13/01/21
【なんの脈絡もなく、三沢さんと永井くんで疑似親子パラレル】
「ハンカチは」 「もった!」 「ティッシュは」 「ある!」 「給食袋」 「くれ!」 「持っていきます、だろう」 「もってきます!」 勢いよく敬礼し、三沢が差し出す布の袋を掴む手は小さく、やわらかい。 青地に赤い自動車柄がついているのがお気に入りだという袋は、三沢が手作業で作ったものだ。 「残すなよ」 「まずかったら残すー」 「こら」 口を尖らせ、可愛げのないことを言った頭に伸ばした手は、きゃっきゃっと軽い笑い声でかわされた。 「食べないと大きくなれないぞ、頼人」 小学校のクラスでも真ん中より前にある身長をネタにすると、頼人は「それは困る」と妙に深刻そうな顔で言うので、笑いを堪えてもう怒れなくなる。最近、本人は大人っぽくしているつもりなのか、三沢の口真似をしてくるのがおかしい。 「玄関で靴履いてろ。俺もすぐに行くから」 「りょー!」 忘れ物チェックを済ませたランドセルを背負い、手足を振り上げて玄関に行進していく頼人は元気がありあまっている様子だ。自分が子供の頃もあんなに騒々しかったかどうか……いまいち、覚えていない。 三沢岳明24歳独身、何の因果か7歳男児と二人暮らしである。 会ったこともない親戚の子を、疎遠だった大伯父から「一人暮らしなら気楽なもんだろ、しばらく預かってくれ」と無責任な言葉で押しつけられたのはちょうど一年前のことだった。 両親を事故で失った後、親戚中をたらい回しにされてきた問題児であり、春には施設に入れる手筈を整えるからと言われたものの、三沢とて防衛大学、幹部候補生学校に続く初級幹部課程と寮暮らしが長く、ようやく一人になったところで厄介な居候が増えるかと思うと、正直、うんざりしたものだ。 夕暮れの駅前通り、「じゃあ後は頼む」と、連れてこられた車から押し出されるように三沢の前に置き去りにされた子供……大伯父は声をかけることもせず、さっさと走り去ってしまったので本当に「厄介払い」という言葉がぴったりに思えた……永井頼人という名前と六歳という年齢しか知らされていない子供は、顔立ちこそ可愛らしいが年齢に合わず冷めきった目をしていた。 「……どこ行けばいいの」 三沢と目を合わせないまま吐き出した言葉も、子供らしい喜怒哀楽を全く感じさせない平坦なものだ。 「ついてこい」 いきなり暴れ出したり泣きだしたりということもなく、大人しい様子に幾らか安堵して、家に向かおうと踵を返した三沢の後を、頼人は黙ってついてきた。 少し進んだところで振り返ると、赤いフェルトで象った自動車のアップリケをつけた布鞄を抱え、小さな歩幅で懸命に追って来る姿が目に入る。三沢と目が合うと、頼人はきゅっと唇をかみしめ、うつむいて足を速めた。 途中、横からやってきた通行人とぶつかり、よろけながら走ってくる姿に溜息が出る。 「おい」 大股に歩み寄り、声をかけると目に見えてびくつかれた。 構わず、手を差し出す。 「掴まれ」 あどけなく見開かれた、子リスのような目に見つめられ、首筋を掻く。どうも気まずい。 「迷子になるぞ」 おずおずと重ねられた手をしっかり握り、意識してゆっくりと歩き出す。 頼人の歩調に無理がないことを確かめて、三沢は口を開いた。 「好きな食べもの、あるか」 「……べつに」 「嫌いなものは」 「……ない」 小さな手の平は冷たく乾き、幼い緊張が伝わってくる。 ―― なんだかな。 こんな子供が、自己主張を許されない環境で過ごしてきたのか。 見た目の厳つさで誤解されやすいが、荷物のように放り出された身に同情する程度の情は三沢も持っている……大伯父に対し軽い怒りを覚えるぐらいには。 「カレーは好きか」 質問を変えると、頼人はしばらく考えこみ、 「だんしゃくが、入ってるの」 小さな声で答えた。 「男爵か……今日はないな。明日、買いにいくか」 「おじさんが買うの?」 「岳明だ。三沢岳明。23歳だ、おじさんじゃねえ」 「たけあきさん?」 「うちは俺しかいないからな、買い物も俺がする」 「ひとりぼっちなんだ」 「一人暮らしだ。……頼人がいたら二人だな」 訂正に訂正を重ねると、握られた手に力が籠もった。 冷たかった手が、三沢の体温が伝わったのか僅かに熱を持っている。 そうして、頼人は三沢の部屋にやってきた。
