目だ。三沢さんと約束したんだ、絶対に、中には入れないって」
「中に出さなきゃいいのか? うんうん、そこは約束しとく。女の子みたいで興奮するし」
「は? ……とにかく、家の中には入れねえから」
「瓜子姫も冷たいよなあ」
「なんであんたがその名前で呼ぶんだよ」
 むっとした永井に、沖田はにんまりと笑って「俺は、三沢とは古い知り合いだからな。お前のことも、なんでも知ってるんだよ。楽しくて気持ち良くて、退屈しない遊びもたくさん知ってる」得意げに言いました。そう言われると、一人でじっとしているのに飽きていた永井の好奇心が疼きます。
「約束したのは、家の中に入れないってことだけだろ。じゃあ、永井がこっちに来れば怒られないよ」
 畳みかけてくる沖田の言葉に心が揺れて、永井はとうとう、戸を開けてしまいました。
「はは……捕まえた」
 冷たい手に腕を捕まれ、怯んだ体を抱き寄せられて、永井は「なにすんだよ!」もがきましたが、沖田の力は強くて少しも振りほどけません。
「ああ、やっぱりいいなぁ。可愛いし、元気なのがいい」
 沖田は上機嫌に言って、永井の耳をかぷりと噛みました。ひぇっと情けない声を上げて竦んだ永井は、続けて耳朶を舐めあげられてますます固まります。
「や、やっぱり食べるん……ですか……」
「うん。いただきます」
 にこりと笑った沖田は、永井をその場に押し倒し、舐めて、吸って、しゃぶって、ぐちゃぐちゃに掻き回して、熱いのを突っ込んで思い切り揺さぶりました。最初はやだやだ怖いと騒いでいた永井も、その頃には茄子がママで胡瓜がパパかどうかは神のみぞ知るところながらも、あんあんと甘い声をあげては沖田に抱きつき「これ気持ちいい」「すごい」を連発して自ら腰を動かします。
 すっかり具合が良くなった永井の瓜子尻を堪能した沖田は、一応は約束通り外に出しましたが、永井が「あっ……なんでぇ……」と悲しげに鳴いたので、二回目はちゃんと中に注いであげました。
「ふう……それじゃあ、俺はそろそろ……」
「やだ。もっと遊んでください」
「えっ、な、永井?」
 沖田は永井を甘く見ていました。仮にも神から遣わされた瓜の子であり、鬼三佐の三沢に鍛えられてきた男の子なのです。ぎらぎらと目を光らせた永井が腹の上にまたがるのを、期待と恐怖の目で見上げてしまいます。
 ついさっきまでのおぼこい青年とは同一人物とは思えないほどの艶っぽい顔付きで、雄を昂らせようとブツを可愛がって来る手の動きもすっかりいやらしく出来上がっています。
「知識でしか知りませんでしたけど、これが受粉なんですね……俺には雄しべしかないけど、いっぱい種付けしてもらえば種ができますよ、きっと」
 うっとりと呟き、永井はすっかり元気を取り戻した沖田の天の邪鬼な雄しべを熟れきった瓜子尻に迎え入れ、元気に腰を動かしはじめるのでした。


 さてさて。
 翌日、帰ってきた三沢は、ぼうっと部屋に座り込んでいる永井に「ちゃんと留守番してたか?」と声をかけました。
「うん……」
「顔が赤いな。風邪でも引いたか」
「平気。え、えっと、茶でも入れますね」
 よろよろと立ち上がった永井の後ろ姿。うなじにくっきり、無数についた紅い痕を見て、三沢の額にいくつもの青筋が浮かび上がります。
「……永井。もう少し待ってろ。用ができた」
 クワをしっかと掴み、のっしのっしと天の邪鬼が棲む山へと向かっていく三沢の背後には、本物の鬼が浮かびあがっていたといいます。
「沖田さん、次はいつ来てくれるかな。今度は種、できるかなあ」
 搾り尽くされてさしもの魔物も疲労困憊、療養中だった沖田さんが、殺意により鋭く研ぎ澄まされたクワを持った三沢さんに追いかけ回されているとも知らず、永井くんは幸せな将来に思いを馳せるのでした。
 舅に首根っこ掴まれて引きずられてくる婿養子は、それまでの悪戯の分、牛馬のように働かされるでしょうが、それもまあ、自業自得ですし。
 永井くんが幸せなら、言うことはありませんね。

 めでたし、めでたし。

2016/09/19 17:10
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