基本的に甘い。 春海ちゃんがログアウトしっぱなしですよ注意。
胸焼けしたら冒頭に戻って賢者モードに入ってください。
11/8
【中のひとネタ】 【ヘレシーコマンダー異聞 すごいよ!ファブ沢さん】
「あの女より生臭いな……お前、本当に人間か」 「や、やめて……!」 「何やってんだよ!」
そのとき、俺が見たのは、怯える女子中学生めがけてファブリーズを吹き掛けまくる三沢さんでした。 渾身の力をグーに籠めて上官をぶん殴った俺を、誰も責められないと思います。
「このひと、私のことを磯臭いって言うんですぅ!」 「実際、臭うんだが」 「あんたの加齢臭に比べたらましだろ! 前から思ってたんだよ、三佐の枕からお父さんのにおいがするって!」 「永井…………嗅いだのか」 「ちっ、違ぇよ! べつに、三沢さんが先に起きて部屋を出てったのが寂しかったからつい……とかそんなんじゃねえよ!」 「なるほどなぁ」 「違うって言ってんですよ!! あっ、君!? (甘д甘)←こんな顔で俺を見るのはやめて!?」
これはひどい暴露大会。
12/5
【口からガムシロップ1ガロン吐くぐらいの、コッテコテに甘い三永はどうすれば実現するのかについて考えてみたよ。】 【並行世界の幻肢痛】
玄関を開けると、食欲を擽る甘い匂いがした。 灯りの零れるリビングの扉が開き、シンプルな黒のエプロンをかけた青年が裸足の足音を立ててやってくる。 「おかえりなさい!」 「ただいま」 元気の良い出迎えに応じると、童顔に光がこぼれるような笑みを広がる。三沢が脱いだジャケットを受け取って玄関脇のクローゼットにいそいそと吊るす姿に、主夫、などという言葉が浮かんだ。 彼……永井頼人と名乗る青年は、三か月前に突然、三沢の家に現れ、それからずっと住みついている。 戦闘服を着て顔にフェイスペイントを施した彼が玄関先に蹲っていた時は心底仰天したが、慣れとは恐ろしいもので、今ではいるのが当たり前のように思っている。 「今日は牛丼作ったんですよ。自信作なんで、いっぱい食べてください!」 嬉しげに告げる顔をしげしげと眺めていると、永井は「なんですか」と首を傾げた。 「買い物はどうした」 「先週の冷凍肉使ったんですよ。だから牛丼です」 何が「だから」なのかはわからないが、永井が言うのだからそうなのだろう。 「ビール出しときますね!」 キッチンに駆けこんでいく永井の、いるだけで騒がしい挙動を見送り、洗面所で手を洗いながら鏡の中に覗き込んだ自分の顔は、いつも通りの仏頂面だ。 部屋着に着替えてダイニングに入ると、永井はすっかり食卓を整えて待ちかまえているところだった。 宣言通りの牛丼の他に、汗を掻いている缶ビールにコップ、胡瓜と茄子の浅漬けも並んでいる――全部、こいつの手作りだ。 「どうなってるんだろうな」 椅子に掛け、差し出したコップに注がれるビールを見つめながら呟く。 「なんの話ですか」 「お前だ、永井。……これを作ったのは誰だ」 「俺ですけど」 「いま、俺の前にいるのは誰だ」 「永井です」 「……俺はおかしくなったのか」 「前からでしょう、そんなの」 三沢の常軌を逸した問いに、平然と答え続ける永井は、薄い笑みを浮かべている。 「どうして、お前なんだ」 「その言い方、やめてください。……それより早く食べないと冷めちゃいますよ、はい、お疲れ様」 永井が掲げたグラスに、自分の手の中のグラスを打ち合わせると、澄んだ高い音が響く。 一口飲んで、「最近、ビール美味いんですよね。年食ってきたのかな」などとのたまう彼が、三沢の知る【永井頼人】ではないのは確かだ。 三沢の部下である彼は今ごろ、営内の自分の部屋にいるだろう。 そもそも、何かと反抗的な態度を取り、必要がない限りは自ら三沢に接触してくることなどない彼に嫌われている自覚は、十二分にあるのだ。 それに、永井は三沢に対して「三沢さん」などという砕けた呼び掛けはしない。良くて「三沢三佐」、悪くて「三佐」だ。 永井と寸分たがわぬ姿形をして、それでも彼には有り得ない態度で三沢に接してくるこの青年を見ていると、頭が混乱してくる。 「俺が三沢さんの見てる幻覚だとしたら、あんたは二人分の夕飯作って二人分の晩酌してるわけだ。だったら、本格的におかしくなってますね」 情景を想像するだけで気が滅入る。 愉快そうに笑う永井の言葉は取り合わず、三沢は丼の中身を箸ですくい、大きく開けた口に放り込んだ。 「どうですか?」 