とにかく笑わないし泣かない、愛想のない子供だという以外は頼人は問題児には見えなかった。 押し付ける詫びだと恩着せがましい大伯父が調べあげてきた、職場に近く夕方まで預かってくれる幼稚園に編入手続きを済ませ、柔和な老人といった風情の園長と三沢より若そうな保母に頭を下げて預けた……その数日後の夕刻、迎えに行った先で、困った顔の保母と拗ねた表情の頼人に出迎えられて、三沢は問題が起きたのを悟った。 「どうか、しましたか」 「頼人くんが、他の子に怪我をさせたんです」 昼寝の時間になって急に暴れ出し、三人を相手に取っ組み合いを演じて、引っかき傷や噛み傷を作り、一人には鼻血まで出させたのだという。 その程度なら男の子にはよくあることで、泣きわめく子には、消毒やらばんそうこうやらの処置をしておしまい。 三沢にとって幸いなことに迎えに来た親達も問題にせず、これからは仲良くしてねと頼人に声をかけて連れ帰ったというのだから、そこまで深刻な顔をされる話でもなさそうなものだが。 「どうして喧嘩をしたのか、理由を言わないんです。他の子たちは頼人くんがいきなり怒ったって言うんですけど……今までおとなしかったのに、どうしたのかしらって心配なんです」 人の良さそうな保母は、右手で自分の左腕を揉みながら、ひどく言いにくそうに口を開いた。 「頼人くんには、おうちの事情がありますし……園長先生も、叔父さんにはきちんとお話ししておいたほうがいいっておっしゃるものですから。あの、夜中に泣いていたとか……何か、思い当たることはありませんか?」 実際はもう少し遠い関係だが、幼稚園には三沢は頼人の叔父という説明をしてある。 幼くして両親を失った可哀想な子が、若い叔父の元に厄介になり、情緒不安定になっても仕方がない。おおかた、そう思われているのだろう。 三沢は一度、口元を引き締め、 「頼人」 保母の元を離れ、下駄箱の影に隠れてしまった頼人を呼んだ。 利かん気そうな表情が半分だけ覗く。 「こっちに来なさい」 改まった口調に真剣さを嗅ぎ取ったか、頼人は渋々といった様子でこちらにやって来た。 屈みこみ、目線を合わせて問う。 「どうして喧嘩したんだ。……ちゃんと言わないと、わからないぞ」 「……あいつらに、変って言われた」 「変?」 「お母さんじゃなくて、たけあきさんが迎えに来るの、変だって」 「それが嫌だったのか?」 「ううん」 かぶりを振る頼人の目は、真っ直ぐに三沢を見ている。 「たけあきさんはやくざだって言うから。よりとはやくざの子供だって、わあわあ言うから、叩いた」 殴ってよし。勝ったならなおよし。反射的に褒めかけて、保母の手前だったと言葉を飲み込む。 「俺は自衛官だ。やくざじゃない。次からそう言ってやれ」 制服を着ているのに、子供の印象とは恐ろしい。 含めて聞かせるように言うと、保母が「す、すみません」と頭を下げた。 自分の責任ではないのに恐縮する保母に苦笑する。 「構いませんよ。そういう反応にも、慣れてますから」 「おれのせいで、たけあきさん、悪口言われたの……ごめんなさい」 か細い声で謝る頼人が、コートの袖をきゅっと握る。 「悪口なんてのは、どうせ本当のことじゃない。いくらでも言わせとけばいいんだ。でも、叩くのは駄目だ」 「……頭突きもだめ?」 「駄目だ。本当に強い男は、自分より弱いやつには手を出さないもんだ。できるな?」 「わかった……」 「よし。じゃあ、帰るぞ」
