【病硬膏にいたる沖田さんと供さん/半端】
「永井は天使なんだよ」 さっきまで今年のペナントレースの行方について語っていた沖田が、唐突に真顔になったかと思えばこれである。 供は塩ラーメンを啜るのに忙しいふりをして黙殺した。 「可愛くて素直で可愛いのは、それで説明がつく」 話は終わらない。 餃子も頼んでおいてよかった。 可愛いは二回も言うことか。確かに永井は可愛い。やんちゃな柴の仔犬と同じくらいに。 「まあ……頑張ってるよな」 沖田の妄言を否定も肯定もせず、供はやんわりと受け流した。 健康優良日本男児のお手本のごとくありあまる体力と、人一倍の負けん気を持ち合わせた永井は、沖田を初めとする上官の指導でめきめきと才覚を伸ばしつつある。 日頃は永井に甘いとはいえ、訓練時の沖田は鬼悪魔呼ばわりされるほど恐ろしい。 それだけ、国防を担う次代の育成に真剣に取り組んでいるいうことだ……というのは勿論として、本気になるのは別の理由もある。 自分が乗り越えてきたものを、鬱憤晴らし半分に下の世代に押し付けるあれだ。 かつては沖田も供も、先達による地獄のしごきにさんざん泣かされたのだ。体育会系の因果は先輩から後輩へと受け継がれてゆくものである。 「お前の訓練にもよく食らいついていってるし」 「ああ。それでな、褒めてやったら、こうはにかんで『自分は、沖田さんみたいになりたいんです……これでちょっとは近付けてますか』だとよ……なんなのあいつ! 可愛さで俺を殺す気か!」 三十一歳の瓢悍な男前が、厚い胸板をおさえて悶えるさまは甚だ不気味である。 むしろ怖い。 助けて一藤一佐。 「お前は永井をどうしたいんだよ」 突っ込みのつもりで口にしてから、供は心底後悔した。 沖田は「そりゃ……なぁ?」とほんのり、じんわり、良からぬ表情で笑う。 「まさかお前、部下だからって無理やり……」 「ひでえな。可愛い永井を悲しませるようなことするわけないだろ。それに俺は、ちゃぁんとわきまえてるさ」 自分の立場も、相手の将来も。 「ああ。重々わきまえとけよ」 「でも、永井から来るぶんには構わないよな!」
―― 駄目だこいつ!!
永井逃げろ、と念じずにはいられない伴だった。
//続きもあったけどしょうもないのでここで終われ。 永井が同期と 「もう俺、沖田さんになら抱かれてもいいわ」 「永井きめえww」 「自重しろww」 「それくらいかっこいいんだよww」 とか、ふざけあってるのを目撃して、いいのか永井!!とぶるぶるするかっこわるい沖田さんください。
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