「……まあまあだ」 「いっつもそれですね」 永井は自分の牛丼を咀嚼し、「うまいじゃないですか」と口を尖らせた。 「三沢さん、味覚障害なんじゃないですか。昼間、テレビでやってましたよ」 「知らん」 暫しの沈黙が落ち、もくもくと食事を続け、酒を飲む――こいつが三沢の幻覚なのだとしたら、三沢の食費と酒量は増える一方だ。 「ごちそうさまでした」 三沢よりも大盛りにしてあった癖に、家主よりも早く食べ終えてきちんと両手をあわせる永井は、赤いTシャツにパーカーを羽織ったラフな格好をしている。 どう見ても若者向けの、つまり永井にはよく似合うが三沢のような男が着るとは思えないそれらを買ってやったのは、三沢である。 レジ係は、三沢の顔と体躯、そして商品を見比べ、邪気のない顔で「プレゼントですか?」と訊いてきた。 息子に買い与えるのだとでも思ったのだろうか――レジ台に片手をつき、余った片手で口を押さえながら笑っていた永井は、三沢が「家用です」と答えると目を丸くしていた。 他にも、あれがいいこれがいいとねだられるまま――どれも安物ではあったが、ちゃらちゃらした学生だらけの店に連れていかれるのは閉口した――何着か買ってやったが、よほど気に入ったのか最初に見つくろった服ばかり着ている。 こんなつまらないことを覚えているのは、鼻歌まじりに食器を洗う永井が実在しているのか、未だに確証が持てないからだ。 「ビール飲み終わったんなら、コップくださいよ」 「……ああ」 泡をまといつけて、濡れた手を伸ばす永井にコップを渡す。 甲斐甲斐しく家事をこなす彼を、三沢以外の人間が見たら何者だと思うのか――確かめるすべはない。 なにしろ、三沢以外の人間の目には映らないのだ。
二年前から三沢に付き纏う悪夢と幻覚が形を変えたのだと、初めはそう思った。 密かに目をかけている部下が、戦場から帰ってきたような泥まみれの姿、荒みきった顔つきで自分を見上げていたのだから。 「永井……なのか?」 驚愕と、現実を疑う気持ちとで掠れた問いに、永井らしき青年は、唇の端を笑みのかたちに引きつらせた。 「ああ、本当だったんだ。あのこの言った通りだ。三沢さんには俺がわかるって、嘘じゃなかった……」 低く呟き、立ち上がった永井の手から小銃が落ち――床に触れる間際に硝子のように砕け散って消え失せたのを、三沢は確かに目にした。 ひどい幻覚だ。 立ち尽くす三沢に向かい、ふらりと倒れかかってきた身体を胸で受け止める。土と埃と、硝煙と血の臭いが鼻腔に満ちて、目眩がした。 「三佐、三沢さん。……おれを、許さないでいてくれますか」 肩口に額を当てた永井の乾ききった囁きは、泣き声にも、悲鳴にも聞こえた。三沢の腕を掴んだ指先は小さく震えている。 そうと気付いて、三沢の胸の底に湧いたのは恐怖ではなく憐憫だった。 その感情を認めたとき、三沢は現実味のありすぎる幻覚を知らぬ振りで通すことを諦めた。 「……不法侵入された程度で、許すも許さないもあるか」 悪戯を仕掛けてきた子供を叱る気分で、迷彩の背を叩く。 「それより、泥靴で人の家にあがる気じゃないだろうな」 何日も山野を徘徊しなければこうはなるまいと思うほど、汚れ擦りきれた半長靴を爪先で蹴り、茫然と見上げてくる顔の、頬についた土埃を掌底で拭ってやる。 「靴を脱いで、顔を洗って、ましな服に着替えろ。話があるならそれから聞いてやる」 幻覚の世話を焼く自分も大概どうかしていたが、サイズの合わない三沢のジャージを着た永井の話は、それ以上に奇怪だった。 「俺は、この世界の人間じゃないんです。ここにいるはずのない存在だから、三沢さんの目にしか映らないんですよ」 「突拍子もない話だな」 「見ましたよね」 銃が消えてなくなるのを。 それどころか、永井が脱いだ靴も、服も、三沢が触れた途端に砕けて消えた。 消えないのは、永井自身だけだ。 押し黙る三沢に、永井は「だから」と、神妙な表情で告げた。 「パンツ買ってもらえませんか」 ……他人に認識されないのなら、万引きでも置き引きでもしてこいと言ったら、冷血漢だの人非人だのと詰られ、翌日になってPXで買い求めた下着を投げつけてやったらまた猛抗議された。 それでも、出て行けと言わない自分が我ながら不思議だ。