手を繋いで帰る道すがら、三沢は、すっかり暗くなった空に浮かぶ星を眺めながら口を開いた。 「頼人。……俺がやくざって言われたから、怒ってくれたんだな」 「たけあきさん、やくざじゃないもん」 「やくざがなんだか知ってるのか?」 「こういきぼうりょくだんぎんせいかい」 「……渋いドラマ見てんだな、おまえ」 子供の口からすらりと出てきた名前がおかしくてひとしきり笑うと、頼人もふふっと擽ったいような声で笑った。 ―― お。 初めて笑った顔を見た。可愛いなと素直に思う……思ったところで、いじらしさも感じた。 「ありがとな、頼人。お前は、俺の名誉を守ったんだ」 「いいことした?」 「うーん……喧嘩は良くないけどな。今回はいいってことにしとくよ」 「いいの」 「いいよ。次から、おじさんは三尉だって言ってやれ」 「さん……」 「三尉」 「さんい」 「そうだ。偉いんだぞ」 実際のところはまだ、自分より階級が下のベテランに頼る場面も多い新米幹部だが。 「一等賞にはなれないの?」 その三位じゃないと言う前に笑いの発作がやってきて、なにも言えなくなる。強く握りあった手は、温かかった。
*******
というような色々を経て、この子はうちで育てます!!ってことになってですね。
父兄参観日にがんばって休みもぎとってきた三沢さんとか、運動会の親子競争でぶっちぎりだとか、父の日に似顔絵描いたりとか、そういうもろもろがあったり。
永井くんが中学三年ぐらいになったところで、 「岳明さんって、俺がいるから結婚しないの」 「あ? お前はそんなことに気ィ回さなくていいんだよ。そっちこそ、カノジョの一人も連れてこい」 「いねーし。……いんないし」 「ガキだな」 「っつか、岳明さんは……いるんだろ」 「あー……先月まではな」 「……別れたんだ」 「性格の不一致だよ。ガキにはわからんでいい」 「綺麗な人だったのに」 「お前ああいうのが好みか。子供には優しくても、性格きっついぞ」 「……岳明さんは、『ああいうの』がいいんでしょ」 やけに絡むなコイツと思ったあたりで、永井くんが三沢さんの隣に座って、むぎゅっと抱き着いてくるわけですよ。 「なに甘えてんだよ」 小突いても、ひるまずにぎゅーっとくる。 図体は……まだまだ小さいけど、豆粒みたいだった幼児期に比べたらだいぶ大きくなってきたなーとか、それにしても中身はてんでガキのまんまだなーとか思いながら頭をぽふぽふ撫でてやったところで、じっと見つめられたり。 「?」 「岳明さんが手ぇつないでくれた時。俺、この人のこと好きだって思った。それで、大きくなったら結婚するつもりだった」 「……いつの話だ」 「最初の時。それからずっと……」 ああ、マズイ。これは言わせたらマズイ。 別れた彼女に言われた捨て台詞『頼人くんしか大事じゃないくせに』が脳裡に点滅する。 そりゃ残念だったな、俺も若い嫁さん貰いそびれてがっかりだと笑い飛ばして、昔話にしてやんないと。 と、思いながらも、黙って瞬きするのみの三沢さん。 「……いまでも、好きなんだ」 泣きそうな顔で告白されちゃって、しまったなと内心とっても弱る三沢さん。 男同士とか年齢差とか差し引いても、永井くんのことはそういう対象には絶対に見られない、大事な大事な家族で、愛情を、それ以外のなにかにしてはいけない。 「そうか。俺にも、お前は自慢の息子だよ」 軽く受け流して、つらそうに目を伏せる永井くんの気持ちに気付かないふり。
みたいな、それ完全に犯罪ですよねって三永を、誰かください。
沖永だと、親の再婚でひとつ屋根の下で暮らすことになった十歳差の義兄弟とかか……。 おにいちゃん大好きって素直に懐いてくる子にムラムラする沖田さんとか変態じゃないですかやだー。
永井くん中学生とかで、よそよそしく堅苦しい感じ、お互いに距離を掴みあぐねてるところからの、一緒にお出かけ大作戦とか。 沖田さん夏期帰省中に、これ幸いとばかりに遅い新婚旅行に出かけちゃった両親、残された微妙な距離感の義弟と二人っきりでどうすればいいのか五日間。
「スイカ、切ったんで……食いますか」 「ああ、それ、俺の土産な」 「あ…………えと、いただいていいですか」 「どうぞどうぞ」
気まずい。
で、部活のことやらなんやら、ぎくしゃくしつつ会話してるうちに、永井くんがちょっとほぐれてきて、
「宏さんは、戦車乗ったりするんすか」 「科が違うから、ないかなー」
なんて会話してるうちに大雨→落雷→停電。 ギャーギャー言いながら冷蔵庫の中のものを「アイス!アイス食うぞ!!」とか「ガス生きてるし、肉はとりあえず全部炒めるから!凍ってる奴は氷敷いといて!」など必死にどうにかして。 「なんでこんな食ってんだろな俺達……」 「もう、1ミリでも入らないっす。無理っす」 蝋燭つけてボソボソ会話してたり。 で、すっかり仲良くなって、最終日。