ともかく、それから永井は三沢の家に住み着き、ままごとのような女房気取りを決め込んでいる。 ―― 女房、な。 どれほど小さくても灯りがないと眠れない癖に、夜になると、三沢の布団に潜り込んでくるのには参った。 泣きながら眠っているのを見てしまっては邪険にできず、したいようにさせていたのが悪かったのか。 いま、隣で眠っている永井に手をのばせば、滑らかな素肌が触れる。 温かく心地の良い手触りは現実のものとしか思えない――愛撫に応えて啼く声も、穿つごとに熱く三沢の雄を包みこみ、精を搾り取ろうとする挟隘も、幻覚だとしたらとんだ淫夢だ。 噛みつかれた肩には歯形まで残っている。 こんな関係に縺れこむつもりなどなかった。最初に、永井が触れるだけの口付けを仕掛けてきたときも、まだ。 『三沢さん。俺はまだ、消えてないですよね』 哀しげな問いかけと、無理に笑っているような顔に絆されてしまったのだ――幸いというべきか生憎というべきか、永井とは肌が合う。長らく忘れていた快楽の激しさよりも、埒をあけた後の心地よい微睡みに耽溺しそうだ。 お陰で、誰からも見えているほうの永井を見かけるたびに妙な気分になる。 妙な、といえば、自分にだけ見える永井が現れてから、魂にこびりついて払い落とせないと思っていたあの悪夢を一度も見ていない。 薬はまだお守りのように持ってはいるが――もう、一週間は飲んでいない。 自分はとうとう、本格的にいかれてしまったのだろう。今や、悪夢の再来よりも、ここにいる永井が消えてしまうことを恐れている。 込み上げてきた、焦燥とも愛情ともつかない気持ちのまま、ぬるい熱のわだかまる永井の首筋に口付ける。 張りのあるうすい皮膚のした、脈を打つ血の流れを確かめるように、じっとりと吸い付けていると、熱い手のひらが三沢の背に触れた。 「いま、何時ですか……」 「マルサンフタハチ」 外していない腕時計をそのまま読み上げると、永井はあくびまじりに「じゃあ、二度寝してください」と、抱え込んだ三沢の頭を撫でた。 さりさりと撫で回す動きは、手のひらを擽る感触を楽しんでいるようだ。 得体の知れぬものの手が、好き勝手に身体に触れているというのに、三沢に訪れるのはぬるま湯に浸る安寧である。 「永井。……消えるなよ」 耳元で命じると、ぴたりと止まった手は、思案の間をおいて、三沢を抱き締めた。 「了」 短い返答をどんな表情で発したか、見ることはできなかったが――身を擦り合わせるように、口付けを交わす寸前の永井は、微かに笑っていた。
ジェノサイダーと共に異界を制した代償に、異なる現実で生きることを願った彼は、罪科ゆえの罰を負った。 『あなたは誰の目にも映らず、もうひとりの自分の、あなた自身がそうであったかも知れない人生を傍観することしかできない』 でもね、と、赤い海のただなかで、漆黒の少女はあるかなきかの微笑を見せた。 『たったひとり。あなたを見ることができる人がいる。あなたが後悔を残している人。……彼の呪いを砕いてあげて。一緒に、いられるといいね』 私と恭也みたいに。 りんと、鈴の音の残響に似た囁きをさいごに、永井は渦巻く波に飲まれ――気付けば、灰色の世界にいた。 否、灰色と見えたのは、天地を埋め尽くして蠢く無数の手だ。 その中心には、撮影のセットのような、アパートの一室とおぼしき小さな部屋があり、見覚えのある男が堅苦しく座している。 狭い部屋のぐるりを駆け回り、かと思えば床に寝そべってお絵描きをするお下げの少女……あれが。 「あれが、呪いの核か……?」 ざわりと、世界がうねった。 殺到する白い手には目を向けず、銃を構える。 「三沢さん。いま、そっから出してやりますよ」
だから、俺をみつけてください。
*********
そして、こいつ脳内永井なんじゃないかという疑いを捨てきれない、でもまあいいか!と吹っ切れた三沢さんと末永く幸せに暮らすんですよ。
美耶子とは違って実体あるけど、世界の認識の外側にいるから(内側に入ったら、この世界の永井が消滅する)誰にも認識されない。 しかし、異界に触れた三沢には認識することができる。 霊感ある人なら気配を感じたり声を聞いたりはできるとか。
12/9 【三佐にしか見えない俺の嫁な永井くん発展形。】
三沢さんも、移動中に車の外、町中にこっちに背中向けて立ってる春海ちゃんを見て『!?』てなればいいよ。 春海ちゃんの向いてる側には路地いっぱいにひしめく手。
そんなのが辻ごとに見えたら嫌すぎる。
さっと目をそらして拳を握り耐えるも、あれがついてきている、という感覚から逃げられない。
と、ハンドル握る沖田さんが「三沢さん、道路混んできましたけど、別ルート使っても構いませんか?」と声かけてきて、はっと前方を見るも助手席に乗ってる春海ちゃんが見えちゃって内心ギャアアアア!