「じゃ、またな」 「はい。行ってらっしゃい」 「……」 「なんすか?」 「行ってらっしゃいって言われるの、いいなぁって思ってさ」 「ちょっと照れますけどね」
あはは、と恥ずかしそうに笑った顔が可愛くて、きゅんと……。
(いやいや、きゅんとっておかしいだろ俺!!) (はあ、なに意識してんだろ俺。笑ってごまかしたけど、宏さんに変に思われるよ……)
お互いに無自覚の恋が芽生えたりなんだったりとか。
一永だと、同級生ですからね。 文系と体育会系、ソリが合わない二人がいきなり兄弟に!? って、なんすかそのボーイズラブ。
永井くんは頑なに永井姓を捨てないとか(逆でもいいけど)、「お前のこと、兄弟なんて思ってねーから」「は?こっちの台詞だ」って宣言したりとか、最初から波乱含みですね。
「なんで相部屋なんだよ……」 「この線からこっち入ってくんなよ!」
「あ、あの、一樹くん……永井くんと同棲してるってほんと!?」 「その表現やめてくれないかな」 「一樹ぃ! てめぇ、俺と同棲してるとか言いふらしてんじゃねーよ!!!」 「……永井、今の大声で、学年中に知れ渡ったと思う」
とかってお約束もありますね。 夢いっぱいですね。
ともかく、三永親子は、ほのぼの方向と昼メロ方向の二極にいきますね。
昼メロはアレです。 ずっと子供のままでいてほしかった三沢さんと、子供のままじゃいたくない永井くんのアレコレです。 思春期まではほのぼの路線で、14、5歳ぐらいから永井くんが意識しだして微妙な方角に転がり出し、16ぐらいで一線を超えてしまうとかっすかね。
16歳と33歳……犯罪……犯罪……ッ!!!
うさぎさんの、永井くんが押し切った形で体の関係だけ成立してしまって、三沢さんは気持ちを告げない(中だしもしない)関係というのがツボストライクでアワワワワワ。 そして17歳で沖田さんが介入して波乱含みの展開になるっていうね!
かーらーの、沖永展開になる可能性もありますね。 沖永→三だと、沖田さんが中出ししようとしたら物凄く抵抗する永井くんとかさ……事後にシャワーに打たれながら一人泣いてる永井くんとかさ……でも沖田さんが物凄く優しいし好きだよって言ってくれるのでだんだん依存してっちゃうとかさ……((^q^))。
沖田さんがいい人すぎてもはや聖人展開だと、三沢さんと喧嘩して家出してきた永井くんを拾って部屋に泊めてあげて、三沢さんにちゃんと連絡してしばらく預かりますからって言ってですね。 三沢さんに、自分の気持ちをちゃんと話してごらんって、永井くんにアドバイスしたりしてですね。 「……本当はね、奪っちゃおうかと思ってたんだけど」 でも、頼人くんは本当に三沢さんのことが好きなんだなって笑って、あの人は不器用だからってフォロー入れたりしてくれますね。
なにこのロウフル1000%な沖田さん。 裏人格で闇沖田さんがいてカードバトル始めてもおかしくないレベル。(番組が違います)
ちょっと悪い大人の沖田さんなら全力でNTR展開に持って行きますね。 永井くんが「俺……なにしてんだろ……」って落ち込んでも、優しくていい人の顔で囲いこむよブルブル。 女の子なら孕ませて既成事実作れるのにって残念がる勢いでいくよ危険危険。 「優しい三沢さんは、頼人くんに合わせてただけだからね。こんなこと、してくれなかったでしょ?」 三沢さんは永井くんが必死すぎて流されただけって刷り込みつつ、芯から調教しちゃうよコワイネ!!!
わたしは沖田さんをなんだと思っているのか……。 ※偏見の原因:闇沖さん。
安定の三永展開だと、幼な妻ですね!! 奥さまは高校生ですね!男子だけど!!
ほのぼのだと、お互いに無自覚なのに親子っていうより夫婦だよねコレって仲良し具合で、永井くんが三沢さん好き好きって押してるうちに、恋人になってたとかそんなん。
それこそ永井くんが21歳になるまでキスのひとつもしませんよ。 ちょうプラトニック。 手を握り合って寝てたりするのにそれ以上なんもしないんですよ。
終始あまずっぱい感じの二人で。
255630
|