ほとんど上の空で必死に応答し、シートに背を預けて目を閉じてたら、隣に誰か座ったような重みの気配。 見ない。絶対、見ない。 固い決意は。 「さんさ」 聞き覚えのある声に呼ばれてくずれる。 目を開けて隣を見ると、迷彩服の(いるわけがない)永井。 屍人ではない。 恐怖の象徴ではない、普通の永井。 「大丈夫です。怖いものなんか、ありませんから」 見透かしたような、意味を図りかねることを言い、微かに笑った永井の姿が、受信状態の悪いテレビのようにぶれて点滅する。 ―― 行くな。 思わず手を伸ばしたさきで、永井は消えた。 同時に、ずっと精神にのし掛かっていた重みも。 急にクリアになり、明るくなったような視界に戸惑う。
「三沢さん、どうかしましたか?」 「……なんでもない」 バックミラー越しに視線があった沖田は、ふうんと目を細める。 「久しぶりに、スッキリした顔してる。いいものでもありましたか」 「どうだろうな」
永井の幻が、あれを連れて行ったような気がするなんて言えない。
灰色の廃墟で、溜め息をつく永井。 「あのひと、どんだけ呪いに絡みつかれてるんだよ」 ジェノサイダーが約束を果たすなら、自分は贖罪のために異界を巡っている。 あらゆる並行世界の三沢岳明の精神に巣食う異界を壊して回る、奇妙な巡礼の旅。
まだ、終わっていない。
次を目指して、赤い海に足を踏み入れる。 三沢との距離は少しずつ狭まっている。 彼が伸ばす手は、いつか自分に触れるだろうか?
*******
SDKがなんとかしてくれたけど、某アルティメットまどかさんみたいに、あらゆる時空の魔法少女……じゃない、三佐の魂を救う存在になって片っ端から精神内テロでフィナーレ的な。
つまり三佐専用守護天使。
いつかどっかの世界の三佐に捕まってしまえばいい。
12/7 ▼三永 1. ケータイが色違いお揃い。 ショップに行って一緒に買ったら、三沢さんがお父さんだと思われた件について。
2. ↑で、旅行お土産のストラップを沖田さんからもらったわけですが。 なぜか自分たちだけお揃いなわけですが。 永井がきらきらした目で見つめてくるからつけないわけにもいかず、そして物凄く嬉しそうな永井を見てると甘酸っぱくてやってらんない38歳。 春海ちゃんがストラップをつんつんしても平気だよ!
3. 永井くんの夜間警衛(みまわり)。 「そういや、この演習場には若い男が好きな女の幽霊が出るって話があったな。取って食われないように気を付けろよ」 爽やかに脅さないでください沖田さん。 ま、冗談だろと思いつつ、懐中電灯ふりふりチェックポイントさくさく通過する永井。 ……ひとりのはずなのに、後ろからひたひたと足音。 振り向くと止まる。誰もいない。 後ろから足音。 振り向くと止まる……誰もいない。 いやいやいやいや、あれは沖田さんのジョーク!21世紀に幽霊なんかいねーし、いても怖くねーよ! と思いつつ、やっぱり気になる。 しかも、足音との距離が縮まりつつあるのでだんだん速足に。 「おい」 「うわああああああ!」 いきなり腕を引っ張られて、思いっきり悲鳴あげましたが。 「さ、三佐……?」 「そっちは崖だ。注意しろ」 懐中電灯が照らす先は、真っ暗な空に続く崖。ゾッとしつつ、「了っ」と元の道に戻る永井。 ……足音がついてくる。三佐の。 「あの」 「なんだ」 「三佐は、当直司令ではありませんよね」 「ああ」 「……そうですか」 なんで来た?なんでついてくる? まさか心配されてないよな、と疑問符だらけになりつつ、先ほどまでの恐怖を思うと三佐の心強さ半端ない。 見回り再開したところで……助けられた時はなんて言うのかな!と、はっと気付いたり。 「先ほどは、助けていただきありがとうございました」 「寝ぼけて崖から転落死されたら、部隊の恥だろ」 「……」 突き落としたい、このハゲ。 でも、人心地ついたし、まだ当分、真っ暗な道を一人きりで歩かなきゃいけないところだったしで、気持ちを押さえる。 「――ッ!」 また、三人目の足音。 もう振り返る気もしない。 「三佐……足音が、聞こえませんか」 「お前の足音なら聞こえてるよ。両足が地面についてて良かったな」 まだ崖から転落ネタ引っ張るのかおっさん。 イラッとしながら、前に進む上着の裾を誰かが引っ張る。 「三沢三佐、なにか」 ……振り向いた先、三佐は1.5メートル後方。 引っ張れる距離にいない。 「なんだ、不審物でもあったか」 「いえ……気のせいです」 早く見回り終わりたい。 恐怖通り越して腹が立ってくる。 だから引っ張んなよおお! ぎりぎり奥歯噛んでたら、三佐が隣に来て、背中を手で払ったり。 「!?」 「引っ掛かってたぞ」 ……木の枝。 これが裾を引っ張ってたものの正体か、と安堵して、なんだか精神的に疲れてきた永井。 三佐は涼しい顔してる。 「……三沢さん。ここ、男好きな女の幽霊出るってほんとですか」 「噂は知ってるが、事実じゃねえな」 ですよね。 「出るのは、男の幽霊だ」 「……笑えないっす」 このひと、無表情で嫌な冗談かっ飛ばすから苦手だ。
もちろん、三佐は掛け値なしの事実を口にしてるし、引っ掛かってたのは枝じゃない(枝でぶっ叩いた)けど、そんなこと、士長は知らない。
あれ、三永要素どっか消えた。
▼12/06? 【拍手御礼テキスト】 【猛獣使いの休日】
三沢の部屋にいると、動物の檻に入ったような気分を味わう。 彼の性格を反映しているらしく隅まで整えられ、雑然としたものなどなにもない六畳間は、息苦しくはないのだけれど。 ベッドの端に背筋をぴんと伸ばして座り、内容の固そうな雑誌を読んでいる三沢の硬い腿を枕がわりにくつろぎながら、永井は手持ち無沙汰に壁掛け時計を見つめた。 ―― あと一時間と五分。 今日は土曜だ。消灯までの残り時間を気にする必要はないが、習慣でつい計算してしまう。 走り込みを終えるとここに来るのが習慣になってしまったのは、この部屋が妙に居心地が良いからだ。 少し前まで考えもしなかった、むしろ避けて通りたい場所だったのに、いまや寝室にまでお邪魔している。 前に泊まりにきた時はここで三沢に抱かれたのだと、思い出すとむずがゆいような熱がこみあげて、いてもたってもいられなくなる。 ―― 三沢さん。 意味もなく呼びたくなって、それでも、邪魔をしてはいけないだろうと姿勢を変え、三沢の腹に顔を埋めるように腰に抱きついた。 どこもかしこも引き締まった筋肉にみっしりと鎧われた愛想のない身体の奥には、永井を引き付ける磁石でも埋まってるんじゃないだろうか。三沢のにおいを吸い込むように呼吸して、ますます落ち着かない気分をごまかすように下腹におでこを擦り付ける。 かたい、大きな手のひらに髪を撫でられて、それだけで体温が1度はあがったと思う。 三沢の身体が大きく動き、サイドテーブルに雑誌を置いたのだろう音がして、また頭を撫でた手が首筋を滑り、丸めた背中の肩甲骨を辿って、かと思えば、顎骨のへりをったって永井の喉をくすぐった。 やっぱり、飼い主に構われている動物じみた気分になる――おとなしく喜んでしまいたがる身体のなかで、足りないと暴れる欲求とはしゃいだ気分にそそのかされるまま、膝をついてのびあがり、三沢のきれいに剃りあげられた頭のてっぺんにキスをしてやった。 ついでに、かしりと無理矢理に歯を立てて頭骨を覆う薄い肉と皮膚の感触をたしかめると、「永井」呆れたように呼ばれ、軽い挙動だけでベッドに押し倒される。 逆光の仏頂面、さて次はどこに噛みついてやろうかとわくわくしながら笑いかけると、三沢は「お前は、タチが悪い」低く唸り、荒っぽい口付けをくれた。 どちらが猛獣でどちらが猛獣使いか、目まぐるしく入れ替わる攻守のなかではどうにも判じがつかない。
―― つけようとも思わなかった。
255636
|